【COMPUTEX 2012】
Intel、第2世代のThunderboltコントローラで普及を促進

COMPUTEX TAIPEIのメイン会場近くで行なわれたIntelのThunderbolt発表会

会期:6月5日~6月9日(現地時間)

会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 Intelは、COMPUTEX TAIPEI開催前日にあたる6月4日、メイン会場近くで記者会見を開催し、同社が提唱する高速I/O規格「Thunderbolt(サンダーボルト)」テクノロジー(以下Thunderbolt)に関する進捗状況やロードマップなどに関する説明を行なった。

 インテル・アーキテクチャー事業本部 Thunderboltマーケティング・ディレクター ジェイソン・ジラー氏は「我々は第2世代の新しいコントローラを投入している。シングルポートの製品はすでに投入しておりマザーボードなどに搭載されている。さらにデュアルポートの製品を今年の後半に投入する予定だ」とし、出荷を開始している第2世代のThunderboltコントローラにより、低コストでPCにThunderboltを搭載する環境が整ってきたということをアピールした。

 会場にはThunderboltを搭載したノートPCのほか、台湾のマザーボードベンダーによるマザーボードなども多数展示されており、Thunderboltが一部の高価な製品だけでなく、よりミドルレンジの製品などにも採用が広がってきていることをアピールした。

●事実上Mac OS専用だったThunderboltが、Windowsでも普及へ

 IntelのThunderboltはPCI Expressの技術を外部ケーブルに適用することで、USB 3.0(最大5Gbps)よりもさらに高速な10Gbpsでデータ転送が可能な高速I/Oだ。ThunderboltはAppleの「MacBook Pro」に最初に採用されたが、規格としてはオープンな規格になっており、基本的にはどこのメーカーでも採用できる。

 2011年はWindowsでサポートしていなかったため、実質的にはApple専用の外部バスになっていたのだが、2011年9月にサンフランシスコで行なわれたIntel Developer ForumにおいてWindowsサポートの計画が明らかにされ、International CESではマザーボードメーカーなどがThunderbolt搭載マザーボードや外部GPUボックスなどを展示したほか、LenovoやAcerなどが搭載ノートPCを公開するなど、少しずつWindowsプラットフォームでも普及の兆しが見えていた。

 今回のCOMPUTEXでは実に多くのマザーボードメーカーがThunderbolt搭載マザーボードを展示したほか、搭載ノートPCも多数が展示され、WindowsプラットフォームでもThunderboltの普及が進んでいることを伺わせた。

 インテル・アーキテクチャー事業本部 Thunderboltマーケティング・ディレクター ジェイソン・ジラー氏は「現在ベンダーと協力してWindowsドライバの準備を進めている。標準ドライバで動くモノはよいが、動かないモノもあるので、それらに関してはThunderboltのドライバ認定プログラムを用意しており、それに通った製品にだけThunderboltのロゴを利用することができるようになっている」と述べ、引き続きWindowsでもThunderboltが使える環境の構築に努めると説明した。

ASUSTeKの「P8Z77-V Pro/Thunderbolt」ASUSTeKの「P8Z77-V_Premium」MSIの「Z77A-GD80」
GIGABYTEの「GA-Z77X-UP5 TH」GIGABYTEの「GA-Z77MX-D3H」GIGABYTEの「GA-Z77X-UP4 TH」
Foxconnの型番不明ASRock「Extreme 6/TB R1.0(4C)」ASRock「Extreme 6/TB R2.0(2C)」
Intel「DZ77RE-75K」Intel「D33217CK」Windows向けにドライバー認証プログラムなどを用意している

●ホスト側に専用コントローラを用意、低コスト/低消費電力で実装可能に
インテル・アーキテクチャー事業本部 Thunderboltマーケティング・ディレクター ジェイソン・ジラー氏

 Intelは記者会見において、Thunderboltの進捗状況について解説。この中でジラー氏は、Intelが第2世代のThunderboltコントローラをすでに出荷しており、それが今後のWindowsプラットフォームにおけるThunderboltの普及を進めるとアピールした。

