イベントレポート

Huawei、フラッグシップスマホ「Ascend Mate 7」を発表

~6型では最小クラス、独自のオクタコアSoCを搭載

 中国Huaweiは、IFA開幕の前日にあたる9月4日にベルリン市内でメディア向けの新製品発表会を開催、スマートフォンの新モデル「Ascend Mate 7」と「Ascend G7」を発表した。Ascend Mate 7は、事実上の同社製オクタコア(8コア)SoC「KIRIN 925」を搭載する6型のフラッグシップモデル。Ascend G7は、普及価格帯の5.5型モデルになる。

世界市場では6.9%のシェア。スマートフォン分野ではSamsung、Appleに次ぐ3位にまで浮上した

 登壇したHuaweiのコンシューマ部門マーケティング最高責任者のリチャード・ユー氏は、コンシューマ向け製品戦略を「Product」、「Brand」、「Partnership」の3つに定義。プレミアムデザイン、品質、LTE対応などを製品の価値とした。またブランド戦略では「MAKE it POSSIBLE」のキャッチフレーズと、欧州サッカークラブチームへのスポンサーなどでブランド価値を高めているという。また、パートナーシップでは、小売店店頭におけるディスプレイや専用コーナーの設置などが2012年比で5~7倍あまりへと、飛躍的に伸びている点を強調した。

 モバイル通信の基地局分野ではEricssonに次ぐ世界2位のシェアを持つものの、コンシューマ向け製品はOEM中心で、自社ブランドの訴求を目的に積極的な活動を始めたのが2012年頃。スライドで示されたMAKE it POSSIBLEのキャッチフレーズも、日本人としては、つい「with Canon」が浮かんでしまうが、世界的には急速にブランドの認知も進んでいる。従来の中国製品という価値観から脱し、製品の品質やブランドについてここまで自信をもったプレゼンテーションを行なえるまでの急速な変化を遂げつつあるという見方もできる。

 リチャード・ユー氏は、3つの製品を発表することを冒頭でコメントした。1つは、5月にパリでグローバル発表を行なった世界最薄スマートフォン(※当時)「Ascend P7」のバリエーションモデル。Sapphire editionという名称どおり、前面をサファイアガラスに変更したモデルとなる。金属のフレーム部分も、ローズゴールドに色を変更し、背面パネルもセラミックとした。両面の硬度を高めたことで、キーホルダーと一緒にポケットに入れても、ひっかきキズが出来にくいことを、実際にステージ上で鍵を前面ガラスに擦りつけて見せて。Gorilla Glassを始めとする強化ガラスでは定番のデモンストレーションの1つだ。

発表された3製品。「Ascend P7」は5月にグローバル発表した製品の前面ガラスをサファイアガラスにするなどの変更を加えた派生モデルの「Sapphire edition」

 続いて、ユー氏が発表したのが、フラッグシップモデルの「Ascend Mate 7」だ。なお、“7”は7番目のモデルの意味で、画面サイズではない。画面サイズは6型を採用。「ユーザーはより広い画面を求めている」と言う。液晶パネルはジャパンディスプレイ製の「IPS-NEO」を世界初採用。6型としながらも、狭額縁化やユーザーインターフェイスの改良で、片手操作が可能な大きさであるとコメントしている。

6型ディスプレイ。「iPhone 5s」、「Galaxy S5」、そして前日に発表された「Galaxy Note 4」とパネルの大きさを比較
パネルはジャパンディスプレイ製のIPS-NEO。コントラスト比1,500:1、バッテリ消費を15%削減する
メタルフレームに、ダイヤモンドカットのエッジ
狭額縁化により、前面の83%が表示領域。競合製品よりも高比率と紹介している
6型前後の競合製品の中では、もっとも横幅が狭いとしている
カラーバリエーションは3色。ブラック、ゴールド、シルバー
アクティブ・ノイズ・キャンセリングヘッドフォンも発表
コントローラ部分にバックアップバッテリを持ち、約2時間は本体のバッテリを消費することなく、ノイズキャンセリング機能を有効にできる

