【CES 2012レポート】Sony編
~未発表のUltrabookやVAIOコンセプトモデルなどを展示

Ultrabook準拠のVAIO未発表モデルのプロトタイプ。このプロトタイプでは13.3型液晶が搭載され、厚さなどUltrabookの仕様を満たしている

会期:1月10日~13日(現地時間)

会場:米国ネバダ州ラスベガス コンベンションセンター/ベネチアンホテル



 2012 International CESの開幕を前日に控えた1月9日(現地時間)、Sonyは2012 International CES会場内のSonyブースにおいて発表会を開催し、映像やオーディオ関連の新製品や新サービスに加え、LTE対応の最新スマートフォン、VAIOの未発表モデルやコンセプトモデルなどを披露した。

●未発表のVAIOブランドノートPCのプロトタイプを展示

 VAIOの未発表モデルとして、Ultrabook準拠のモバイルノートが展示されていた。詳しい仕様は公表されていないものの、2012年に発売が予定されている製品のプロトタイプとなる。

 このプロトタイプの特徴は、Sonyの考えるモバイルノートのコンセプトが活かされているという点にある。例えば、外出先での使い勝手を損なうことのないように、アナログRGB出力やUSBコネクタ、LANコネクタなどは全てフルサイズのものを搭載している。キーボードはVAIOシリーズでおなじみのアイソレーションタイプだが、形状はVAIO Sシリーズとほぼ同等であった。キーボード手前のタッチパッドも大きな面積が確保されている。

 また、このプロトタイプには13.3型の液晶パネルが搭載されていたが、VAIOシリーズで同じ13.3型液晶を搭載する「VAIO S」シリーズや、13.1型のフラッグシップモデル「VAIO Z」シリーズ同様に、液晶を閉じた状態でフルフラットになるデザインも、ほぼそのまま採用されている。Ultrabook準拠のノートPCではあるが、単なる薄型のモバイルノートではなく、Sonyが考えるモバイルノートの方向性をしっかり受け継いで作られているということが、こういった部分を見ることでも伝わってくる。

13.3型プロトタイプVAIOの液晶パネルを閉じた状態。前方から背面まで高さがフラット。側面にはフルサイズのコネクタが並ぶ左側面にはUSB 3.0コネクタも見えるキーボードはおなじみのアイソレーションタイプ。タッチパッドの面積も広い

 また、15型液晶を搭載するVAIO新モデルのプロトタイプも展示されていた。キーボード面から底面、天板部分にかけて同じ配色で統一されるとともに、液晶面を閉じた状態ではシートを3つ折りに折りたたんだようなデザインを採用している。2010年に発売された「VAIO P」シリーズに近いコンセプトのデザインで、見た目はVAIO Pを大きく引きのばしたような印象だ。こちらは、15型液晶を搭載しているという点からも、ノートPCのメインストリームをターゲットとしている。メインストリームのノートPCに対して、新しいデザインを取り入れた製品として投入することで、新たな顧客の開拓につなげたいとしている。

こちらは、15型液晶搭載のVAIO新モデルのプロトタイプ。メインストリームをターゲットとして開発中のモデルだキーボード面から底面、背面が同じ色で統一され、VAIO Pのようなシートを折りたたんだような独特のデザインが採用されている
こちらもキーボードはアイソレーションタイプ。テンキーも搭載されているホワイトモデルとシルバーモデルが展示されていた

 これら展示されていたプロトタイプは、もちろんまだ最終仕様ではなく、搭載CPUやストレージ、本体デザインなども、これらをベースにさらに煮詰めていくことになるそうだ。発売時期は、双方とも2012年中を予定している。

●VAIOブランドのデザインコンセプトモデル2機種を展示

 今回の発表会では、VAIOブランドのデザインコンセプトモデルが2機種紹介されたが、そちらも会場内に展示されていた。

 1つは、タッチパネル液晶を搭載しピュアタブレットスタイルで利用するとともに、液晶面をスライドさせて引き起こすことでフルサイズキーボードが現れ、ノートPCに近い状態でも利用できる、ハイブリッドスタイルのコンセプトモデル「VAIO Concept of the Future Hybrid」。通常はピュアタブレットスタイルで、指で操作したり、本体前面に装着されているペンを利用した操作を行ないつつ、文字を入力したい時には液晶面を後方に引きあげることで、フルサイズのキーボードが現れる、という構造となっている。キーボード部の側面部分には溝が掘られており、その溝に沿って液晶面を後方に引きあげることになる。そして、ピュアタブレットスタイルでも非常に薄いボディが実現されているという点も大きな特徴と言える。

