イベントレポート

ありそうでなかったハイエンドCPUを熱源にしたヒーター登場

~歯ブラシから靴まで。2016年はこんなものまでスマート化

 1月4日(米国時間)に開催されたCES 2016のプレビューイベント「Unveiled」では、LenovoやLGといった大手企業から、名も知れない中小企業まで、多数の企業が出展しており、独自性の高い製品を展示している。

 Unveiled自体に特定のテーマは設けられていないが、全体を見回してみて気付くのは、それまではITとは関係のなかった製品がスマート化、あるいはIoT化されている点だ。それまで単独で動作していた製品が、スマートフォンやクラウドと繋がることで、より便利になったり、効率が向上する。ここに展示されたものは、必ずしもそのジャンルで初めてスマート化されたものとは限らないが、目に付いたものを紹介する。

CPUで部屋を暖めるヒーター

「Q.rad」

 Qarnot Computingの「Q.rad」は、温度以外に二酸化炭素、湿度、騒音レベル、人感用赤外線、照度、気圧など多数のセンサーを搭載したハイテクヒーターだ。また、タッチ画面やQi対応ワイヤレス充電器、充電用USBポート、Wi-Fi、Bluetooth、Gigabit Ethernetなどを搭載し、スマートフォンと連動させて使うことができる。

 しかし、その最大の特徴は熱源として高性能CPUを搭載している点にある。情報が少なく、使い方などについて不明な点もあるのだが、Q.radには4GHz駆動の8コアCPUを搭載するコンピューティングユニットを3基内蔵しており、このCPUが発生する熱によって部屋を暖める。果たしてCPUの排熱だけで部屋を暖められるのか疑問もあるが、同社によれば45~90平方m程度の部屋を暖められるという。

 これだけの排熱を行なうCPUが何を処理しているのかと言うと、Q.radはクラウドに繋がっており、Qarnotと提携している企業の3Dレンダリングや研究所での演算を行なっているのだという。つまり、Q.radは分散コンピューティング用の1端末であり、SETI@homeなどの発展系と言える。SETI@homeでは、地球外生命体の探索用にボランティアでネットワーク接続されたPCのCPUの計算能力を無償提供する。Q.radでも、同様に内蔵されたCPUの処理能力を他社に提供するが、同時にその排熱がヒーターの熱源となる。加えて、その処理で使った電気代はきちんと計算されており、ユーザーに還元されるという。つまり、事実上Q.radは電気代がかからない。また、ファンも内蔵していないので、騒音も発しないと、至れり尽くせりだ。

 当然、Qarnotがエコシステムを確立しないと機能しないシステムだが、フランスの実証実験では100戸の家庭がQ.radによって電気代を使わずにヒーターを利用できたという。まずはスマートビル向けに提供し、2017年以降、個人宅にも提供開始する予定。

タッチ画面搭載
右側はQi対応ワイヤレス充電器となっている

センサーとビッグデータをうまく活用した国産自転車

「ORBITREC」

 日本のベンチャーメーカーであるCerevoは、IoT自転車「ORBITREC」を展示。レースにも使えるというスポーツタイプの自転車で、チタン焼結型3Dプリント技術とカーボンファイバーチューブを組み合わせた構造で、最短納期1カ月以内、価格7千ドル以下を実現している点も特徴だが、フレームダウンチューブに各種のセンサーを内蔵しており、走行中のログを取得/分析できるのも大きな特徴。

 搭載するセンサーは加速度/角速度/地磁気の9軸センサーと、温度、湿度、気圧、照度、GPS。これらによって、どういった環境や路面をどのように走行したというログを取得できるが、それに加え、走行先の天気や、他のユーザーが急ブレーキをかけたことで事故の発生確率が高いなどといったデータに基づいて、ユーザーのスマートフォンにプッシュ通知で注意を促すといった機能も搭載する。

 センサー部分だけの単体発売も予定している。

フレームダウンチューブ部にセンサーを内蔵
センサーだけも単体で発売予定

あの映画を彷彿とさせるスマートシューズ

「Smartshoe」

 去る2015年は、1985年に上映された「バック・トゥ・ザ・フューチャー・パート2」で未来として描かれた年で、その中で登場した、紐が自動的に締まるNike製シューズに心ときめかせた人も多いだろう。Nikeは2016年春に本当にそれを製品化する予定だという。

 それはさておき、DigitsoleがUnveiledに展示していた「Smartshoe」は、その名の通り、スマート化された靴だ。その言葉から容易に想像が付くように、内蔵センサーによって歩いた距離を計測し、Bluetooth経由でスマートフォンと接続し、アプリで消費カロリーなども分かるようになっている。

 それだけであれば、スマートフォン単体でもできるわけだが、この靴のソール部分は発熱できるようになっていて、寒い時に足を暖められる。これではちょっとしたおバカグッズとも捉えられかねないが、本製品はスマートフォン経由、あるいはかかと部分のボタンを押すことで、足の甲部分が機械的に自動開閉するようになっており、紐を緩めたり結んだりせずとも、ユーザーの足の厚みに応じて最適な角度で閉じてくれる。さらに、夜間利用時用にライトも内蔵する。

 結局全ての機能を書いても、やはりおバカグッズのような気もしてきたが、Digitsoleは2016年秋に米国で450ドルにて発売の予定。当然、利用に際しては、靴を充電する必要がある。雨天時や激しいランニングなどにも耐えられるのかは不明。

足の甲部分が機械的に開閉する

そのほか

 そのほかの製品を写真で紹介する。

Hydraoのスマートシャワーヘッド「Hydrao」。使った水量に応じてヘッドに内蔵したLEDの色が変化。一定量を使うと自動停止することで、無駄な水の消費を抑えるのが目的。コントローラなどは、水流で動く羽の動作で電力を発生させるのでバッテリは不要。Bluetooth経由でスマートフォンと接続して、使用できる水量や色の変化を指定したり、どれだけ水や料金を節約したかなどのログを取得できる
Kolibreeの子供向けスマート歯ブラシ「Kolibree」。きちんと歯磨きできたかなどを分析できるほか、歯磨きと連動するゲームによって、子供が自主的に歯磨きするようにさせる
LifeFuelsのスマートタンブラー「Smart Nutrition Bottle」。いくつかの種類の栄養ドリンクポッドが用意され、この製品に入れることで、飲んだ人の栄養管理ができる
eGeeTouchのスマートスーツケースロック「eGeeTouch」。NFCタグやNFC内蔵スマートフォンで解錠できる。Bluetoothではセキュリティが弱いためNFC対応にしたという
こちらは指紋センサーも内蔵したもの。日本でも取り扱う
南京錠などもラインナップしている
Withingsのスマート体温計「Smart Temporal Thermometer」。こめかみ部分にあてて体温を測定。Wi-Fiでスマートフォンと同期し、ログを取得可能。マルチユーザー対応で家族でも1台で利用できる
sengledのスマート電球。スピーカー内蔵、セキュリティカメラ内蔵、Wi-Fiリピーター内蔵、音声制御対応などいろいろなラインナップを取り揃える
スマート枕、と言うと言い過ぎだが、Bedditの「Beddit」は枕に取り付けて、睡眠のログを取得する
オムロンのスマート血圧測定器。スマートフォンと同期できる

(若杉 紀彦)