イベントレポート

Samsung、Galaxy S5とGear fitを発表

~心拍センサーを搭載し曲面ディスプレイを採用するウェアラブル

会場:Centro Convenciones international Barcelona

会期:2014年2月24日(現地時間)

 韓国Samsung Electronicsは、Mobile World Congress 2014の会期初日となる2月24日(現地時間)夜に、同社の新製品発表イベントである「Samsung Unpacked」を開催した。

 予告画像から推測されていたとおり、フラッグシップスマートフォンであるGalaxy Sシリーズの最新モデル「Galaxy S5」を公開し、心拍センサーの付いたスマートウォッチ「Samsung Gear Fit」も発表。事前に発表のあった「Samsung Gear2」、「Samsung Gear2 Neo」などとともに、4月11日に世界約150カ国で発売する。なおキャリアモデルとなる可能性の高い日本市場における発売日などは未発表。

 Galaxy S5のグローバルモデル仕様としてCPUは2.5GHzで動作するクアッドコア。メモリは2GBと発表された。内蔵ストレージは16GBあるいは32GB。プロセッサや通信機能などは発売地域によって異なる。発売時のAndroidのバージョンは4.4.2(KitKat)となる見通し。

Galaxy S5を発表するJK SHIN社長兼CEO
Galaxy Sシリーズは世界中で2億台の出荷を達成した

 製品発表はSamsung Electronicis IT and Mobile Communications DivisionのJK SHIN社長兼CEOによって行なわれた。同氏はGalaxy Sシリーズがモバイルイノベーションを継続することで、シリーズの総出荷台数が2億台を突破したことを明らかにした。その上で、顧客のニーズを新製品に取り入れ、最新モデルはデザイン、カメラ、コネクティビティ、フィットネス、ライフの5つの分野にフォーカスして開発されたという。5という数字は、第5世代となるGalaxy S5に合わせたものと考えられる。

 Samsung Gear Fitはタッチパネルを採用する有機ELタイプのディスプレイとしては初めて曲面ディスプレイを搭載した。前日に行なわれたTizenのカンファレンスで事前に発表されていた「Samsung Gear2」、「Samsung Gear2 Neo」と同様に、内側に心拍センサーを搭載する。

「Galaxy S5」は4色展開。「Galaxy Note3」などでは採用されているが、Galaxy Sシリーズとしてははじめて背面パネルにテクスチャーを採用したデザインとなっている
心拍センサーを搭載した「Samsung Gear2」と「Samsug Gear Fit」。2013年9月の第1世代モデルの発表から約半年で次モデルを投入する
Gear Fitを紹介するJK SHIN氏

 製品の詳細は、ヨーロッパテレコミュニケーションディビジョンの副社長であるJean-Daniel Ayme氏とSamsung Electronics HQのマーケティングチームからDavid Park氏が代わる代わるステージへと登場して紹介した。

 まず、本体デザインに関してはGalaxy Sシリーズとしては初めてテクスチャを採用した背面パネルを備える。素材はポリカーボネートだが、Note3と同様に質感の感じられるものとなっている。パターンはドットが格子に配列されているもの。背面のカラーは4色展開で、「charcoal Black」、「shimmery White」、「electric Blue」、「copper Gold」となる。「shimmery White」はフロントパネルも白い。ほか、デザイナーとコラボレーションした交換用の背面カバーも販売される。

 ホームボタンは従来モデルと同様に物理的に押下できるもので、後述する指紋認証機能も備える。ホームボタンの左右に配置されるソフトキーは、メニューボタンがタスクボタンに変更された。セッティングメニューなどUIの一部には、デザインの変更も加えられている。スクリーンは5.1型のフルHD(1,920×1,080ドット)有機ELディスプレイ(SUPER AMOLED)を採用。環境光に応じて、表示のコントラストを細部にわたって調整する機能のほか、映像、ゲームなど目的に応じて表示を調整するAdaptive Display機能を搭載する。バッテリ容量は2,800mAhで、バッテリの交換が可能。

5つのフォーカス分野。デザインとUI、カメラ、ネットワーク機能、ハードとソフト両面でのプロテクション、そしてフィットネス
Galaxy Note3に続いてテクスチャーを使った背面カバーを採用。ドットが格子に配列されている
カラーバリエーションは4色。「charcoal Black」、「shimmery White」、「electric Blue」、「copper Gold」
デザイナーやブランドとコラボレーションした背面カバーも用意される
プルダウンによる通知や設定の変更、セッティングメニューのアイコンなど、UIやデザインが一部変更されている
スクリーンは5.1型のフルHD有機ELディスプレイ(SUPER AMOLED)を採用
周囲の光量に応じて、コントラストなどを調整
映像再生、ゲームなど目的に応じた画面表示の自動調整を行なう
バッテリは2,800mAh。Webブラウジングなら10時間。ムービーの再生なら12時間の連続使用が可能

