【CeBIT 2011レポート】【Intel編】
第2世代Coreシリーズのアップデートをまとめてアナウンス
~富士通のOak Trailタブレットも披露

第2世代Coreシリーズのアップデートを紹介した、Intelデスクトッププロセッサ&プラットフォームマーケティング・ディレクターのジェフ・オースチン氏

会期:3月1日~3月5日(現地時間)

会場:ドイツ連邦共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ



●第2世代Coreプロセッサに関するアップデート

 IntelはCeBIT期間中に開催したプレスカンファレンスにおいて、まず、1月にアナウンスしたIntel 6のリコール問題について、情報を整理して紹介。

 今回のCeBITでマザーボードベンダー各社が展示をしているように、B3ステッピングによって問題を解決を図るという点。そしてB3ステッピングは2週間前に出荷を開始し、すでに数百万ユニットを世界中の顧客に出荷済み。また、不具合を抱えるチップであるB2ステッピングについても、既報のとおり、問題のSATA 3Gbpsポートを使わないPCシステム向けにのみ出荷している、といった既報の内容を紹介。すべての状態が回復するのは3月後半になるという見通しを述べた。

 次いで、第2世代Coreプロセッサシリーズに関するアップデートを紹介した。

 SymantecとVASCOとの協業によって提供されることになる「Intel Identity Protection Technology(Intel IPT)」は、VeriSignが提供するIdentity Protectionで提供されるワンタイムパスワードの機能を、チップセットに組み込むというもの。通常、ワンタイムパスワードの生成には、トークンIDを記録したハードウェアキーが必要となるが、これをPCに組み込むことで、PC単体で安全なワンタイムパスワードを生成できる、というのがポイントになる。デモではSteamへのログインを例としたが、VeriSignのIdentity Protectionに対応したWebサイトであれば、Steamのようなコンシューマ用途に限らず利用できる。この機能の提供は2011年後半が予定されている。

 「LucidLogix Virtu GPU Virtualization」は、とくにコンシューマ用途に意味がある機能だ。LucidLogixは異なるGPUでのマルチGPU動作を実現するLucid Hydraチップを提供することで、特に自作ユーザーに認知されているメーカーである。このLucidLogixでは、ソフトウェアベースでCPU内蔵GPUと外付けビデオカードを動的に切り替えて動作させるソリューションになる。いわば、NVIDIAのOptimus Technologyに近い機能をすべての第2世代Coreプロセッサ環境で利用可能になる、という考えに近い。

 こうした機能が提供される理由は、Intel Quick Sync Videoの存在が大きい。Quick Sync Videoは、CPU内蔵GPUが有効になっている状態でないと動作しない。ビデオカードを取り付けてCPU内蔵GPUが無効化されると、Quick Sync Videoが使えないわけだ。現状、これはトレードオフのような状態になってしまっており、3Dパフォーマンスを求めるユーザーはQuick Sync Videoを諦め、Quick Sync Videoを使いたいユーザーは外付けビデオカードでしか発揮できないレベルの3Dパフォーマンスを諦めざるを得ない。

 LucidLogix Virtu GPU Virtualizatonを用いれば、OS上で動的にGPUの切り替えが可能になる。つまり、ビデオカードを取り付けた環境において、Quick Sync Videoを使いたいときにはCPU内蔵GPUで動作させ、3Dパフォーマンスを求めるときにはビデオカードで動作させることができる。

VeriSignのVIPで用いるワンタイムパスワードを生成するためのトークンIDをチップセット側で記録できるようにすることで、これまで必要だったトークンIDを記録するハードウェアを不要にする「Intel IPT」を今年後半に提供するIntel IPTを、Steamのログインに使用したデモを実施。ログイン画面の下部に、Intel IPTによる認証が行なわれたことが表示されているビデオカードを取り付けた環境においてもCPU内蔵GPUを用いるQuick Sync Videoを利用するために、LucidLogixのVirtu GPU Virtualizationを提供。GPUを切り替えて利用することができるようになる

 このほか、Intelやアメリカとカナダで提供を開始したHD動画のストリーミング配信サービスであるIntel InsiderもCPU内蔵GPUであることを判定して利用の可否を決めるため、こうしたソリューションを用いていない状態で外付けビデオカード動作させていると利用できない。LucidLogix Virtu GPU Virtualizatonによって、これも回避される。

