イベントレポート

AMD、Mantle版「Battlefield 4」の性能向上は45%と公表

〜「Mullins」を搭載したタブレットを新しいコンセプトデザインで紹介

AMD上級副社長兼ビジネスユニット事業本部長のリサ・スー氏
会期:1月7日〜10日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention and World Trade Center(LVCC)、LVH、The Venetian

 米AMDは、International CESの会場で記者会見を開催し、2014年にリリースを計画している製品の概要などについて説明した。その主役は、1月14日に正式発表を予定しているKaveri(カヴェリ、開発コードネーム)で、それについては別記事で紹介した通りだ。

 このほかにも、2013年の9月に公開した新しい3Dグラフィックス用のAPI「Mantle」に対応した「Battlefield 4」が動く様子を披露し、Direct3D版に比べて現時点で45%性能向上が見込めることを初めて明らかにした。

 また、2014年の2-in-1デバイスおよびタブレット向けのプロセッサとなる「Beema」、「Mullins」を搭載したタブレットや超薄型デスクトップPCなどのユニークなデバイスを公開した。

APUの普及は進んでおり、HSAでさらにそれが進む

 最近のAMDは“Surround Computing”をスローガンの1つにしており、盛んにアピールしている。簡単に言ってしまえば、部屋中の至るところにディスプレイやスピーカーがあって、それぞれにビジュアルやサウンドなどを流し、よりリアルで違和感のない表示が溢れているような環境にすることだ。

 AMDは今回のCESで、Surround Computingをテーマにした“Surround House 2”と呼ばれるテントを用意し、コンピューティング技術を利用して、AR表示やマルチチャネルでARに連動した音を体感できるようにした。今回はこのSurround Houseに、IT業界の関係者に絶大な人気を誇る米国のSFドラマ「スタートレック」シリーズにジョーディ・ラ=フォージ役で出演している、俳優のレヴァー・バートン氏に体感してもらった模様を収めたビデオからスタートした(講演の後半で、バートン氏はステージに登場した)。

 AMD上級副社長兼ビジネスユニット事業本部長のリサ・スー氏は「AMDのビジョンは、APUがどんなデバイスにも入ることだ。PCだけでなく、タブレット、クラウドサーバー、メガデータセンター、ゲームコンソール……。今後はこうしたPC以外のデバイスの方が増えていくと考えている」と述べ、2015年にはAPUの需要が倍になり、かつPC以外のニーズが拡大していくと説明した。

 そして、スー氏は2013年11月に行なわれたAPU13のスライドを紹介し、「我々はHSAの取り組みを積極的に行なっている。大事なことは、AMDだけでなく業界各社と一緒に取り組んでいることだ。それらで出荷されている台数の3分の2をカバーする」と述べ、APUの普及に合わせてHSAの取り組みを推進し、AMD製品の価値を拡大していくとした。

 その後、同氏が説明を行なったKaveriの詳細については別記事に詳しいので、そちらを参照して頂きたい。

SFドラマ「スタートレック」シリーズに、ジョーディ・ラ=フォージ役で出演している俳優レヴァー・バートン氏
APUへの需要は増え続けている、特にPC以外の需要が急速に増えている
SoCを製造するメーカーの3分の2がHSA Foundationに所属している
Kaveriのパッケージ

Battlefield 4のMantle版は45%性能向上

 続いて登壇したAMD グラフィックス事業部 事業本部長 マット・スキナー氏が、同社のグラフィックス製品に関する説明を行なった。スキナー氏は「昨年(2013年)はAMDにとって非常に良い年だった、9月に新しいGPUをリリースし、プロ向けのFireProがMac Proに搭載されるなど普及が進んだ。また、APUを搭載したゲームコンソールが発売され、PCとゲームコンソールが1つのプラットフォームとして利用できるようになった」とビジネスの飛躍について述べた。

 続いて、「Radeon R9 M200」シリーズ、「Radeon R7 M200」シリーズ、「Radeon R5 M200」シリーズというノートブックPC向けのGPU 3製品を発表した。公表されたスペックは以下のようになっている(Radeon R7 M200シリーズのスペックはまだ発表されていない)。

【表】Radeon R9 M200シリーズ、Radeon R5 M200シリーズのスペック
Radeon R9 M200シリーズ Radeon R5 M200シリーズ
エンジンクロック 850MHz(ターボ時900MHz) 最大855MHz
アーキテクチャ GCN GCN
コンピュートユニット 20基 最大5基
メモリクロック 1.2GHz 1GHz
メモリ 256bit GDDR5 64bit DDR3
メモリ帯域 153.6GB/sec 16GB/sec

 Radeon R9 M200シリーズはDellの「ALIENWARE」、MSIなど複数のOEMメーカーのゲーミングノートPCに搭載される予定になっている。

Fire Proが採用されているApple Mac Proを紹介するAMD グラフィックス事業部 事業本部長 マット・スキナー氏
新しいRadeon R9 M200シリーズ、Radeon R7 M200シリーズ、Radeon R5 M200シリーズというノートPC向けのGPUを発表

