イベントレポート
【基調講演レポート】Skylake搭載2-in-1や一体型PCが紹介される
(2015/4/10 10:33)
Intelは、中華人民共和国深セン市内のホテルにおいて、開発者向けのイベントIDF15 Shenzhenを開催した。2日目となる4月9日(現地時間)はIntelの各事業部(クライアントコンピューティング事業本部、データセンター事業本部、IoT事業本部)の事業本部長による基調講演が行なわれた。
Intel 上席副社長兼クライアントコンピューティング事業本部 事業本部長 カーク・スコーゲン氏は、Intelが今年(2015年)後半にリリースを予定しているSkylakeこと第6世代Coreプロセッサを搭載した、リファレンスデザインの2-in-1デバイスや開発者向けの完全無線ノートPCなどを公開した。
新しいクライアントコンピューティング事業本部の本部長となったスコーゲン氏
Intelのスコーゲン氏が事業本部長を務めるクライアントコンピューティング事業本部は、もともとPCクライアント事業本部と呼ばれ、主にPCや2-in-1デバイスなど向けのCPUやSoCを扱う事業本部として存在していた。しかし、昨年(2014年)の秋に、モバイルコミュニケーション事業本部と呼ばれる、スマートフォンやタブレット向けのSoCを扱う事業本部が解体され、PCクライアント事業本部に合併されることが決まり、PC、スマートフォン、タブレットというコンピューティング機能を持つクライアント製品をすべて扱う「クライアントコンピューティング事業本部」へと名称が変更され、その事業部長をスコーゲン氏が務める形になった。
スコーゲン氏は「中国市場はIntelにとって重要な市場だ。中国には7億台のスマートデバイスが存在しており、PC市場でも中国はシェア第1位だ。また、昨年Intelが達成した4,600万台のタブレットのうち、40%は中国、特にここ深センから出荷されている。本当に感謝の言葉を述べたい」と述べ、中国語で“謝謝”(シェイシェイ)と述べ、詰めかけた中国のOEM/ODMメーカー関係者を喜ばせた。
TurnKeyプログラムを活用すると、6~8週間で低価格製品が設計可能に
スコーゲン氏は、新しい事業部体制になって担当することになったモバイル関連の話題から話を始めた。「我々はMWCで、開発コードネームSoFIAと呼ばれるAtom x3を発表した。これらの製品はIntelからだけでなく、RockchipやSpreadtrumといったパートナーからも販売される。今年の後半にLTE版を投入するが、その前に3Gのデュアルコア版、Rockchipが販売する3Gのクアッドコア版から販売を開始する」と説明した。
同氏によれば、既にIntelは40のODMメーカーで、48のデザインウィンを獲得しており、その中にはスマートフォンや、7型のファブレットなどが含まれているという。また、販売パートナーのRockchipは10のODMメーカーを獲得していることなどが明らかにされた。これらの製品は、MRD(Master Reference Design)と呼ばれるIntelのリファレンスデザイン、Rockchip独自のリファレンスデザインに基づいて設計されており、OEM/ODMメーカーは従来よりも短い期間で、かつ低コストで製品を出荷することができるという。
「我々はOEM/ODMメーカーに対して、TurnKeyプログラムという仕組みを用意しており、MRDを元にして6~8週間の短期間で製品を出荷できる。かつ、MRDは高品質で、返品率を20%も低くできる」と説明した。ステージには深センのBlueBankのCEOが呼ばれ、7型のファブレットが55~60ドルと非常に低価格で出荷できることがアピールされた。
また、「Atom x3ではバリュースペースにフォーカスしているが、MWCで同時に発表したAtom x7/x5ことCherry Trailはプレミアムな製品もターゲットにしている。同じようにAtom x5もTurnKeyプログラムを第3四半期から開始する予定だ」とし、OEM/ODMメーカーが低価格な製品を提供しやすい環境を作るとアピールした。
Skylakeで実現する2-in-1デバイスや10mmと超薄型のAIOを公開
次いでスコーゲン氏はPCプラットフォームの変革についての説明を行なった。従来のPCと言えば、クラムシェル型とデスクトップPCだけだったが、ここ数年で顧客が選択できるフォームファクターは増え続けている。その具体例として、1月のCESで発表した第5世代CoreプロセッサやCore Mの特徴、さらには、スティック型PCといった新しい形のPC、Braswellなどを紹介した後で、昨日のブライアン・クルザニッチ氏の講演でも紹介された、Intelの次世代プロセッサSkylakeこと第6世代Coreプロセッサについて言及した。
Intelが今年の後半に投入することを計画しているSkylakeは、IntelのTICK-TOCK(新しいプロセスルールと新しいマイクロアーキテクチャが交互に新製品として投入される戦略のこと)ビジネスモデルにおいて、TOCKに相当する製品で、14nmプロセスの新マイクロアーキテクチャの製品となる。このため、性能的には大きく向上しており、Windows 10とともに今年のPC新製品の目玉の1つになる。
