イベントレポート

Imagination、テッセレーションや仮想化に対応した「PowerVR Series7」を解説

Imagination Technologies Director, PowerVR Graphics Business DevelopmentのKristof Beets氏

 英Imagination Technologiesは、パシフィコ横浜で開催中のEmbedded Technology 2014(ET 2014)に出展。既存グラフィックスIPを用いたデモンストレーションを実施しているほか、英国時間の10日に発表した「PowerVR Series7」を紹介している。今回、同社PowerVRグラフィックス部門のディレクターであるKristof Beets氏に、PowerVR Series7における強化ポイントを伺うことができたので紹介する。

 PowerVRは、Series6から「Rogue」と呼ばれる新アーキテクチャへ移行。クラスタによって拡張できる設計とした。Series7は、このRogueアーキテクチャをベースに、強化したものとなる。

 また、Series6では最初のモデルが登場した後に、スマートフォン向けの“XE”や高性能な“XT”といったモデルが追加されたが、Series7では発表時点でXEとXTの2モデルを展開。ウェアラブルデバイスやスマートフォンといった小型デバイスから、ノートPC、そしてHPCなどにも適応できる広いレンジで展開する。大まかに2クラスタ以上を持つものが「PowerVR Series7XT」、1クラスタのものが「PowerVR Series7XE」となる。

PowerVR Series7の概要
PowerVRシリーズの性能の変遷
1クラスタから16クラスタまでの製品を用意することで、幅広いレンジの性能、機能を提供する
2クラスタ以上を搭載するXTと、ウェアラブルなどのエントリーへ向けた1クラスタのXEをラインナップする

 高性能コアとなる「PowerVR Series7XT」は2~16クラスタの5モデルを用意。2クラスタはスマートフォンやタブレットなどを想定しており、8クラスタや16クラスタはNVIDIAのGeForce GT 730級の性能を持つことから、ノートPCなども視野も入れていると言う。

 Series7XTのクラスタアレイ(Unified Shading Cluster Array)は、32bit浮動小数点に対応するMUL/ADD演算ユニット(ALUコア)2個と三角関数などの演算を行なうスペシャルファンクションユニット1個で構成される統合シェーダクラスタ(USC:Unified Shading Cluster)を16パイプラインで備える点は変わらないが、新たにオプションでALUコア2個を用いて64bit浮動小数点演算に対応させることができるようになった。このほか、ジオメトリ演算やスケジューラの改善、新たな命令セットの追加や見直しなども行なわれている。

 Series7XTでは、このクラスタアレイを最大16クラスタ備え、この場合、ALUが512コア、演算性能は1.5TFLOPSとなる。クラスタアレイ2個単位でテクスチャユニット1個を共有する点は、従来のSeries6と同じだ。そのため、クラスタは2個単位での増減となる。ラインナップは、2クラスタ/64 ALUの「GT7200」、4クラスタ/128 ALUの「GT7400」、6クラスタ/192 ALUの「GT7600」、8クラスタ/256 ALUの「GT7800」、16クラスタ/512 ALUの「GT7900」となる。

 こうした改善により、クラスタ当たりの効率を高めており、同社のベンチマークデータでは、Series6とSeries7では同一クラスタ数/同一クロックにおいて最大60%の性能向上になるとしている。スライドでは6クラスタのコンフィグレーションにおける性能グラフが示されており、ベンチマークによって35~60%程度の性能向上が見て取れる。

 また、電力効率が高いことから、競合他社のGPUでは時間の経過に伴って発熱によるクロック低下が起こり、性能がピークの40~60%に低下する傾向があるが、PowerVRではそうした性能低下が起こりにくいこともアピールしている。

PowerVR Series7XTの概要
PowerVR Series7XTのブロックダイヤグラムとその改善点(右)
シェーダクラスタ(USC)の概念図
PowerVR Series7XTのラインナップと想定市場
6クラスタ同士のSeries6とSeries7を比較したグラフ
時間経過に伴う性能の推移を示したグラフ

 機能面では、OpenGL ES 3.1とAndroid Extension Packを標準で含むほか、オプションでWindows向けのDirectX 11や、64bit浮動小数点対応などを含むHPC向けの拡張パックを組み合わせることができる。

 さらにSeries7XTでは、ハードウェアテッセレータの搭載や仮想化への対応も行なわれる。仮想化については、GPUのセキュアブートや、仮想化に対応するセキュアMMUを備えることで、ハードウェアによるプライオリティベースのスケジューリングが可能になるフレームワークを構築。仮想マシンを管理するハイパーバイザーがGPUをそれぞれの仮想領域に割り当てて、物理的に独立した形で利用できるようになっている。

Series7で提供される機能セット
Series7におけるGPU仮想化のフレームワーク
ハードウェアテッセレーションをサポート

 一方、PowerVR Series7XEは低価格なモバイル機器や、IoT機器、ウェアラブル機器などでの利用を想定しており、電力効率だけでなく、サイズの最適化が行なえるよう設計の自由度を高めている。

 前述の通り、Series7XEは1クラスタ構成となるが、XTと同じ16パイプライン(32 ALU)だけでなく、8パイプライン(16 ALU)としたモデルも提供される。モデル名は前者が「GE7800」、後者が「GE7400」となる。また、機能セットについてもAndroid Extension Packやテクスチャ圧縮機能なども含めて、多くをオプションとしている。

 ただしSeries7世代のRogueアーキテクチャである点はXTと同様で、コア当たりの性能については向上。同一クラスタ数/動作クロックのSeries6XEと比べて最大で108%性能が向上するとしている。

PowerVR Series7XEの概要
PowerVR Series7XEは16パイプラインの上位モデルと、パイプラインを半分に減らした下位モデルを提供
多くの機能のオプションとすることで設計の自由度を高めている
PowerVR Series7XTのブロックダイヤグラム
USCの内部はXTと同じ
Series6XEとの性能比較として最大108%の性能向上を示した

(多和田 新也)