 続いてスキナー氏は、2013年9月のイベントで発表した3Dグラフィックスゲーム用のAPIであるMantleに関する説明を行なった。

 MantleはDirect3DやOpenGLといった従来のAPIを置きかえるもので、従来のAPIに見られるようなオーバーヘッドを減らすことで、3Dグラフィックス表示の性能を向上させられる。

 スキナー氏は「今日はMantleに関する重要な発表を行なう。5つある主要なゲームエンジンのうち、すでに発表されていた『FROSTBITE3』エンジン以外に、『NITROUS』エンジン、『ASURA』エンジンもMantleのサポートを決定した」と明らかにした。

 ゲームエンジンとは、OSとゲームの間に入って、グラフィックス表示や入出力などを担当するミドルウェアに相当するもので、多くのゲームタイトルはなんらかのゲームエンジンを利用して作られている。つまり、5つある主要なゲームエンジンのうちの3つがMantleへの対応を明らかにしたことで、将来的にはMantle対応ゲームが増えていく可能性が高くなったことを意味する。

 また、スキナー氏は、Mantle版のBattlefield 4のライブデモの様子を公開。同タイトルの対応はすでに明らかにされていたが、動いているデモが公開されたのは初めてとなる。

 スキナー氏は「Mantle版のBattlefield 4は、Direct3D版に比べると45%ほど性能が向上する」と述べ、Mantleによる性能向上の具体的な数値を初めて公表した。この数字は、充分大きなインパクトがあるものと言える。45%の性能差と言えば、ユーザーがMantle版のゲームをプレイすることでGPUのグレードが1つ上がってしまうことを意味しており、AMDは競合他社との競争で優位に立てる可能性が出てくるからだ。

 ただ、このBattlefield 4のMantle版は、本来であれば2013年末にリリースされている予定だったものが、現時点でもまだ出ていないのが現状で、開発の難航が指摘されている。スキナー氏は「現在でも日々数字は上がり続けている」とも述べており、最適化を進めればさらに性能向上する可能性がある。その意味で、最終的なバージョンがどの程度の性能向上になるのかは要注目だろう。

5つの主要なゲームエンジンのうち3つまでがMantle対応予定であることを明らかにした
Mantle版Battlefield 4のデモ
Mantle版Battlefield 4のデモ。右上の表示でMantleを利用してレンダリングされていることが分かる

Mullinsの3D性能はAtom Z3770(Bay Trail-T)2.5倍になる

 スキナー氏の後には、再びスー氏が登壇し、2014年のプロセッサロードマップなどを説明した。その内容は、以前の記事で紹介したロードマップと同じで、2014年にはメインストリーム市場向けに「Kaveri」、薄型ノートPC向けに「Beema」、タブレットやハイブリッド向けに「Mullins」をリリースする。

 スー氏によればMullinsの性能は、IntelのAtom Z3770(Bay Trail-T)に比べて総合ベンチマークのPCMark 8で1.2倍、3Dベンチマークの3DMark11で2.5倍に達するという。さらにBeemaの性能は、Pentium N3510(Bay Trail-M)に比べてPCMark8で1.2倍、3DMark11では3.5倍になると説明した。スー氏によればBeemaおよびMullinsはすでにエンジニアリングサンプルをOEMメーカーに対して出荷し始めているとのことだった。

 さらに「Project Discovery」を披露。これは、タブレットのリファレンスプラットフォームの開発コードネームで、OEMメーカーに提案するための新しいフォームファクタの製品となっている。従来のAPUなどでも作られたことがあるが、今回公開したのはMullinsを搭載したタブレットで、専用のドッキングステーションに接続するとゲーミングタブレットとしても利用できる製品だ。下側にはスピーカー、左右にはゲームパッドなどが用意されており、通常は普通のタブレットとして利用し、ドッキングするとゲーミングタブレットとしても利用できる。

 なお、これはAMD自身が販売するのではなく、あくまでOEMメーカーなどに提案をするための製品とのことだ。また、このほかにも、スマートフォンと同じようなサイズに、PCの機能を全て詰め込んだ超薄型軽量デスクトップPCなども公開し、Mullinsを採用することで新しいデザインが可能になることを訴えた。

AMDのMullins、Beemaと、IntelのBay Trail-T、Bay Trail-Mとの比較データ。Mullinsは、Intel Atom Z3770(Bay Trail-T)に比較して総合ベンチマークのPCMark 8で1.2倍、3Dベンチマークの3DMark11では2.5倍。Beemaの性能は、Pentium N3510(Bay Trail-M)に比べてPCMark8で1.2倍、3DMark11では3.5倍
AMDの2014年のロードマップ
Project Discoveryでは、新しい形のタブレットを提案
Mullinsが搭載されていると見られるタブレットのデバイス表示。CPUは1.2GHzで、GPUは「Radeon R6」という未発表のブランド名が表示されていた
大型のスマートフォンサイズのデバイスだが、Mullinsを利用することでフル機能をもったPCになっている。スイッチとMicro HDMIと見られるディスプレイ出力ぐらいしか入出力ポートがないので、おそらくはシンクライアント的な使い方が想定されていると思われる

(笠原 一輝)