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京大、放射線発見以来初のガンマ線の可視化に成功

~放射線利用の安全評価が正確に

 京都大学研究グループは14日、ガンマ線を幾何光学に基づき定量的に画像化する手法の発見および実用化に成功したと発表した。これにより、ガンマ線の完全可視化が実現され、放射線利用の安全評価がより正確になる。

 放射線は、「見えない」という不安要素を抱えながらもその有益性から社会各所で利用されてきた。この度、画像化法を開発できたことにより正確な放射線のコントロールに繋がると見られている。

 ガンマ線は、原子核の壊変によって原子核から放出される高エネルギー光子であり、波としてより粒子として振る舞うため屈折などの光学的手法が使えない。本技術は、ガンマ線が物質の電子と散乱するコンプトン散乱反応を、ガンマ線1事象毎に散乱ガンマ線と反跳電子の両方の方向・エネルギーを測定し、運動量保存則を用いて入射ガンマ線の方向を求め、計算機上で幾何光学に基づく集光を行ない画像化する。

 電子の反跳方向の測定は困難とされていて、従来、物理量のみを測定しコンプトン散乱角のみを得る手法が研究されてきた。コンプトンカメラはガンマ線の到来方向が一方向に決められず、像も円環上に広がるため、円環を1事象ずつ重ねてガンマ線分布を推測する疑似画像化に留まっていた。

 しかし、京大チームは電子の反跳方向の情報が重要と判断し、電子の反跳方向に感度を持ち得るガス検出器を開発してきた。これを用いてガンマ線毎の散乱現象を解き、計算機上でレンズと同様に点としてガンマ線を集光させ画像化に成功した。

 同技術を利用し、京大は世界に先駆けガンマ線を捉える「Electron-Tracking Compton Camera」(ETCC)を開発した。ETCCを用いて福島の汚染地域の撮像試験を行なった際は、画像から地表面のセシウム量の分布を定量的に示すことに成功した。この放射線強度から国際原子力機関(IAEA)に基準に従って求めた地上の線量分布(μSv/h)は、測量結果と一致したという。

 また、ETCCはホットスポットの特定だけでなく、除染区域に残るマイクロホットスポットの検出もできる。画像内の特定の場所のガンマ線エネルギースペクトルも測定できるため、多種の放射性同位体も同時に認識でき、光学カメラでいうカラー画像撮影も可能。

 このほかにも本技術は今後、医療、地球上の鉱物石油探査、月・火星の資源探査など放射線を利用する各分野へと応用される可能性もあるという。

 本技術の論文は2月3日、英国の学術誌「Scientific Reports」にも掲載された。