 冒頭に述べたとおり、HiSilicon製のオクタコアSoC「KIRIN 925」を採用。HiSiliconはHuawei子会社のため、事実上の自社製SoCとなる。いわゆるbig.LITTLE構成のプロセッサで、Cortex-A15の高性能コア4基、Cortex-A7のコア4基で構成される。それぞれのクロック周波数は、1.8GHzと1.3GHz。これに、メモリ、GPU、コプロセッサ、LTE Cat.6モデム、セキュリティトラストゾーンなどで1チップ化されている。プロセスルールは28nm。動作するコア数は動的に切り替わり、例えば高負荷の3Dゲームなどでは、4基のA15コアと、3基のA7コアがフル稼働。一方で、SMSや通話などではA7コア1基の稼働で、省電力を実現する。アプリケーションの最適化を行なうことで、バッテリ消費は20~50%改善されるとした。

世界初のLTE Cat.6に対応するオクタコアSocとされる「KIRIN 925」
3Dゲームでは、4基のA15コアと、3基のA7コアがフル稼働する高負荷状態
電子メールでは、A7コアが3基のみ稼働
SMSや通話であれば、A7コア1基の稼働でバッテリに優しい
big.LITTLEのオクタコアに最適化された100個を超えるアプリケーション。アプリケーションの最適化を進めることで、バッテリ効率をさらに向上できるという
センサー管理には、コプロセッサユニットを内蔵
セキュリティ・トラスト・ゾーンで、指紋認証とユーザー管理を行なう
バッテリ容量は4,100mAh
通常利用で、2.33日使用できる。競合製品と比較

 モバイル通信機能では、グローバルモデルとしてLTEの対応バンドが多いのも特徴。さらにデュアルSIMに対応する。これまではLTE対応製品でも、デュアルSIMでは一方がLTE、もう一方GSMという使い方をする製品が多かったが、Ascend Mate 7は、両方のSIMスロットがLTEに対応する。SIMスロットは2つで、1つはMicro SIM、もう1つはmicroSDカードスロットと共用でNano SIMに対応というユニークな仕組みだ。

FDD-LTE、TDD-LTE、WCDMA、GSMなど、4G/3G/2Gで数多くのバンドを1モデルでサポート
アンテナをプライマリとセカンダリに分けることで、接続可能周波数を効率化
右手持ち、左手持ちと切り替えても、ゲインの低下を最小限に抑える
背面メタル筐体ながら、NFCに対応する。カメラ周囲にアンテナを配置して、カメラ部分から近接無線通信を通す仕組み
デュアルSIMに対応。両方のSIMスロットでLTEが利用できる。一方はMicro SIM、もう一方はmicroSDカードスロットと共用で、Nano SIMに対応する
6型ながら片手操作可能なように、ポップアップメニューは加速度センサー連動で位置を調整する

 UIは、同社のEMUIを3.0にバージョンアップ。前述したとおり6型液晶でも片手操作がしやすいように、加速度センサーなどを利用してダイアログや入力位置を自動的に変更できるように工夫がしてある。

 背面には指紋センサーも搭載。SoCのセキュリティトラストゾーンに最大5つの指紋を登録して、認証を行なうことができる。登録する指紋ごとにパーミッションを設定することが可能で、指ごとにビジネス用、個人用、ゲスト用などに分けて利用できるアプリケーションやフォルダなどを個別設定できるという。

背面カメラはソニー製の裏面照射式1,300万画素。28mm相当の広角仕様
指紋認証のプロセスが、競合製品の2ステップに対して、1ステップで済むことを強調
認識方向は360度。汗などで濡れた指先でも認識が可能
Ascend Mate 7の市場想定価格。ブラックとシルバーが標準モデルで499ユーロ。ゴールドがプレミアムモデルで599ユーロ。メモリとストレージ容量が異なる
Ascend Mate 7の初期出荷地域。10月出荷のこれらの地域に、日本と米国は含まれていない

