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【懐パーツ】ハイエンドビデオカードの定番、「Matrox Millennium」

Matrox Millennium

 この突発企画を掲載するごとに必ず誰かがTwitterで「Matrox Millennium」を呟くので、とりあえずMatroxビデオカードを3発連続で紹介してやろうかと思う今日この頃。このMillenniumも筆者の友人の父から譲り受けたものである(ビデオカードはこれで最後)。

 Millenniumと言えば、Windows 3.1やWindows 95初期の頃の定番ビデオカードであった。安定した2D表示品質に加え、非常に高速な描画が人気を博す要因だ。非常に優れたカードであったが、3万円台という価格は当時中学生だった筆者が容易に手を出せる代物ではなかった。故に最盛期のMillenniumが出力する絵をこの目にしていない。

 インプレス入社時(2004年)に、このカードが裸のままゴロゴロ棚に転がっているのを見て、さすが(DTPやるだけあって2D精度を気にする)出版社だなと思ったものである。ところがいざ会社のPCにMillennium挿して、東京特殊電線の17型CRT「CV173」に映し出して見たところ「まあこんなもんか?」と思ったのはここだけの話にしておこう(CV173はシャドウマスクだから仕方ないか)。

 さて、ボードの焦点はやはり「MGA-2064W」だ。64bitのグラフィックスエンジンである。Matroxは当時チップ製造からボード製造、ドライバ開発までを内部で一貫して行なっていたので、チップへの最適化を理解した上での設計となっている。これが高速性と画質を両立できた最大の理由であろう。

 ビデオメモリはSamsung製の「KM4232W259AQ-60」である。これは特殊なメモリチップで「WRAM(Window Random Access Memory)」と呼ばれ、RAM自体に演算用LSIを搭載し、一般的なDRAMと比較してグラフィックス描画を高速に行なえる。また、複数のアクセスポートを用いてデータを読み書きでき、データの更新とともに画面の更新ができる。これがMillenniumの高速性を支える一因であったのは言うまでもない。

 ちなみに型番を前回の規則に従って解析すると、KM4はSamsung、2はVRAM、32はバス幅32bit、WはWRAMの5V動作、259は256KB、-60は60nsである。つまり1チップあたり8Mbitであり、本製品はこれを4枚搭載することで4MBを実現している。ドーターボード用コネクタを備えており、メモリを4MB増設して合計8MBにできる。

 Millenniumの高画質を支えているのはTexas Instruments製のRAMDAC「TVP3026-220BPCE」だ。型番から分かる通り、220MHzのRAMDACとなっており、当時としてはトップクラスの性能を誇る。TIはこれを「Video Interface Palette(VIP)」と呼んでいる。RAMDACとしての最大解像度は1,600×1,280ドット@75Hzだった。

 ブラケットの黒いコネクタはコンポジットモジュール用で、ビデオ入出力ができる。また、ボード上にBIOS関連を操作するディップスイッチを搭載している。ビデオBIOSをオフにすれば、PCIバスを備えたPC-9821シリーズでも使用可能である。ただしPC-9821の場合は、一旦内蔵ビデオに入力するための背面ケーブルが必要になるので、基本的にPC-9821用パッケージを購入することになるだろう。

グラフィックスチップ「MGA-2064W」。誇らしげに64-BIT GRAPHICSが印字されている
Millenniumの高速性を支えたSamsungのWRAM「KM4232W259AQ-60」
TIのRAMDAC「TVP3026-220BPCE」