イベントレポート

【AMD記者会見詳細】Carrizoを発表、複数の搭載ノートPCが展示

 米AMDは、COMPUTEX TAIPEIの会場近くで記者会見を開催し、同社が開発を続けてきたAPU"Carrizo"を第6世代Aシリーズプロセッサとして発表した。この記者会見には同社CEOのリサ・スー氏が登壇し、Carrizoに関しての発表内容(別記事参照)などについて説明した。

 前世代となるKaveriの発表会では、AMDはOEMメーカーについて言及ができなかったのに対し、今回のCarrizoでは、日本の東芝を含む、複数のOEMメーカーがアナウンスされており、実際に発表会の会場では、Carrizoを搭載したOEMメーカーのノートPCが展示されて注目を集めた。また、発表会の終わりには、今回は何も発表がないと見られていた単体型GPUに関しても言及があり、米カリフォルニア州ロサンゼルスで6月16日~18日の日程で行われる、E3の初日にあたる6月16日に大きな発表が行われると説明があり、現在開発中とされているHBM(High Bandwidth Memory)搭載の次世代GPUをわずかだが公開した。

AMD CEO リサ・スー氏

Acer、ASUS、Dell、HP、東芝、LenovoなどがCarrizo搭載ノートPCを公開

 発表会の冒頭でスー氏は「AMDは高い演算性能を持つデバイス、通信キャリアのインフラ、クラウドやデータセンター向けのサーバープロセッサなどにフォーカスしている。TAM(Total Addressable Market、予想されうる最大市場規模)は600億ドルに達する」と述べ、AMDの製品ラインナップ(APU、GPU、サーバー向けCPUなど)には非常に大きな可能性があり、それらを武器に成長を目指すと説明した。

 実際AMDは、5月に米国で行われたアナリスト向けの説明会でロードマップのアップデートを行っており、新設計のx86プロセッサとなるZen(ゼン)を2016年に投入することなどを公開しており、今回の発表会でもそのことへの言及があった(AMDのロードマップの更新に関しては別記事参照)。

 その後、今回発表される製品であるCarrizo(カリッゾ)こと第6世代AMD Aシリーズ・プロセッサに関する説明が行われた。Carrizoは、2014年1月に発表されたKaveri(AMD Aシリーズ APU)の後継となる製品で、従来はAPU+サウスブリッジという2チップ構成だったのに対して、Carrizoではサウスブリッジも含めてダイに統合されており、完全なSoCとなっている。

 CPUはExcavatorアーキテクチャのクアッドコア、GPUは第3世代GCNアーキテクチャに強化されるなど、より強力な製品になっている。また、設計そのものが、TDP 15Wのレンジで最適な性能になるよう調整されているのも大きな特徴だと言える。

 今回の発表会でスー氏は、まずOEMメーカーのゲストを呼び、そのゲストにCarrizoの特徴を語ってもらった。呼ばれたのはLenovo 副社長兼ノートブック事業本部長のバイ・ペン氏で、CarrizoがCPUもGPUも高い性能を持っていること、さらにはInstantGoやDirectX 12など、Windows 10の機能に対応していることなどをメリットとしてあげた。そうしたことをペン氏が説明すると、スー氏は「私よりペン氏の方がうまくCarrizoのメリットを説明できるみたいだ」とジョークを飛ばして笑いを誘っていた。

 ペン氏はCarrizoを搭載したノートPCとして、Flex3という回転ヒンジの2-in-1デバイスをリリースする予定であることを明らかにし、実際にそれを公開した。

 なお、発表会の会場にはAcer、ASUS、Dell、HP、東芝のCarrizo搭載ノートPC、HPのAIO(液晶一体型PC)などが展示されており、昨年のKaveri発表時とは大きく状況が異なることを印象づけた。

 気になる搭載製品の登場時期について、AMD ノートブック製品マーケティング担当部長のケビン・ランシング氏は「来月(2015年7月)以降順次出荷される」と述べており、さほど遠くない時期に市場に出回ることになりそうだ。

AMDがこれまで成し遂げてきたイノベーション、2003年のx86-64(現在のx64、AMD64、Intel64)の導入は業界の歴史を変えたと言ってもいい
AMDの市場可能性、最大で600億ドルの市場可能性があるとスー氏
今回発表したCarrizo、第6世代AMD Aシリーズ・プロセッサというブランド名に
Lenovo 副社長兼ノートブック事業本部長 バイ・ペン氏(左)とスー氏(右)
LenovoのCarrizo搭載Flex3を紹介するペン氏
発表会にはMicrosoftからのゲストとして、オペレーティングシステム事業本部長 ロアンヌ・ソンズ氏が登壇し、AMDとMicrosoftのパートナーシップに関してWindows 10を中心に語った
紹介されたOEMメーカー、Dell、HP、ASUS、Acer、Lenovo、東芝から登場する予定
ASUSのX555D。AMD FX-8800P搭載し、外付けGPUとしてRadeon R8 M350DXを搭載。メモリは12GBまで搭載可能
DellのInspiron 17-5755。AMD A10-8700Pを搭載し、外付けGPUとしてRadeon R8 M350を搭載。メモリは8GB
DellのInspiron 15-5555。AMD A10-8700Pを搭載し、メモリは4GB
HPのPAVILION 17。AMD A10-8700Pを搭載し、メモリは6GB
Acer ASPIRE E15-525G。AMD A10-8700Pを搭載し、メモリは8GB
東芝 SATELLITE L50DT-C。AMD A10-8700Pを搭載し、メモリは8GB
HP PAVILION 23"はAiO(液晶一体型デスクトップ)。AMD A10-8700Pを搭載し、メモリは16GB

GPU性能のボトルネックになりつつある、メモリ帯域の問題を解決するHBMを業界で最初に搭載

 記者会見の終わりに、スー氏は同社が開発を続けている新しいGPUとみられる、HBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる高性能DRAMをオンパッケージに搭載したGPUを公開した。

 現在、CPUに統合化されている内蔵GPUにせよ、単体型GPUにせよ、GPUの内部の演算器の性能があがると、その分メモリ帯域への圧迫が増えており、より広帯域なメモリへの要求は高まるばかりとなっているが、HBMはダイスタッキングと呼ばれるダイを複数重ねて置く手法を利用して、CPUやGPUなどとメモリ間のデータの広帯域なやりとりを可能にするDRAMとなる。

 スー氏は「AMDは、GDDR4もGDDR5も、業界で一番最初に導入してきた。今回のHBMでも世界で初めてGPUに採用する」と述べ、AMDがHBMを業界に先駆けて導入することを誇ってみせた。

 ただし、このHBMを搭載した次世代GPUを含めて、今回は正式発表はなかったが、同社副社長兼製品事業本部長のマット・スキナー氏は「E3が行われる6月16日に大きな発表を行う」と述べ、グラフィックス関連で何らかの新しい発表を行うと予告した。

 AMDに近い関係者によれば、このGPUを含むGPUのフルラインナップがこの日に発表される見通しだということで、E3のタイミングで次世代GPUを含む製品が投入されると考えていいだろう。

HBMをオンダイ搭載したGPUを公開するスー氏
AMD 副社長兼製品事業本部長 マット・スキナー氏
E3 2015が開催される6月16日に、大きな発表が行われることを予告

(笠原 一輝)