【AMD TFE 2010レポート】AMD、台湾で「Llano」のウェハやデモを初披露

AMD TFE 2010会場

10月19日(現地時間)開催



 米AMDは19日(台湾時間)、台湾台北市のNTUH International Convention Centerにおいて、「AMD Technical Forum and Exhibition (TFE) 2010」を開催した。

 TFEは主にマザーボードやビデオカードなどを製造するAMDのパートナーを対象にした技術カンファレンスで、AMDおよびスポンサーパートナー各社が、自社の新製品や新技術などについて解説する。これまで台湾のローカルイベントとして5回開催されてきたが、今回は規模が約2倍になり、日本を含むアジアパシフィック地域のメディアも参加可能になった。また、地元の大学生らの発表/参加もある。

 日程は19日の1日だけだが、午前9時から夕方18時くらいまで、基調講演や技術トラックが多数設けられており、密度はかなり濃い。本レポートでは、午前中に行なわれたAMDの責任者による次期プロセッサの基調講演の内容をまとめる。

●Llanoのウェハとデモが公開

 既報の通り、AMDの次期プロセッサはCPUとGPUを1つのダイに統合しており、同社では「Fusion Accelerated Processing Unit (APU)」と呼んでいる。基調講演の内容は、ほとんどがこのAPUに関してのものだった。

 実際の製品発表は2011年の予定で、現時点では細かい製品の仕様やラインナップなどについての情報は公開されておらず、また、COMPUTEXなどでの説明と重複する部分もあったものの、TFE 2010ではメインストリーム向けAPUである「Llano」(開発コードネーム)のデモおよびウェハが初めて公開された。さらに、次期GPUである「Northern Island」について、今週末にも製品発表を行なう予定であることが明らかにされた。

 APUについては、クライアント部門副社長兼ジェネラルマネージャのChris Cloran氏が説明を行なった。最初のFusion APUのモバイル向けアーキテクチャは、「Bobcat」のコードネームで呼ばれている。その中で、ローエンド向けに位置するプラットフォームが「Brazos」。そして、そのプラットフォームには、メインストリーム向けとなる、18Wクラスの「Zacate」プロセッサと、ネットブック向けで9Wクラスの「Ontario」というプロセッサが用意される。

 Cloran氏は、一瞬だけZacateの実際のチップを披露したのに続き、9月のIDFのタイミングで行なわれたイベントと同じように、その実動デモも行なった。このデモでは、Core i5-520Mが比較対象で、同プロセッサがN体系のベンチマークで性能が8.8GFLOPS、消費電力が38.5Wとなったのに対し、Zacateでは、21.8GFLOPSと約2.5倍の性能でありながら、消費電力は半分の19Wに留まることが示された。

 また、Cloran氏は、その最中のタスクマネージャーの様子も披露。Core i5ではCPU負荷が4つの論理コアとも100%に張り付いているのに対し、Zacateでは演算をGPU部分に行なわせることで、2つのCPUコアの負荷は6%程度だった。

Chris Cloran氏ローエンド系のBrazosプラットフォームにはZacateプロセッサとOntarioプロセッサが投入Zacateプロセッサのチップ
Core i5-520M(左)とZacate(右)のN体系ベンチマークの結果そのときの消費電力とCPU負荷

 続いてCloran氏は、上位APU製品となるクアッドコアの「Llano」プロセッサについても言及するとともに、そのウェハとデモを初めて披露した。ここでは、先ほどのN体系のベンチマークが約36GFLOPSの数値を示す中、円周率3,200万桁の計算を行なわせ、CPU負荷が100%になるも、GPU部分の機能を使って、BDの映像がコマ落ちなしで再生できる様子が紹介された。

 サーバー向けについては、GPU機能を持たない「Bulldozer」アーキテクチャとして、12コア/16コアで2ソケット/4ソケットの「Interlagos」プロセッサと、6コア/8コアで1ソケット/2ソケットの「Valencia」プロセッサが、やはり2011年に予定されている。

 Bulldozerアーキテクチャは、1つのダイの中に2つの整数コアとL1キャッシュを持つのが特徴。これにより、12%のトランジスタ増で、現行の「Magny-Cours」プロセッサに対して、最大5割の性能向上が得られるという。また、現行製品とのソケット互換性を持つ。

Llanoのウェハサーバー向けBulldozerのロードマップ

【動画】Llanoの実動デモ。左上が円周率の計算、左下がCPU負荷、右下がN体系のベンチマーク、右上がBDの動画

●次期GPUが今週末にも発表
Matt Skynner氏

 単体GPUについては、グラフィックス部門副社長兼ジェネラルマネージャのMatt Skynner氏が解説した。

 Skynner氏はまず、「Northern Islands」のコードネームで呼ばれる、現行のRadeon HD 5000シリーズの後継製品が今週末にも正式発表されることを明らかにした。

 また、プレゼンテーションの後半では、そのテクノロジーデモも披露した。従来のGPUのテクノロジーデモは、独自に開発されたものが使われていたが、今回は一般に公開されている「Trinity」というゲームエンジンを用いて制作されている。

 このデモでは2,000個もの光源がきらめく中、DirectX 11のテッセレーションを駆使した複雑なモデリングが行なわれている。同時に、DirectComputeを使い、破壊される橋の物理計算もGPUで行なわれている。このデモは、完成版が11月中にダウンロードできるようになる予定。

【動画】次期RadeonとなるNorthern Islandsのデモ

 Skynner氏は、Radeon HD 5000シリーズのこれまでの成果についても説明した。同社の単体GPUシェアは、2008年頃まではNVIDIAに水をあけられていたが、2009年に業界初のDirectX 11対応GPUであるRadeon HD 5000シリーズを投入したことで人気を得て、2010年第2四半期には51%に達した。また、同シリーズの累計出荷台数は2,500万を超え、DirectX 11対応GPUのシェアは90%に及ぶという。

 また、同GPUで実現した3~6画面のマルチディスプレイ技術「Eyefinity」も業界から支持され、各社からこれまで45本の検証済みのゲームタイトルがリリースされた。

 Skynner氏は、引き続き性能の向上を目指すとともに、最新技術をいち早く市場に投入していくと述べて、講演を締めくくった。

AMDの単体GPUのシェア。直近は5割を超えたゲームを中心にEyefinityは支持を得ているDirectX 11 GPUという括りではシェアは9割に達しているという

(2010年 10月 20日)

[Reported by 若杉 紀彦]