 カラーバリエーションは3色。シルバーとブラックは標準モデルで、2GBのメモリと16GBのストレージ、ゴールドはプレミアムモデルで、3GBのメモリと32GBのストレージを搭載する。予想される店頭価格はそれぞれ、499ユーロと599ユーロ。10月にアジア市場とヨーロッパ市場を中心とした地域で出荷を開始する。初期出荷地域に、日本と米国は含まれていない。

Ascend Mate 7のゴールド。背面の様子
背面カメラ、指紋センサーは中央に配置されている
前面の様子。黒縁なので写真では見にくいが、狭額縁ながら側面の縁は存在する
左側面にあるデュアルSIMスロット。一方は、microSDカードスロットとNano SIMの共用になっている
右側面には電源ボタンとボリュームボタン
底面にあるMicro USBのインターフェイスは、ややオフセットされて配置
シルバーモデルの背面
ホームや戻る、メニューボタンはAndroid Lのそれと似たデザインだが、デモ機はAndroid 4.4(Kitkat)を搭載
一般的な男性の手でつかんだイメージ

 発表内容は上記の通りだが、率直に言ってオリジナル性は乏しい。確かに高品質、高機能で数年前とは桁違いの完成度を見せているが、見方によってはさまざまな模倣のかたまりとも言える。カラーバリエーションは顕著で、iPhone 5sのそれとまったく同一。人気カラーと言ってしまえばそれまでだが、Ascend G7では背面パネルが“ツートーン”のところまで似ている。UIもiOSに似た部分がかなりある。フォルダ表示などはそっくりだ。特に2013年からはiOSに限らず、アイコンやインターフェイスのフラット化が進んだことで、差別化がどんどん難しくなっている。ミニマル化の弊害とも言える部分だ。誤解を怖れずに言えば、デザインやインターフェイスを中心に、追い付くことはたやすい時期になりつつある。一方で先行するところも追いかけるところも、それを超える何かを生み出せない状態で皆が足踏みしていると言ってもいいかも知れない。

ユーザーインターフェイス「EMUI 3.0」の紹介。ドット(点)とサークル(円)ガコンセプト
ホーム画面にはレイヤーの概念も導入
曇りガラスのイメージで透過する。いずれも、何かに似ているイメージは残る

 続いては、ドイツの現地法人コンシューマ部門のバイスプレジデント、ロバート・グラフ氏から、普及価格帯の「Ascend G7」が発表された。こちらもGシリーズで7番目のモデルの意味で、画面サイズは5.5型。解像度は1,280×720ドット(HD)表示で、Qualcomm製のクアッドコアを搭載する。動作周波数は1.2GHz。メモリは2GBで、ストレージは16GB。ヨーロッパにおける店頭価格は299ユーロと想定されている。同製品は、発表時のスライドとハンズオンの写真を中心に紹介する。

普及価格帯のAscend G7
カラーバリエーションは、こちらもブラック、ホワイト、ゴールドを用意する
バッテリ容量は3,000mAh
背面カメラ。カメラスペックは、Ascend Mate 7とほぼ同等
前面カメラはセルフィー(自分撮り)+同時パノラマ撮影が可能
あとからフォーカスを調整する機能も搭載
Ascend G7は、299ユーロが想定市場価格
展示されていたAscend G7のホワイトとブラック
ホワイトモデルの前面
Ascend G7では、右側面にデュアルSIMスロット、電源ボタン、ボリュームボタンが集中する

 発表された3製品のいずれも、日本市場における展開は明らかにされていない。Huawei日本法人は、キャリアモデルのほか、SIMロックフリーのスマートフォンを流通させており、MVNOのユーザーなどをターゲットにして、いずれかの製品を国内市場にも投入する可能性はあるだろう。

(矢作 晃)