【COMPUTEX 2011レポート】
【クーラー&ケース編】主要メーカーが夏に向けた新製品を展示

クーラーマスターが実施したオリジナルケースのコンテスト「Case Mod Competition 2011」で日本人参加者の作品が入賞。ブース内で飾られていた

会期:5月31日~6月4日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 例年、COMPUTEX TAIPEIはPCパーツ全般に渡り、今年後半に各社が投入する製品が展示される。とくにCPUクーラーやケースなどは、南港展覧館の1階に多数の関連メーカーが出展。広大なスペースがこれらの製品の展示スペースになっている。これらの中から、注目の製品をピックアップして紹介する。

●ヒートシンクの一工夫が目立つCPUクーラー

 まずはCOMPUTEX会場で見かけたCPUクーラーから紹介したい。

 まずはサイズの新製品だが、「刀」シリーズの最新作となる「刀4」が展示された。刀シリーズは傾斜角を付けたヒートシンクが特徴の製品で、現行の刀3はヒートシンクやファンそのものが斜めに取り付けられるという印象ある見た目の製品だ。刀4はそれに比べると見た目のインパクトは弱く、ファンは一般的なサイドフローと同じようにマザーボードに対して垂直になる。ただし、ヒートシンクには傾斜角が付けられており、この点では刀シリーズの流れを引き継いでいる。

 新しいシリーズの製品としては、140mm角の搭載が特徴となる「Asyura」が登場。薄型のヒートシンクではあるが、ヒートパイプのデザインを工夫することにより効率を高めている。また、ファンは2基を搭載可能となっている。

 また製品化が決まっているわけではないプロトタイプの製品としては、「Mugen 3 Mini」も展示されていた。こちらは発売済みの無限3のコンパクト版ともいえる製品で、80mm角ファンに合うサイズまでヒートシンクサイズをシュリンク。ただ、無限3の特徴ともいえるファンの空気が直接ヒートパイプに当たりやすいデザインは踏襲している。

 先日お伝えしたZalmanのクーラーもそうだったが、ファンが作り出したエアフローに触れるヒートシンクの表面積を増やす、というアプローチの製品が増えている。例えばサイズであれば無限3やAsyuraもそうした発想が見られる。

 台湾のクーラーベンダーであるReevenでは、こうしたヒートパイプデザインに工夫を凝らした3モデルのプロトタイプを展示していた。これらは製作したばかりのサンプル品で性能評価はまだこれからとのことだが、こうしたヒートパイプの工夫は今後のCPUクーラーデザインにおいて重要なポイントになってくるかも知れない。

サイズが展示した「刀4」。4代めの刀は一般的なサイドフローファンに、傾斜角を付けたフィンで構成されるヒートシンクを組み合わせた140mm角ファンを最大で2基搭載可能な大型クーラー「Asyura」無限3をコンパクトにした「Mugen 3 Mini」。ファンは80mm角。今回はプロトタイプの展示
Reevenが展示したCPUクーラーのプロトタイプ3モデル
ヒートパイプのレイアウトを示すパネルも展示されていた

 クーラーマスターのブースで展示されたCPUクーラーは、3月のCeBITレポートで紹介したものが中心となっている。ただ、CeBITでは展示されていなかった製品が1モデルのみ存在したので紹介しておきたい。

 「Project S600」の開発コードネームを持つCPUクーラーで、赤いファンが印象的なデザインだ。このファンは120mm角で回転数は600~1,600rpm。発売は2カ月以内を予定。価格は未定だが、10~20ドル程度にしたいと応対してくれたスタッフは述べている。

 ヒートシンクは、“ハニカムデザイン”(ブーススタッフ)にしており、これによりヒートシンクの表面積を増やす試みだ。

 またベース部はファンのエアフローに対して角度を付けたデザインを採用。マザーボードに設置して横から見ると、やや下向きの角度から吸気し、やや上向きに排気する格好になる。一般的なサイドフロークーラーは、ケース前方からの吸気をヒートパイプに通すが、多くのPCケースでは前方下部にフロントファンを備えていることから、よりその空気を取り入れやすくするデザインだとしている。