VAIOブランドのデザインコンセプトモデル「VAIO Concept of the Future Hybrid」タッチパネル液晶を搭載し、指や付属のペンでの操作が基本となるキーボード面を引き起こすとフルサイズキーボードが現れ、ノートPC的な利用が可能となる
液晶面は、キーボード部側面の溝に沿って後方に引き起こす構造となっているキーボードはもちろんアイソレーションタイプ。Windowsキーも見えるキーボード手前にタッチペンが収納されている

 もう1つのデザインコンセプトモデルは、「VAIO Concept of the Future Slate」と呼ばれるものだ。その名称からもわかるように、いわゆるスレートPCに属する製品のコンセプトモデルとなる。大胆に曲面を取り入れたデザインが特徴的で、同様のデザインのワイヤレスキーボードがセットとなっている。また、スレート本体側は、通常は裏面がフラットな、一般的なスレートPCに近い形状になっているが、本体を置いてコンテンツを見たり、キーボードを利用して入力を行ないたいといった場合には、本体背面の底面部がスタンド状に大きくせり出すという点が大きな特徴となる。このスタンド部は、こういった形状の背面を取り付けるのではなく、背面部が変形しつつ、物理的に飛び出してくるといったものを想定しているそうだ。

ピュアタブレットスタイルのデザインコンセプトモデルは、「VAIO Concept of the Future Slate」。ワイヤレスキーボードは物理キーがなく、タッチセンサー式と思われる本体は曲面が多用されており、柔らかい印象を受ける。背面はこのようにフラットだ本体底面部からスタンドがせり出し、立てて置くことが可能に。実際に物理的にせり出す構造を想定しているそうだ

 これら2つのコンセプトモデルは、スペックはもちろん、搭載OSの種類などについても一切言及されていない。しかし、これらに搭載または付属するキーボードには、しっかりとWindowsキーが用意されていた。そのため、Androidタブレットではなく、いわゆるスレートPCに属するものであると考えられる。しかも、どちらかというとキーボードやマウス、マウスパッドなどを利用した操作を、あまり想定していないような仕様となっている。そういった点から考えると、おそらくWindows 8を搭載する製品のコンセプトモデルと考えるのが自然だろう。これらコンセプトモデルが、ほぼそのままの仕様で製品として登場するとは考えにくいが、Windows 8の登場を前後して、近い仕様のVAIO新モデルが将来登場する可能性はかなり高いと思われる。そういった意味でも、興味深い展示と言える。

●LTE対応のAndroidスマートフォン「Xperia ion」を発表

 今回の発表会では、「Sony Ericsson」の社名が「Sony Mobile Communications」に変更されることが発表された。そしてその発表に引き続き、Androidスマートフォン「Xperia」シリーズの新モデル2機種が発表された。

 1つは、北米市場向けの製品で、LTE対応の「Xperia ion」。対応キャリアはAT&Tとなる。表示解像度1,280×720ドットの4.6型HD液晶ディスプレイ、1.5GHzのデュアルコアCPUを搭載するハイエンドモデルだ。1,200万画素裏面照射CMOS「Exmor R for mobile」採用の裏面カメラでは、1080pの動画が撮影でき、液晶面のインカメラでも720pのHD動画が撮影可能。また、「Fast Capture」と呼ばれる高速撮影機能が搭載されており、スタンバイモードから1.5秒で1枚目の撮影が可能としている。もちろんPlayStation Certifiedに準拠しており、Sony Entertainment Network提供のゲームも楽しめる。OSはAndroid 2.3を採用。発売時期は北米で2012年第2四半期を予定している。

