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“世界でもっとも平らな”Ryzen 9 3950X

 海外のPenrowe氏は、“世界でもっとも平らなヒートスプレッダの表面”を持つRyzen 9 3950Xを作ったとし、YouTube上で報告している。

 普通のデスクトップ向けCoreやRyzenでは、CPUからの発熱はヒートスプレッダを通してヒートシンクに伝えられるが、ヒートスプレッダは平面ではなく凹凸があるため、そのままでヒートシンクと密着せず、熱伝導率が低下する。そのためヒートスプレッダとヒートシンクのあいだに熱伝導グリスや液体金属を塗り、熱伝導率を確保しなければならない。

 裏を返せば、ヒートスプレッダとヒートシンクが十分に平らで、そのままの状態でもお互いが緊密にくっつく精度であれば、熱伝導グリスや液体金属は不要だということだ。同氏はこれに着目して、もっとも平らな平面を持つヒートスプレッダと簡易水冷ヘッドの受熱部を制作することにした。

 ヒートスプレッダを研磨して平らにすること自体は、これまでも多くのオーバークロッカーが挑戦してきたが、その大半はサンドペーパーを用いて削るというものだ。ただ、研磨専用の材料や機材を用いていないため、精度は30μmが限界だという。

 “無”から完璧な平面を作るには、故ジョセフ・ホイットワースが考案した三面擦り合せによる研磨が有効だ。つまり同じ素材からAとBとCを切り出し、AとB、そしてBとC、CとAを順番に繰り返し擦り合わせて平面に近づけていく。Penrowe氏はまずこれで、ほぼ完全な平面となるステンレス製のベースを作成した。

 ただ硬いステンレスプレート上に直接コンパウンドを塗って柔らかい銅を研磨すると、コンパウンドの破片が銅を傷つけてしまい、銅に埋まってしまう可能性がある。同氏は試行錯誤の末、最終研磨にはアルミホイルを使うことにしたという。

 この結果、平面の精度は0.3μm(300nm、0.0003mm)に達した。取り外して同じように研磨した水冷ヘッドを載せると、完璧にフィットし、グリスなどを塗布しなくてもくっついた状態になった。

 こうして完成した“世界でもっとも平らな”Ryzen 9 3950X(と水冷ヘッド)なのだが、同氏は最後に大きなミスをしてしまった。それは研磨のために水冷の銅製ベースを分解したのだが、再組み立てをしたときにブロック中央のOリングがフィンを押してしまい、ベースが変形してしまったのだ。しかも加工前の標準的なシステムの温度データもとっていなかったので、比較のしようもなくなったとのことだ。