 LucidLogixのWebサイトでも、すでにこのソリューションの案内が始まっており、近々フリートライアル版の提供が開始される模様だ。

 このほか、先日のGIGABYTEブースレポートでもお伝えした、オールインワン(AIO)向けのフォームファクタについても言及があった。オースチン氏は、デスクトップは依然として売り上げを伸ばしているが、大きなタワー型からSFFやAIOといった小型製品へのシフトが進んでおり、2011年以降は特にAIOが急激な伸びを示す見通しを述べた。

 このAIOという製品ジャンルに対してIntelでは、第2世代Coreプロセッサのライフスタイル製品(末尾SやTといった製品)、そして新たに薄型Mini-ITXの規格化を行なったことを表明。

 この薄型Mini-ITXは、AIOなどで使いやすいようI/Oリアパネルの高さを抑えるほか、マザーボード上のレイアウトも規定。65W以下のCPUに最適化したフォームファクタとなる。これにより、最新のプラットフォームを迅速に製品に反映できる、としている。このフォームファクタを採用した各社製品の展示も行なわれた。

2011年のデスクトップ市場は、特にAIOが大幅な伸びを示すとの見通しを紹介AIOに最適なMini-ITXフォームファクタを提供フォームファクタのポイントになるのはI/Oリアパネルや基板上のレイアウトになる
ECSの「G11」は21.5型のAIO製品ECS G11に使われているマザーボードこちらはMitacの21.5型AIO
GIGABYTEの18.5型AIOGIGABYTE製品に使われている薄型Mini-ITXマザー

●富士通のOak Trail搭載タブレットを公開

 このほかにプレスカンファレンスで取り上げられた話題としては、タブレット製品向けプラットフォームについても簡単に紹介があった。Oak Trailについては、現在準備を進めている段階であるとし、CeBITにおいても正式な発表とはならなかった。

 ただし、Intelのカンファレンス内でOak Trailプラットフォームを採用する富士通の10.1型タブレットが紹介されたほか、会場においてはECSがOak TrailのAtom Z670を搭載する10.1型および7型のタブレット製品を展示(ただし7型はモックアップ)。富士通製品は4月、ECSは10.1型が4月、7型が6月の出荷を予定しているという。

富士通の10.1型Oak TrailベースタブレットPC。Windows 7が動作するもので、4月に発表予定各種インタフェース。HDMI出力やスタンダードサイズのSDカードスロットなどが特徴。画面ローテーションなどのスイッチも見て取れる
各種インタフェース。HDMI出力やスタンダードサイズのSDカードスロットなどが特徴。画面ローテーションなどのスイッチも見て取れる
ECSがブースで展示した10.1型Oak TrailタブレットPC。Atom Z670を搭載し、Windows 7 Home Premiumが動作可能な状態で展示された。発表は4月を予定しているECS製品のCPUはAtom Z670とされており、1.5GHzで動作していることを確認できるこちらはモックアップだが、同じくECSが展示した7型のOak TrailタブレットPC。OSは未定で、6月の発表が計画されている

 一方、CeBIT会期中に発表されたPineviewコアのAtom N570についても言及があり、搭載製品の例が示された。

 また、ネットブックに向けた新しいテクノロジとして、「Intel Wireless Music」をアナウンス。これはIntel Wireless Displayをベースに、オーディオだけをWi-Fiで転送するもの。今後、Intel Wireless Musicをサポートするネットブックが提供されるほか、この技術はWireless DisplayをサポートするCentrino製品でも利用可能となる。

 もちろんアンプ・スピーカー側にはアダプタ(レシーバ)が必要になるが、これは30ドル程度で提供されるという。カンファレンスにおいては、ロジクール製のアダプタを介してサウンドをワイヤレス転送するデモが実施された。

Atom N570を採用した薄型ノートのサンプル。厚さは14mmとしている
同じくAtom N570を搭載するノートPCで、GoogleのChrome OSをインストールしたもの。Windows、Chrome OS、MeeGoといったOSの選択肢もAtomプラットフォームの利点としてアピールしたWi-Diのアーキテクチャをベースに、2.1ch音声をワイヤレス転送するIntel Wireless Musicを発表。ロジクール製アダプタを用いてデモが行なわれた

(2011年 3月 4日)

[Reported by 多和田 新也]