依然としてSkylakeのマイクロアーキテクチャに関しては何も語られなかったが、講演ではSkylakeを搭載した2-in-1デバイスと、液晶一体型PC(AIO)を公開した。Skylakeを搭載した2-in-1デバイスは、スレート型のタブレットとキーボードに分離する製品で、タブレットにはRealSenseの3Dカメラが内蔵されている製品となっている。AIOの方は4Kのディスプレイを搭載し、フルPCの機能を持っているにもかかわらず、10mm以下の薄さとなっており、PCというよりはまるでTVのように見えた。
また、開発者向けのSkylake搭載リファレンスデザインのノートPCを公開した。これは、RealSenseによるキーボードレスログイン、ワイヤレス給電(Rezence)、ワイヤレスドッキング(WiGig)、ワイヤレスディスプレイ出力(WiDi)など、Skylake世代で実現する完全無線の機能を実装したもので、そうした機能を開発するソフトウェア開発者向けに販売されるリファレンスデザインのクラムシェル型ノートPCになる。既に昨年のIDF San Franciscoで公開されたが、そのアップデート版となる。秘密保持契約を結んだソフトウェア開発者が購入して、ソフトウェアの開発に利用できる。
Rezenceに対応したスマートフォンも電磁誘導方式で充電可能
そのワイヤレスチャージングに関してもデモを行なった。Intelが推進しているのは、業界団体A4WPで策定されているRezence(レゼンス)という方式の無線給電で、マルチデバイスで充電できる、PCなどの大容量の電力を必要とするデバイスでも充電できることが強調されることが多いのだが、今回のデモではそれだけでなく、Rezenceに対応したスマートフォンを利用してQiやPowerMatといった電磁誘導方式の無線給電にも対応できるという様子がデモされた。
Intelがこうしたデモを行なうのは、1月にPowerMat方式のワイヤレス給電の規格を策定してきたPower Matters Alliance(PMA)とA4WPが合併することを発表したことを受けたものだと考えられ、PMAやQiを推進するWireless Power Consortium(WPC)が採用している電磁誘導方式(A4WPのオリジナルの仕様は共鳴方式)がA4WPの仕様にも取り入れられることが決まったためだろう。今のところ、WPCが推進するQiとは統合されるいうことは決まっていないが、それもサポートできることをアピールするためのデモだと考えられるだろう。
このほか、光彩認識の機能、さらにはRealSenseの紹介などが行なわれ、RealSenseの機能を利用して、ロボットを動かすデモなどが紹介された。
SDN/NFVやHPC向けの開発者向けのトレーニングセンターなどが紹介される
スコーゲン氏の講演の後には、Intel 上席副社長 兼 データセンター事業本部 事業本部長のダイアン・ブライアント氏によるデータセンター関連の講演、さらにその後には、Intel 上席副社長 兼 IoT事業本部 事業本部長 ダグ・デービス氏によるIoTに関する講演が行なわれた。
ブライアント氏の講演では、Intelが近年熱心に導入を進めているSDN(Software Defined Network)やNFV(Network Functions Virtualization)といったソフトウェアで定義する通信機器や、そのSDNを仮想化ソフトウェア上で実現する技術について時間が割かれた。SDNやNFVは特に、通信キャリアなどで導入が進んでおり、日本で言えばお正月や、東京ビックサイトで大型イベント実施時のように急に負荷が高まるような時に、NFV上でSDNのネットワーク機器を増設して対応するなどの対応が可能になる。今回の講演では中国の通信機器ベンダーでHuaweiのCTO サンクイ・リー博士がゲストとして呼ばれ、SDNとNFVのメリットなどが語られた。
また、Intelは近年HPCの分野にも力を入れており、CPUとしてのXeonが多くのスーパーコンピュータに搭載され、CPUアクセラレータとしてXeon Phiを販売している。スーパーコンピュータのランキング(TOP500)トップは中国の「Tianhe-2(天河-2)」だが、XeonとXeon Phiベースのスーパーコンピュータとなっている。ブライアント氏は「我々はXeon Phiの次世代製品として“Nights Landing”を計画しており、性能が現在の製品に比べて3倍になる。HPCではソフトウェアの最適化が重要で、そのため、中国でトレーニングセンターを開設する」と述べ、中国にIntel Parallel Computing Centerというソフトウェアの研修を受けられる施設を作り、中国の技術者に対してさまざまなトレーニングを提供するとした。
また、IoT(Intelの場合広くインターネットに接続できる機器をIoTとしており、従来は組み込みなどと呼ばれていた分野も含まれる)事業を担当するデービス氏は、「2020年にはインターネットに接続されるデバイスが500億台になると予想されている。2015年の現在はインターネットに接続される機器が150億台なので、実に350億台も増えることになる」と述べ、IoT機器に大きなビジネスチャンスがあるとした。
デイビス氏は、TransWisewayの車載システムからクラウドまですべてIAで統一した車両コントロールシステムにより、燃料がトータルで10%節約できた事例、Atomプロセッサが入ったIPカメラ、Atom車載システムのスケールモデル、Microsoftが今夏にリリースを予定しているWindows 10に向けた「Intel GATEWAY IoT with Windows 10」を第3四半期に投入すること、さらには、Atom x3のIoT版などを紹介して、IntelのIoT向けプロセッサをアピールした。