イベントレポート
次世代Snapdragonはデスクトップ的な利用を実現
(2016/2/23 00:00)
Qualcomm Technologiesは、MWC 2016の初日に記者会見を開催し、同社のSoC、5Gなどについての戦略を説明した。
Qualcommは既にMWCに向けた発表を行なっており、Snapdragon 625、435/425などのミドルレンジからバリューセグメント向けのSoC、さらには同社がGigabit Ethernetクラスの伝送速度を実現すると表現しているSnapdragon X16モデムなどに関する記者の質問に答えた。
5Gのプロトタイプはさほど遠くない2018年に、2020年には製品に搭載される
Qualcommのここ数年の発表は、MWCに合わせるのではなく、MWC前にプレスリリースを発行し、その発表内容をMWCで展示するという形になっている。今年(2016年)も、次世代のセルラー回線の規格となる「5G」に関する発表や、4Gで1Gbpsの通信速度を実現するSnapdragon X16モデムに関する発表、さらには、ミドルレンジのSoCとなるSnapdragon 625や、バリュー向けのSnapdragon 435/425に関する発表を、事前に行なっている。
このため、MWCの初日に行なわれた記者会見では、そうした事前の発表内容や、MWCでの発表内容に関する件に質問が集まった。例えば、5Gに関する質問への回答の中で、Qualcomm CEO スティーブ・モレンコフ氏は具体的な時期として「プロトタイプを2018年に、製品は2020年になると思う」と述べた。
モレンコフ氏は「5Gは、4G/3Gの延長線上にある技術であり、5Gのプレイヤーでいたいなら4Gの強力なプレイヤーである必要がある」とも述べ、4G世代で他社に大きな差を付けているQualcommが5Gでも大きなリードを築くであろうことに自信を示した。
PCやスマートフォンユーザーにとっての注目は、同社が次世代のSnapdragonに関するヒントを話したことだ。今回のMWCでは、同社のプレミアム向けSoCであるSnapdragon 820(MSM8996)を搭載したスマートフォンの発表が相次いでいる。SamsungのGalaxy S7、LGのG5(記事へのリンク)、HPのElite X3(同)、そして本日発表されたソニーのXperia X Performance(同)など、各社ともに強力な製品になっている。例えば、LG G5は、Snapdragon 820の内蔵GPUであるAdreno 530の機能を利用して、「LG 360 VR」というゴーグルをオプションとして用意している。これにより、ほかのVRゴーグルのようにデスクトップPCやゲーミングノートPCを使わなくてもVRを実現できることが特徴となっている。
Qualcomm CEOのモレンコフ氏は「VRを実現するのは容易ではない。VRでは映像とオーディオのタイミングを維持することが大事だ。我々のSoCはCPU、GPUそしてカスタムDSPが1チップになっており、それを生かしてVRの機能を実現している。さらに広帯域のネットワークも大事で、IEEE 802.11adの実装によって数Gbpsの転送速度が実現できている」と述べ、LGがG5と360 VRでVRの機能を実現できた背景には、Snapdragon 820が大きく貢献しているのだとアピールした。
次世代SnapdragonではデスクトップPCのような使い方ができるようになる
その上で、同社上級副社長 兼 Qualcomm CDMA Technologies 社長のクリスチアーノ・アーモン氏は「次世代のSnapdragonではより多くのデスクトップタイプのシナリオをモバイルデバイスでこなせるようになる。現代のSoCでは、4Kやより高いフレームレートによりCPUよりもGPUが重要になりつつあり、弊社もGPUの開発に対して多大な投資を行なっている。我々は将来的には現在デスクトップで行なわれているユースケースはモバイルでも当たり前になると考えており、次世代のSnapdragonの世代では、もっと多くのデスクトップの使い方を実現したデバイスが登場することになるだろう」と述べた。
この発言は2つのことを示唆している。1つは、Qualcommの次世代Snapdragonが、CPUよりも、GPUが強化されている製品である可能性が高いことだ。Qualcommの最新製品であるSnapdragon 820はCPUがARM Cortex A57などのARMからライセンスを受けた64bit CPUから、Qualcomm自社開発の64bit CPUとなるKryoに変更されている。しかし、GPUに関してはAdreno 530と、基本的には従来のAdreno 5xxの延長線上にある製品となっている。次世代製品ではそれがもっと大きなジャンプがある、そういうことを示している可能性が高い。
もう1つはQualcommが次世代製品において、スマートフォンを用いてこれまではPCが必要だったような使い方を実現しようと考えていることだ。Snapdragon 820世代でもLGの360 VRのように実現されているものがあるが、それはLG専用のVRが必要になっている。例えば、それをVRゴーグルの事実上の標準であるOculus Riftを利用するには、GPUがもう一段階の性能アップが必要だと考えられる。これが実現できるようなGPUが次世代のSnapdragonに搭載されているのであれば、かなり面白いことになるのではないだろうか。
同じことは、WindowsスマートフォンのContinuum for Phonesにも言うことができる。Windows 10 Mobileが登場したことで、Continuumを利用してスマートフォンをデスクトップPC的に使うことに注目が集まっている。しかし、GPUの性能だったり、メモリの容量の問題だったりで、完全にPCの代わりになっているかと言えば、そうではない。例えば次世代Snapdragonで、GPU性能やメモリ容量がもっと増えれば(Microsoftが64bit版のWindows 10 Mobileを出す必要があるが……)、どうしてもWin32のアプリが必要な人以外は本当の意味でPCの代わりになるかもしれない。
そうしたことが実現されるかもしれないと考えれば、アーモン氏の発言は非常に重要だと言える。ただ、今回Qualcommは次世代Snapdragonについてこれ以上は詳細は語らなかった。