Sony Ericssonの社名がSony Mobile Communicationsに変更されることを発表北米で販売予定の、LTE対応Androidスマートフォン「Xperia ion」。対応キャリアはAT&T。1,280×720ドット表示対応の4.6型液晶を搭載。CPUは1.5GHz動作のデュアルコアCPUが採用される背面のメインカメラは1,200万画素の裏面照射CMOS「Exmor R for mobile」を採用。スタンバイから1.5秒で撮影できる「Fast Capture」機能も搭載
グローバル仕様のAndroidスマートフォン「Xperia S」。Sonyロゴが表記されて販売される初のXperiaシリーズとなる

 もう1つは、LTE対応ではないものの、グローバルモデルとして展開される「Xperia S」だ。近距離無線通信規格「NFC」に対応しており、日本でのおサイフケータイに近い決済サービスが利用可能。対応する通信方式の違いと、NFC搭載の有無以外は、Xperia ionの仕様に近く、液晶ディスプレイのサイズや表示解像度、搭載CPU、搭載カメラの画素数などほぼ同じだ。本体カラーはブラックとホワイトの2色を用意。発売時期は2012年第1四半期が予定されている。Xperia Sに相当するAndroidスマートフォンの日本向けモデルは「Xperia NX」となり、NFCは搭載されない。

 これら2機種のAndroidスマートフォンは、北米市場ではSony Ericssonブランドではなく、Sonyブランドとして発売されることが決定しており、本体にもSonyロゴが表記されて販売される。そして、先に発売されるXperia Sが、Sonyブランドとして初のAndroidスマートフォンとなる。

●MIB3主演のウィル・スミス氏も登壇!

 発表会では、新製品の説明よりも、「Play. Watch. Listen. Share.」というキーワードとともに、ネットワークサービスを中心とした、さまざまなSony製品に対応する横断的なコンテンツサービスの説明に多数の時間が割かれた。

 登壇したソニー株式会社代表執行役副社長の平井一夫氏は、「Sonyが持つ製品やコンテンツ、ネットワークサービスなどのリソースを利用し、豊富なエンターテインメント体験を提供できるのがSonyの大きな強み」と語り、既に提供されているものを中心としたコンテンツサービスを説明。

 具体的には、Sony Entertainment Networkが提供しているHD動画配信サービス「Video Unlimited」や音楽配信サービス「Music Unlimited」や、デジタルカメラ「Cyber-shot」やカムコーダー「HandyCam」、携帯ゲーム機「PlayStation Vita」などで撮影した写真をクラウドで管理し、スマートフォンのXperiaやネットワーク対応テレビBRAVIA、PlayStation 3などとシームレスに共有できる「Play Memories Online」、電子書籍サービスの「Reader」などが紹介された。

 また、日本で12月17日に発売された携帯ゲーム機「PlayStation Vita」が、北米および欧州で2月22日に発売されることも発表された。

 発表会の後半では、ソニー株式会社会長兼社長のハワード・ストリンガー氏により、Sonyが持つ映像コンテンツの象徴であるSony Pictures Entertainmentの最新映画「Men In Black 3(MIB3)」に主演するウィル・スミス氏や、Sony Music Entertainmentから楽曲が発売されている、米国の歌手ケリー・クラークソンさんが招かれ、MIB3の紹介や、ケリー・クラークソンさんの生演奏で発表会は締めくくられた。

登壇した平井一夫氏は、多くのSony製品で横断的に利用できるさまざまなコンテンツサービスを紹介キーワードは「Play. Watch. Listen. Share.」HD動画配信サービス「Video Unlimited」、BRAVIAやSony Tablet、PlayStation 3などさまざまな機器で楽しめる
音楽配信サービス「Music Unlimited」。すでに1,200万曲以上の楽曲が配信されているMusic Unlimitedの提供国が増えたことが紹介されたが、日本でサービスが展開されていないのは残念クラウドで写真の共有が行なえる「PlayMemories Online」
PlayStation Vitaの北米と欧州での発売日が2月22日と発表されたハワード・ストリンガー氏に招かれ登壇した、ウィル・スミス氏。しっかりMIB3をアピール歌手のケリー・クラークソンさんも招かれ、生歌唱を披露

(2012年 1月 11日)

[Reported by 平澤 寿康]