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年を取ると耳が遠くなるのは、聴覚ではなく脳の老化が原因
~言葉を聞き取れているのに、何を言っているのかが理解しにくくなる
2016年10月19日 15:17
年を取ると、耳が遠くなるというのは高齢者にしばしば起きる問題だ。これは一般に、聴覚が衰えていると思われがちだが、実際には老化に伴う脳内の信号処理の問題が原因であることが、米メリーランド大学の研究グループによる調査で分かった。
グループは、聴力に問題はないがノイズがある環境で他人の言葉を聞き取りにくい61~73歳の高齢者と、聴力に問題がない18~30歳の若い被験者を使い、他人が話している時の脳内活動をスキャンした。その結果、高齢者の場合は、静かな環境であっても音声信号への応答品質が若者より低く、騒音のある環境ではさらに低くなることが分かった。
つまり、ノイズがない場合でも、高齢者は聞き取りに問題が生じている。これは、高齢になると、脳の聴覚野が会話を理解するのにより時間がかかるようになっているためである。こうなる原因は、加齢に伴い、脳内の興奮神経処理と抑制神経処理との間で不均衡が生じることにあり、この不均衡によって、脳が音声刺激を正しく処理する能力が低下する。
つまり、高齢者がノイズ環境下で人の会話が聞こえにくくなるのは、聴力の問題ではなく、音声信号のタイミングが脳内で正確にエンコード処理されていないことに起因する。言い換えるなら、高齢者は、話は聞こえているが、ノイズが混じると何を言っているかを理解しにくくなるのである。高齢者に話しかけて、聞き直された場合は、大きな声で言い直すのではなく、より明瞭に、あるいはややゆっくりと話しかけることで理解しやすくなる。