クーラーマスターが展示した「Project S600」ヒートシンクデザインはブーススタッフが“ハニカムデザイン”と説明するもの。表面積を増やすためのデザインだケースフロント下部の吸気ファンからの空気を取り入れやすくするために、ベースを斜めにしている

●AntecのP280やSilverStoneの6GPU搭載ケースに注目

 PCケースの話題では、まずAntecが披露した「P280」と「SOLO II」が挙げられる。P280、静音性に優れたケースとして話題となったP180の後継となる製品。270度開閉可能なフロントパネルは健在で、フロントI/Oは右下部から上部へと移動した。

 またファンレイアウトの変更が大きな特徴で、上面に2基、背面に1基の120mm角ファンを搭載。P180では下部にサイドフロータイプのファンを1基備えることで、上下に2分割されたエアフローを生み出すのが1つの特徴となっていたが、その仕切り板がなくなっていることも含め、ケース内のエアフローが大きく変化しているのが特徴といえる。

Antecがプライベートブースで展示したP280。モデル名のとおりP180の後継となる製品だケース内部。二重構造ではなくHDDベイも1つに繋がったデザインになっている。電源を下部に置くレイアウトは踏襲フロントファンは取り外しが容易なフィルタも装備
HDDベイはトレイを用いて固定する方式。ダンパーによる振動吸収を行なう点も従来どおりフロントパネルは270度開閉。上部にフロントインターフェイスを装備する。USB 3.0はマザーボードのヘッダピンへ接続できるケーブルになっている

 また、やはり静音ケースとして発売されたSOLOの後継となるのがSOLO IIだ。主な変更点は、拡張ベイの数を5インチ×2、シャドウ×3とし、シャドウベイ下部のスペースを開放。これにより長いビデオカードにも対応できる設計とした。

 また、5インチベイのうち、最上部はスロットインタイプの光学ドライブを装着できるデザインとなっている。このスロットインタイプのドライブとして、Antecでは通常のハーフハイトより薄い設計のドライブを装着できるデザインになっている。そうしたデザインのドライブは今後登場する見込みだという。

 ファンは背面に1基のみ。フロントに2基のファンを取り付けることもできる。装備済みのファンは、同社製のダンパー付きファンである「TrueQuiet 120」。これはP280でも同じファンが用いられている。

Antecが発売するSOLOの後継モデルとなるSOLO IIケース内部。シャドウベイがケース底面まで伸びていたSOLOに対し、SOLO IIは長いビデオカードを装着できるデザインへと変更されたフロントカバーを開けたところ。取り外ししやすいフィルタを装備している
フロントにはUSB 3.0×2も装備5インチベイの1つにスロットインタイプのスリム光学ドライブを利用するためのベゼルを備える
背面のデザイン。120mm角ファンは出荷時に装着済みP280、SOLO IIともに、装着済みファンはTrueQuiet 120

 最後にSilverStoneが展示した、インパクトの大きいケースを紹介しておきたい。SilverStoneのブースでひときわ目立っていた「Temjin TJ12」で、ワークステーション用のLGA1366対応マザーボードにGeForce GTX 480を4基、GeForce GTX 580を2基搭載するというケース。展示されたのはプロトタイプとして製作されたものとのことで、テクノロジデモという色合いが強い状態だ。

 マザーボードはI/Oパネルがトップに配置される格好で設置される。ビデオカードを6枚装着するためにPCI Expressスイッチを備えた専用カードを、マザーボードのPCI Expressへ接続している。

 電源は最大4台を搭載可能。デモ機では1,200W電源を2基のみ搭載しており、残りの2基を使用するためには、デモ機でビデオカードを装着している拡張スロットのスペースを使う必要があるとのことだ。

ビデオカード6枚を装着したデモを行ったSilverStoneの「Temjin TJ12」マザーボード上のPCI Expressから6枚のビデオカードを接続するための基板を接続している独特の整流板が特徴のAir Penetrator Fanを底面に2基搭載して、6枚のビデオカードを冷却している

(2011年 6月 6日)

[Reported by 多和田 新也]