【COMPUTEX 2012】Shuttleブースレポート
~Ivy Bridge対応超薄型ベアボーンやNASキットなどを展示

Atom Dシリーズ搭載の超薄型ベアボーン「DS25」。完全ファンレス仕様ながら、50度と高温環境下での利用が可能

会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 ベアボーン製品でおなじみのShuttleは、超薄型ベアボーンの新モデルや、新たに参入するNAS製品などの新製品を展示している。

 超薄型ベアボーンの新製品は、CPUにAtom Dシリーズを搭載する「DS25」と、チップセットにIntel H61 Expressを採用し、LGA1155対応のTDP最大65WのCPUを搭載できる「DS61」の2製品だ。

 これら2製品は、Shuttleが発売している超薄型ベアボーン「XSシリーズ」の流れを汲む製品。最大の特徴となるのは、XSシリーズなどの超薄型ベアボーンの従来モデルと比較して、高温下での利用を想定した設計となっている点だ。従来の製品では、35~40度の環境での使用を想定していたのに対し、DSシリーズでは50度での利用を想定しているという。それでいて、DS25はファンレス仕様となっている。

 従来までボディ素材としてプラスチックを採用していたのに対し、DSシリーズでは金属ボディを採用した。これにより、ボディ全体で熱を効率良く発散できるようになり、ファンレスながら従来より高温環境下での利用が可能になっている。しかも、DS25ではオプションでRadeon HD 7410M搭載の専用グラフィックボードが搭載可能となっており、そちらを搭載した場合でもファンレス運用を実現。内部を見ると、大型のヒートシンクとヒートパイプが見えるが、確かに内部にはファンは装着されておらず、ボディ全体で熱を発散することが前提となっていることがわかる。

DS25の側面。金属製のケースを採用することで、ケースからの放熱性能が向上し、ファンレスながら高温下での利用を可能としているDS25内部の様子。左側の大きなヒートシンク部は、オプションのRadeon HD 7410M搭載グラフィックボードで、グラフィックボードを搭載した状態でもファンレスとなる

 DS61は、CPUのヒートシンクに薄型の空冷ファンが2個搭載されており、ファンレス仕様ではない。しかし、ノートPC向けCPUではなく、TDP 65Wと比較的消費電力の高いデスクトップ向けCPUが搭載可能ながら、超薄型ボディを実現している点が大きな特徴だ。そのため、超小型ながらかなり優れた性能を実現できる。CPUとして、第2世代Core iシリーズに加え、第3世代Core iシリーズもサポートしている点も大きな魅力だ。

こちらは、CPUにTDP 65Wまでのデスクトップ用第2/第3世代Core iシリーズを利用できる「DS61」。本体形状はDS25とほぼ同じ。前面にはUSB 2.0×2ポートとマイク、ヘッドホン端子、メモリカードスロットを備える側面、こちらもボディは金属製で、ボディからの放熱性を高めているDS61の内部。さすがにこちらはファンレスではなく、大型ヒートシンクには2個の薄型8cm冷却ファンが取り付けられている

 内部の拡張性は、双方ともメインメモリ用としてSO-DIMMスロットを2本用意。また、2.5インチドライブ用の拡張ベイとmSATAスロットを用意。拡張カードの利用やスリム光学ドライブの搭載などは不可能。DS25の外部ポートは、前面にUSB 2.0×2ポートとマイク端子、ヘッドフォン端子、メモリカードスロットが、背面にミニD-Sub15ピン、有線LAN×2、USB 2.0×2などを用意。専用グラフィックボードを搭載した場合には、ミニD-Sub15ピンとHDMI出力が追加される。

 DS61では、前面はUSB 2.0×2ポートとマイク端子、ヘッドフォン端子、メモリカードスロットとDS25と同じだが、背面にはUSB 3.0×2ポートが用意され、有線LAN×2ポート、DVI出力、HDMI出力が用意される。また、双方とも工業用途での利用も考慮されており、オプションでシリアルポートの追加も可能。