 カメラ機能は、位相差センサーを加えることで0.3秒で合焦させるオートフォーカスを実現。Samsungによればスマートフォンのカメラとしては世界最速とのこと。ほかに、HDR撮影機能や背景のボケを生む「Selective Focus」などを搭載する。

位相差センサーを搭載し、0.3秒でのフォーカスを実現する
HDR(Rich Tone)により、光量の差が大きいシーンでも色域を広く撮影できる
フォーカスエリアを選択することによって、背景ボケなどの効果が得られるSelective Focus

 フラッグシップモデルにふさわしく、通信機能も充実している。モバイルネットワークはカテゴリ4のLTEに対応。無線LANはIEEE 802.11ac/a/b/g/nに対応し、MIMOやHT80(80MHz幅通信)もサポートする。LTEとWi-Fiの両方を同時に利用してダウンロード速度を上げる「Download Booster」も搭載している。Bluetooth 4.0およびANT+にも対応する。このほか、USB 3.0やNFC、赤外線リモコン機能などが搭載される。

 ライフと題された分野では、ハードウェア、ソフトウェアの両面でのプロテクション機能が紹介された。防水防塵対策においてはIP67等級となる。防水については日本市場向け製品ではサポートしている場合が多いが、グローバルモデルでのサポートは初めてとあって、会場からは歓声が沸いた。

 ちなみにIPコードの表記は順に防塵、防水となっており、防塵性能は6で塵埃の侵入を許容しない。防水性能は7で水に浸しても影響がないように保護する、に相当する。防水性能については潜水状態での利用はできないが、一時的な水没程度であれば保護できることを示している。また防塵で6等級を表記したことは興味深い。表記が行なわれるのはテストにパスしたことを示している。一般的にIPX7のように表記される場合は、ある程度の防塵性能は備えていても実際のテストを行なっていないことで、数字ではなくXで表記されることになっている。

 「Ultra Power Saving Mode」は、日本市場向けの「Galaxy J」などで先行採用されている機能で、表示をモノクロに限定したり、必要最低限の機能のみをアクティブにすることで、携帯電話の基本機能である待ち受けや通話、SMSなどの利用可能時間を延長させるものだ。講演でのコメントによれば、10%のバッテリでも24時間程度のスタンバイが可能としている。

 ソフトウェアでのプロテクションとしては指紋認証機能が搭載された。国内製品では富士通のスマートフォンに以前より数多く採用されているほか、グローバル製品ではAppleのiPhone 5sに採用されたことで、改めて注目が集まっている。Appleの認証はホームボタンに指を置くことで認証する仕組みだが、Galaxy S5の認証は富士通製品と同じように指をスライドさせて認証する。センサー位置はiPhoneと同様にホームボタンに設置された。個人認証によるロック解除のほか、決済時の認証にも利用される。

 そのほか、特定の写真など指定したデータを非表示にするプライベートモード、子供にスマートフォンを渡して遊ばせる際に利用できるアプリを限定するモードに即座に移行できるキッズモードなどを備える。

3つ目のコネクティビティ分野では、カテゴリ4のLTEに対応、IEEE 802.11acとMIMOへの対応、そしてモバイルネットワークとWi-Fiの同時接続によって、ダウンロード速度を向上させる「Download Booster」機能が紹介された
IP67等級となる防塵、防水性能。特に国内製品では防水機能は充実しているが、グローバル製品ではまれということもあって、会場からは歓声が沸いた
Ultra Power Saving Mode。東日本大震災以来注目されている機能の1つで、必要最低限の機能だけをアクティブにして、スマートフォンの稼働時間を伸ばす。日本市場向けのGalaxy Jなどに先行搭載。前述の防水機能に続いて、日本からのニーズがグローバルモデルにもフィードバックされている
指紋認証機能。センサーはホームボタン部分に設置されており、指をスライドさせて認証を行なう仕組み。ロック解除のほか、決済サービスの認証にも利用される
キッズモード。特に年少の子供などにスマートフォンを渡して遊ばせるときに、ホームボタンのロックや特定アプリのランチャーが起動する。復帰にはPINコードなどの入力が必要。ほかに、指定のデータを非表示にするプライベートモードもある

 Stay Fitとして紹介されたフィットネス分野。従来モデル同様にSヘルスのアプリケーションを搭載するほか背面に心拍センサーを搭載して、指先をかざして心拍数を測ることができるようになった。こうした心拍数のカウントは、内蔵カメラなどを利用して測ることができるアプリケーションも存在するが、専用の心拍センサーを搭載したスマートフォンは世界で初めてとしている。

