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産総研、生きたまま牛の"霜降り"状態を計測できるスキャナを開発

肉用牛の霜降り状態計測のイメージ

 産業技術総合研究所は、肉用牛の僧帽筋の"霜降り"度合いを、牛が生きたままの状態で計測できる核磁気共鳴スキャナのプロトタイプを開発したと発表した。

 従来の超音波画像診断装置による計測では困難だった、生きたまま肉用牛の脂肪交雑(霜降り)を定量的に計測することが可能。牧場でのより効率的な肥育プログラム改善や、競り市での正確な価格評価への応用が期待されるとしている。

 肉用牛の筋肉サンプルの測定試験を行なった結果では、筋肉中の水分量と脂肪量を±約10wt%の誤差で計測可能で、1回の計測は10秒程度で終了するため、生きた肉用牛の計測を行なう場合も牛を静止させるための鎮静剤や麻酔剤も不要であるという。

 産総研では油田から採取した岩石試料中の原油と海水の識別や、重油で汚染された土壌試料中の重油と地下水の識別など、資源開発、地盤工学用途としてプロトン核磁気共鳴スキャナを開発しており、今回の霜降りスキャナはその応用だという。

 プロトン核磁気共鳴スキャナは、片側開放型という特殊形状の磁石を採用し、水分子と油分子をプロトン緩和時間の長短で識別することで、大きな物体でも表面から数cm内部の部位のスキャンを可能とする。この緩和時間による物質識別の原理により、脂肪組織中の脂肪分子と筋肉組織中の水分子を識別することで、水分量から筋肉量を推定、肉用牛の定量的な脂肪交雑の計測を可能とした。

 産総研では今後の予定として、肉用牛の霜降り計測専用ではなく、ブランド豚やマグロなどの霜降り計測、牛の筋炎といった大型家畜の病気の非侵襲診断や、水と油を含む大きな物体をその場で非破壊計測できる特性を活かし、トンネル壁をスキャンして水を含む空洞を検出するなど、老朽化したインフラのメンテナンスや、油汚染土壌試料の計測など土木方面への応用も行ないたいとしている。

プロトン核磁気共鳴スキャナのプロトタイプ
牛肉試料のプロトン緩和波形計測結果例

(佐藤 岳大)