DS25では、メインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本とmSATAポート、2.5インチHDD/SSD用のベイとSATAポートを1ポート用意DS61は、メインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本とmSATAポート、SATA 3Gbpsポートを2個用意。ただしドライブベイは2.5インチHDD/SSD用のベイ1個のみDS25の前面もDS61と同じで、USB 2.0×2とマイク、ヘッドフォン端子、メモリカードスロットを備える
DS25の背面。有線LANポートが2ポート、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピンなどを備える。専用グラフィックボードを装着すると、右上にミニD-Sub15ピンとHDMI出力が用意される。また、シリアルポートも追加可能DS61の背面。有線ポート×2、USB 3.0×2、HDMI、DVIを用意、こちらも追加でシリアルポートを搭載できる

 今回発表されたDSシリーズは、開発中の試作機だったため、細かな仕様面や本体形状などは今後変更される可能性があるため非公開。ただ、従来のXSシリーズよりもサイズは小さくなっている。もちろん、VESA対応マウンタを利用して液晶ディスプレイの後部に設置して利用することも可能だ。DS25はRadeon HD 7410Mの追加により描画能力を高められ、DS61ではデスクトップ向け第3世代Core iシリーズが利用できるということもあり、AV PCなどとして個人用途でもかなり魅力のある製品となるだろう。発売時期は9月以降を予定している。

●Shuttle初のNASキット

 今回Shuttleは、新たなジャンルの製品を発表した。それがNASキット「OMNINAS KD20」だ。誰でも簡単、手軽に利用できるという点をコンセプトとし、家庭での利用をメインターゲットとする製品だ。

 3.5インチHDD対応のホットスワップベイを2個備え、4TBのHDDを利用して最大8TBの容量を実現可能。HDDの交換はHDDベイ上部のボタンを押すだけで行なえ、本体の電源を落とす必要がない。RAID機能はRAID 0、1、JBODをサポート。本体は2.5mm厚のアルミニウムボディを採用し、HDDの熱を効率的に外部に逃がせるように配慮。背面には7cmの冷却ファンも搭載されているが、ファンコントロール機能によりHDDの温度が上昇した場合のみ動作する。本体の放熱性が優れるため、通常はほぼファンが止まっているとしており、静音性にも優れる。

 本体前面下部には、メモリカードスロットとUSB 3.0ポートを備える。USB 3.0ポートを備えるNASはまだ少なく、これは大きなポイントになるだろう。そして、デジカメで撮影した写真データの入ったメモリカードを取り付けたり、デジタルカメラを直接USBケーブルで接続すると、内部のデータが自動的にNASに転送される。また、背面にはUSB 2.0ポートが2ポート用意され、外付けHDDを増設することも可能(増設用HDDは前面のUSB 3.0ポートにも接続可能)。OMNINAS KD20にはプリントサーバー機能も盛り込まれており、USBポートにUSBプリンタを接続すれば、LAN内でプリンタの共有も可能となる。その他に、iTunesサーバー機能、DLNA 1.2準拠のDLNAサーバー機能も盛り込まれている。

 そして、OMNINAS KD20の最大の特徴となるのが、家庭内はもちろん、外出先からも保存データに簡単にアクセスしたり、ファイルを転送できるという点だ。しかも、iPhone/iPadやAndroid用に専用アプリが用意され、手軽に保存ファイルにアクセスする機能も実現。実際にiPhoneで専用アプリを起動すると、すぐにOMNINAS KD20に接続され、保存されている音楽を再生したり写真を表示できた。Pogoplugに似た機能だが、OMNINAS KD20単体で実現できるという点は大きな魅力と言える。

 加えて、スマートフォンで写真を撮影したら、自動的にOMNINAS KD20に転送する機能も実現される。こちらもDropboxなどのWebストレージサービスで実現されているものとほぼ同じだが、ストレージの容量上限まで、制限なく利用できるのが優位点となる。