 フィットネス分野のメインは、ウェアラブルとなる「Samsung Gear 2」と「Samsung Gear 2 Neo」「Samsung Gear Fit」の3製品で、いずれもリストバンド型。Samsung Electronicsは、2013年9月に独ベルリンで開催されたIFAで最初のウェアラブル製品である「Samsung Galaxy Gear」を発表している。同年には国内でもドコモ、auなどから順次出荷された。以来、約半年という短いスパンで第2世代製品を投入する。

 第2世代製品の特徴はいずれも心拍センサーを搭載して、フィットネスを強く意識するようになった点だ。「Samsung Gear 2」と「Samsung Gear 2 Neo」は、基本デザインは従来モデルの「Samsung Galaxy Gear」とほぼ同等。心拍センサーを除いては、機能などもほとんど変わらない。大きく変わったのは内部のOSで、従来モデルがAndroidベースであったのに対し、Gear 2シリーズはTizenベースとなっている。そのため、名称からはGalaxyの表記がなくなっている。なお、この2モデルは23日(現地時間)に行なわれたTizenのカンファレンスで発表されている。

 機構的には、従来モデルではベルト部分に位置していたカメラがベゼル本体へと移動。これにより、ベルトの交換などが可能になった。また、タッチ操作に限定されていた従来モデルに対し、物理的なホームボタンを備えている。Gear 2のサイズは36.9×58.4×10.0mm(幅×奥行き×高さ)で重量は68g、Gear 2 Neoのサイズは37.9×58.8×10.0mm(同)で重量は55g。いずれも専用アダプタを使った充電式で、1回の充電で2~3日間の使用が可能。両モデルの機能的な差異としてGear 2 Neoにはカメラが搭載されていない。連携するGalaxy製品は従来より桁違いに増えて、17モデルとなった。

 この日発表された「Samsung Gear Fit」は、よりフィットネス寄りとなった製品。タッチパネルを採用する有機ELタイプのディスプレイとしては初めて曲面ディスプレイを搭載した。Galaxy GearやGear2では正方形のパネルが採用されているが、Gear Fitは横長の1.84型/432×128ドットの有機EL(SUPER AMOLED)タッチパネルディスプレイを採用する。Galaxy表記がないことからOSはAndroidではない可能性が高いが、Gear 2とは異なり、Gear FitのOSは非公表。画面は通常非表示だが、Galaxy Gearと同様に、内蔵の加速度センサーを利用して、いわゆる時計を見る動作で画面表示をオンにできる。Gear 2と同様に内側に心拍数センサーを搭載。この数値に基づいたフィットネスのコーチング機能などを利用できる。

 Gear Fitのサイズは23.4×57.4×1.95mm(同)で重量は27g。本体部分は取り外しが可能で、デザイナーやブランドコラボレーションモデルのベルトに交換できる。フル充電状態からの通常利用で、約3~4日間の稼働が可能とされている。対応するGalaxyスマートフォンは15モデル。

 グローバル発表は4月11日を予定。世界の約150カ国で順次出荷が始まるが、価格や細部の仕様は各国ごとに異なるため、Galaxy S5、Samsung Gear2、Gear Fitのいずれの製品についても詳細までは公開されていない。

タッチパネルを採用する有機ELタイプのディスプレイとしては初めて曲面ディスプレイを搭載
Gear Fitの重量は27g
本体部分は取り外しが可能で、ベルト部分を交換できる
デザイナーやブランドとコラボレートしたベルトも販売される
主要な通知機能はGalaxy Gearに引き続いて搭載される
Gear2、Gear Fitともに内側部分に心拍センサーを搭載する
常時心拍数をデータ化していることで、コーチング機能をリアルタイムで利用できる
ANT+の通信機能にも対応するので、ほかの機器との連携も容易
Galaxy S5の本体にも心拍センサーを搭載。こちらは指先で測るのでウェアラブルのように常時センシングされているわけではないが、測定結果を累積して記録できる
関連アクセサリ。お馴染みのS Vier Coverやウォレットタイプのケースなど
ワイヤレス充電にも対応する。防水機能でキャップが付いたため、ワイヤレス充電は重宝しそうな機能だ
純正のヘッドフォンアクセサリ
プリインストールされ、年間利用ライセンスなども含まれるアプリケーション

 この日発表された製品のブース展示は、会期2日目となる25日(現地時間)から始まる見通しで、ハンズオンによる実機試用とブース展示に関しては別稿でお伝えする。

(矢作 晃)