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理研、スパコン京でフラーレンが高精度予測可能に

C60フラーレンの分子モデル

 理化学研究所は16日、スーパーコンピュータ「京」の高精度電子状態計算によって、C60フラーレン分子と高次フラーレン分子の生成熱を世界最高の精度で理論予測したと発表した。

 C60フラーレンは炭素原子60個から構成される同素体で、水に溶けにくく電気伝導性を持つことなどからヒト免疫不全ウイルス(HIV)の特効薬や化粧品、半導体材料といったさまざまな分野での応用が進められ、研究も盛んに行なわれている。なお、高次フラーレンとは、C70やC320など、炭素原子が60個を超えたフラーレンのことを指す。

 今回、理化学研究所の研究グループは、測定が困難でこれまで明確になっていなかった炭素原子結合の安定具合の指標となる「生成熱」の高精度な算出に成功。スーパーコンピュータ京と分子科学計算ソフト「NTChem」を組み合わせることで、C60だけでなく、高次のC70/76/78/84/90/96/180/240/320を含めた10種類のフラーレン分子についての生成熱を算出し、「より大きなフラーレン分子の生成熱を算出する一般的な計算式」を導き出したという。

 これにより、フラーレン分子を大きくすることによる物性の変化を実験に先んじて理論予測できるようになり、新材料の設計するための計算の基盤を築けるようになった。今回の成果によって同研究に大きな知見を与えるとしている。

 本研究は、理化学研究所計算科学研究機構の平尾計算化学研究ユニットの平尾公彦研究ユニットリーダー、量子系分子科学研究チームの中嶋隆人チームリーダー、シドニー大学のブン・チャン リサーチフェローらの国際共同研究グループによって行なわれている。

フラーレン分子の炭素原子1個当たりの生成熱と炭素原子数の関係

(中村 真司)