【COMPUTEX 2012】AMD記者会見編
~17W版Trinity搭載の液晶分離型ノートをデモ

公開されたTrinity搭載ノートPC

会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 AMDはComputex Taipeiの2日目に記者会見を行ない、“Brazos 2.0”の開発コードネームで呼ばれてきた「AMD EシリーズAPU」2製品を公開した。

 Brazos 2.0は昨年(2011年)の1月にAMDが発表した低価格/低消費電力向けのCPU/GPU統合型APU。低価格に小型ノートPCや省スペース型デスクトップPCを製造できるため、多数の採用例がある。Brazos 2.0では、主にチップセット側を改善することで、プラットフォーム全体での魅力を高めている。

 また、AMDは、先月の半ばに発表した同社製APUの第2世代製品となる「AMD AシリーズAPU」(Trinity)が、多数のノートPCベンダーに採用されたことをアピールした。新たに追加されたTDP 17WのSKUを利用したノートPCの試作品が公開された。

 また、5月の時点では発表されていなかったデスクトップPC版のTrinityも、OEMメーカーに向けて出荷を開始した。複数のOEMメーカーから搭載製品が登場する予定だ。

●複数のメーカーに採用された「Trinity」

 AMDは5月に第2世代のAMD AシリーズAPU“Trinity”のノートPC向けバージョンを投入している。Trinityは昨年の6月にAMDが投入した第1世代AMD AシリーズAPU(Llano)の後継となる製品だ。

 プロセッサコアはLlanoがStarベースのHusky32だったのに対し、TrinityはBulldozerベースのPiledriverに変更されて性能が向上した。プロセスルールは32nmのままだが、ノートPCのバッテリ駆動時間を左右する平均消費電力が下がった。

【お詫びと訂正】初出時、プロセスルール40nmと記載しておりましたが、32nmの誤りでした。お詫びして訂正いたします。

 AMD 上席副社長兼グローバルビジネス事業部本部 事業本部長 リサ・スー氏は「TrinityはAMDの歴史の中で、ノートPCのバッテリ駆動時間にフォーカスした初めての製品。消費電力で競合他社のプロセッサを下回っており、バッテリによる丸1日の稼働が可能になる」とTrinityの優位性を訴えた。

 5月に発表された時点では、Trinity搭載ノートPCを発売するメーカーは不明だったが、今回の発表で、ASUSTeK、Acer、HP、Lenovo、Samsung、東芝がベンダーとして紹介され、搭載PCも公開された。

Trinityを手に持ちアピールするAMD 上席副社長兼グローバルビジネス事業部本部 事業本部長 リサ・スー氏記者会見の最後にTrinity搭載ノートPCが紹介されたAcerのTrinity搭載ノート
ASUSのTrinity搭載ノートHPのTrinity搭載ノートSamsungのTrinity搭載ノート
MSIのTrinity搭載ノートLenovoのTrinity搭載ノート東芝のTrinity搭載ノート

●17W SKUの追加でUltrabook対抗薄型ノートPCが可能に

 スー氏は「Trinityでは17WのSKUを用意した。OEMメーカーはこれを採用することにより、薄型ノートPCを製造することができる」と述べた。つまりIntelのUltrabookに対抗市場に積極的に打って出ると言う。

 スー氏は「Windows 8の登場により、市場は大きく変わりつつある。AMDにとっても重要な製品で、対応を積極的に進めていきたい」と語り、Microsoft OEM部門担当副社長 スティーブ・グッゲンハイマー氏をゲストスピーカーとして紹介。グッゲンハイマー氏によれば、Windows 8においては、CPUだけでなくGPUの性能も重要視されるため、APUのようなソリューションが重要であるとした。

 続いてスー氏は、17WのTrinityを利用した具体的な製品例として、ODMメーカーのCOMPALが設計した、液晶部分が分離するクラムシェルノートPCを紹介した。11.6型液晶のスレート型PCとキーボードドックが分離する製品で、クラムシェルとしても、タブレットとしても利用することができるという。

 また、スー氏の後に登場したAMD CEO ロリー・リード氏は「現在デジタルの世界は大きな転換点を迎えている。コンシューマライゼーションやクラウドによりユーザーのニーズは大きく変わりつつある。AMDはそうした市場に17WのAPUを武器に取り組んでいきたい」と述べ、フォームファクターの変革に貢献するという意気込みを示した。

Microsoft OEM部門担当副社長 スティーブ・グッゲンハイマー氏17W(デュアルコア)、25W(クアッドコア)と、TDPが低いTrinityにより、高性能で薄型のノートPCを安価に製造することができるタブレットとクラムシェルの良い所取りをしたハイブリッド製品が今後はトレンドになる
COMPALが試作したタブレットとクラムシェルの変形型ノートPCを手にするタブレット部分とキーボード部分に分離して、スレートPCとして利用できるAMD CEO ロリー・リード氏

●チップセットを改良し、クロック周波数を上げたBrazos 2.0を投入

 また、スー氏は“Brazos 2.0”の開発コードネームで開発してきた、AMD Eシリーズ APUの改良版2製品を発表した。この製品には、「E2-1800」と「E1-1200」というモデルナンバーが与えられた。

 Brazosは、プロセッサのZacate(18W)/Ontario(9W)の2種類のプロセッサに、Hudsonという名前のチップセットを組み合わせたプラットフォームだ。チップセットのHudsonには、Hudson M1/Hudson M2/Hudson M3というバリエーションがあり、M2はアナログRGB用のDACが追加され、M3はUSB 3.0に対応した。

 Brazosに組み合わせされていたのはHudson M1だったが、Brazos 2.0にはHudson M3の機能制限版となるHudson 3Lが組み合わされた。Hudson 3Lには、低消費電力を維持しつつUSB 3.0が追加されている。

 プロセッサには改良の手が加えられていないが、より高い周波数で動くSKU(E2-1800)が追加され、性能が向上した。

 スー氏は「機能が向上しても、競合となるPentiumやCeleronに比べ、より長い時間バッテリ駆動できる」と述べ、Brazos 2.0のメリットをアピールした。

Brazos 2.0がAMD Eシリーズ APUとして発表されたBrazos 2.0と競合他社とのバッテリ駆動時間の比較

●デスクトップPC版のTrinityもひっそりと出荷開始

 また、5月の時点では発表されていなかったTrinityのデスクトップPC版が、OEMメーカーに出荷されたことを明らかにした。

 AMD グローバル製品マーケティング部長 ジョン・テイラー氏は筆者の質問に対して「デスクトップPC版のTrinityはOEMメーカー向けに先行して出荷される。すでに出荷は開始されており、OEMメーカーは本日から製品発表できる」と述べた。また、ASUS、Acer、Dell、HPの4社から液晶一体型を含むTrinity搭載デスクトップPCが登場する予定であることを明らかにした。

 ただし、テイラー氏によれば、現時点では具体的にどのようなSKUがあるのかは公開できないという。「本日の発表会ではデスクトップPC版のA10を利用してデモしたが、どのSKUを採用するかはOEMメーカー次第だ。OEMメーカーがスペックを発表する中で明らかになるだろう」と述べた。

 なお、テイラー氏によればチャネル市場や自作PC向けのボックス版に関しては、「今年のどこかのタイミング(Later this year)で発表される」とだけ述べた。つまりリテール版は存在するが、出荷時期は未定という状態だ。

(2012年 6月 7日)

[Reported by 笠原 一輝]