 内部の仕様だが、CPUはPLX TechnologyのNAS 7821(700MHz)、メモリは256MB(DDR2)搭載し、OSはEmbedded Linuxを採用。クライアントは、Windows XP以降、Max OS、Linux、iOS 4.2以降、Android 2.3以降に対応。データ転送速度は、リード最大75MB/秒、ライト最大55MB/秒。8月頃の発売を予定しており、価格は未定。

 ところで、今回のOMNINAS KD20を機に、今後さまざまなNAS製品を投入していく予定だそうだ。まず、2013年の第1四半期には、より高速なCPUを搭載し、転送速度100MB/secを実現する上位モデルの発売を予定している。また、長期的には4個や8個のHDDベイを搭載し、エンタープライズ用途にも応用できる製品の投入も計画しているそうだ。今後は、ベアボーンだけでなくNASキットもShuttleの主力製品として注目を集める存在になりそうだ。

Shuttle初のNASキット「OMNINAS KD20」本体正面はトビラになっており、トビラを開くとHDDベイにアクセスできる3.5インチHDD対応のHDDベイは2個用意され、双方ともホットスワップ対応。また4TB HDDにも対応し、最大8TBの容量を実現可能
側面は2.5mm厚のアルミニウムボディで、HDDの熱を効率的に放出する背面には冷却用の7cmファンを搭載するが、稼働中でもほぼ止まっているそうだ正面下部にはメモリカードスロットとUSB 3.0ポートを用意。NASキットでUSB 3.0を備えるのは珍しい。デジカメやメモリカードを取り付けると、写真などのデータが自動的に転送される
背面にはGigabit EthernetポートとUSB 2.0×2を用意。USBには増設用HDDやプリンタなどを接続可能iPhoneやAndroid端末などで専用アプリを利用し、OMNINAS KD20に外出先からも簡単に接続し、ファイルの転送が可能接続したいOMNINAS KD20を選択すれば、内部のフォルダが表示され、ファイルの転送、音楽や動画の再生が可能。スマートフォンで撮影した写真をOMNINAS KD20に自動転送する機能も搭載

●液晶一体型ベアボーンの新モデル

 液晶一体型ベアボーンの新モデル「X70」も展示されていた。従来モデルのX50V2 PLUSでは、CPUがAtom D525で、1,366×768ドット表示対応の15.6型タッチパネル液晶を搭載していたのに対し、X70はチップセットにIntel H61 Expressを採用し、デスクトップ向けのLGA1155対応CPU(TDP最大65W)が利用可能となった。第3世代Core iシリーズにも対応しており、従来モデルから大幅に性能が向上することになる。

 また、表示解像度は1,366×768ドットと従来と同じだが、液晶サイズが18.5型に大型化された。タッチパネルは感圧式だが、静電容量式タッチパネルと比べても大きな違和感なく利用できるよう調整されており、ドラッグを多用するゲームもなかなか快適にプレイできた。ドライブベイは、2.5インチのHDDベイが1個用意され、光学ドライブは搭載できない。ポートは、左右にUSBポートが2ポートずつ用意され、うち2ポートはUSB 3.0対応。また、背面にはオプションでシリアルポートやパラレルポートも追加できる。

 こちらは9月頃の発売を予定しており、価格は未定だ。

液晶一体型ベアボーン新モデル「X70」。デスクトップ向けCore iシリーズ(TDP 65W以下)に対応し、性能が向上。液晶サイズも18.5型に大型化した左側面。本体の奥行きは短く、専有面積は液晶ディスプレイと同等。USBポートを2ポート備える
右側面。こちらにもUSBポートを2ポート備え、全4ポートのうち2ポートはUSB 3.0対応内部には2.5インチHDD/SSDを1台搭載可能。背面にはシリアルポートやパラレルポートも追加できる

(2012年 6月 8日)

[Reported by 平澤 寿康]