 ジラー氏は「我々は昨年MacBook Proに搭載されたThunderboltのコントローラを出荷したが、今年は第2世代となるコントローラを出荷した。この第2世代チップは、パッケージも小さくなり、周辺部分がチップに統合されたことにより実装コストが低下し、より実装しやすくなっている」と述べ、MacBook Proに搭載した第1世代コントローラを改良した第2世代のコントローラを投入したという。

 ジラー氏によれば、第1世代のThunderboltコントローラは開発コードネーム「Light Ridge」で知られる82524EFで、ホストまたはデバイスとして2ポートをサポートしている。Thunderboltはデイジーチェーン(鎖のように次々とデバイスを接続していく接続方法)が可能になっているため、コントローラは2つのポートを標準でサポートする。この第1世代のコントローラをPCに搭載してホストとして利用する場合には、1ポートだけで十分なのだが、機器側はデイジーチェーン接続をする場合があるため、2ポートをサポートしている必要がある。第1世代のLight Ridgeでは、ホスト側(つまりPC)にもデバイス側(つまり機器側)にも利用されることを想定していたため、2ポート搭載されていたのだ。

 しかし、第2世代となる開発コードネーム「Cactus Ridge」で知られるDSL3510/3310に関しては、やや状況が異なっている。ホストにもデバイスにもなることはできるのだが、DSL3510に関しては2ポート、DSL3310に関しては1ポート。このため、DSL3510に関しては従来通り、ホストにもデバイスにも利用できるが、DSL3310に関しては事実上ホストのみの利用となる(厳密に言えばデイジーチェーン不可のデバイス側にも利用できる)。

Thunderboltのコントローラチップ。左から第1世代のLight Ridgeこと82524EF。中央はCactus RidgeことDSL3310、右はPort Ridge"ことDSL2210第2世代Thunderboltのコントローラの解説

 このDSL3310が登場したメリットは、消費電力の低減とコストの削減だ。ジラー氏によれば「第2世代のコントローラは、従来は別チップだった周辺部分も統合しており、実装コストを削減できる」とのことで、第1世代のコントローラに比べて低コストでThunderboltの実装が可能になる。また、ポート数が減ればその分、消費電力の削減も可能になるはずで、その点でもメリットがあると言えるだろう。1月のInternational CESで発表されていたが、AcerのUltrabookにもThunderboltを搭載しており、それもこうした第2世代のコントローラが登場したことにより可能になったと考えられる。なお、ジラー氏によれば、コントローラチップのプロセスルールは第1世代と同じで、ダイサイズそのものは従来製品とあまり変わらないという。ただし、周辺部分が統合されているので、実際としては減っていると考えることもできる。

【表1】Thunderboltコントローラの仕様(筆者作成)
型番82524EFDSL3510DSL3310DSL2210
開発コードネームLight RidgeCactus RidgePort Ridge
ポート数2211
役割ホスト/デバイスホスト/デバイスデバイス
周辺部分統合-

●ポータブルデバイスのみ対応のコントローラや低価格ケーブルの取り組みも
ケーブルの低価格化、光ファイバーのケーブルは今年の後半に導入予定

 デバイス向けに1ポートのコントローラ「Port Ridge」の開発コードネームを持つDSL2210も用意されており、これを利用することで、デイジーチェーン接続させる必要が無い2.5インチのポータブルHDD/SSDをThunderboltで接続可能になるという。

 このほか、ジラー氏はThunderbolt普及に向けてケーブルの低価格化やより長距離通信などへの取り組みを行なっていると説明した。ジラー氏によれば「現在ケーブルベンダーがより低価格のケーブルを提供できるように取り組みを進めており、今年の後半にはその成果が反映された低価格なケーブルが市場に出回ることになるだろう。また、光ファイバーを利用したケーブルに関しても準備が進められており、今年の後半には10~20mと長距離をサポートするケーブルが利用できるようになるだろう」と話した。

(2012年 6月 5日)

[Reported by 笠原 一輝]