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Samsung未発表のBGA型SSDやOEM向け超高速SSDなどが多数展示

~「2016 Samsung SSD Forum Japan」レポート

2016 Samsung SSD Forum,Japanの講演会場の外は、製品展示スペースになっていた

 日本サムスンが開催した「2016 Samsung SSD Forum Japan」は、その名の通り、SamsungのSSDに関するフォーラムで、経産省による基調講演や、Samsung製SSDの導入事例など紹介が行なわれた。講演については、別記事を見ていただきたいが、講演会場の外には、製品展示スペースが設けられており、数多くの製品が展示されていた。その中には、まだ未発表のSSD製品がいくつかあったので、こちらでまとめて紹介したい。

NVMe対応の第2世代製品「SM961」、「PM961」が展示される

 最近のSSD業界のトレンドが、NVMe(Non-Volatile Memory Express)対応である。NVMeは、AHCIに代わるストレージデバイスのプロトロルであり、SSDの性能をフルに発揮できるように策定されたものだ。もちろん、インターフェイスの物理層の高速化も重要であり、高速SSDでは、SATA 6Gbpsの速度では足りないため、PCI ExpressをインターフェイスとするM.2やSATA Expressへの移行が始まっている。

 Samsungは、2015年4月に業界に先駆けて、PCI ExpressとNVMeに対応したM.2 SSD「SM951」の量産を開始している。現在、数社からNVMe対応のM.2 SSDを搭載した高性能モバイルノートPCが登場しているが、そのほとんどが、Samsungの「SM951」か「PM951」を搭載している。

 今回のフォーラムの展示会場では、SM951の後継製品である「SM961」と、PM951の後継製品である「PM961」が展示されていた。どちらもまだ正式発表されていない製品である。

 SM961は、2bit MLCのSamsung V-NAND(以下、V-NAND)と新コントローラ「Polaris」を搭載したハイエンドモデルであり、容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルが用意される。シーケンシャルリードは最大3,200MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,800MB/sec。ランダムアクセスも非常に高速で、4Kランダムリードが最大45万IOPS、4Kランダムライトが最大40万IOPSに達する。ちなみに、現行のSM951は、シーケンシャルリード最大2,260MB/sec、シーケンシャルライト最大1,600MB/sec、4Kランダムリードが最大30万IOPSであり、SM961ではリードが大幅に高速化されている。

 一方のPM961は、3bit MLCのV-NANDと新コントローラ「Polaris」を搭載したメインストリーム向けモデルであり、容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルが用意される。シーケンシャルリードは最大3,000MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,150MB/secと高速だ。ランダムアクセスも高速で、4Kランダムリードが最大36万IOPS、4Kランダムライトが最大28万IOPSである。2016年後半には、これらを搭載したノートPCなどが登場しそうだ。

展示は「PC Client & Consumer」と「Enterprise & Datacenter」に大別されていた。こちらは、PC Client & Consumer関連の展示スペースである
PC Client & Comsumerゾーンに展示されていたNVMe対応の超高速SSD
NVMe対応M.2 SSD「SM961」。2bit MLCのV-NANDと新コントローラ「Polaris」を搭載し、容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルが用意される
NVMe対応M.2 SSD「PM961」。3bit MLCのV-NANDと新コントローラ「Polaris」を搭載したメインストリーム向け。容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルで展開
NVMe対応M.2 SSD「950 PRO」。2bit MLCのV-NANDを搭載し、容量は256GB/512GBを用意

SATA対応SSDの新製品「PM871a」、「CM871a」が登場

 SATA対応SSDについても、未発表の新製品がいくつか展示されていた。「PM871a」は、SATA対応2.5インチフォームファクタのSSDで、3bit MLCのV-NANDと「MAIA」コントローラを搭載。容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルがあり、シーケンシャルリードは最大530MB/sec、シーケンシャルライトは最大515MB/secだが、一部の領域をSLCモードで利用し、キャッシュとして使うことで書き込みを高速化するターボライトを有効にすると最大526MB/secに向上する。4Kランダムリードは最大97,000IOPS、4Kランダムライトは最大88,000IOPSと高速だ。

 また、「CM871a」は、V-NANDではなく、従来のプレーナ型3bit MLC NANDと「MAIA」コントローラを採用したエントリーモデルである。容量は128GB/256GBの2モデルがあり、シーケンシャルリードは最大535MB/sec、シーケンシャルライトは最大215MB/secだが、ターボライトを有効にすると最大515MB/secに向上する。4Kランダムリードは最大97,000IOPS、4Kランダムライトは最大59,000IOPSだが、ターボライトを有効にすると最大88,000IOPSに向上する。こちらはかなり低価格でOEM向けに出荷されるとのことで、エントリークラスのノートPCでも、SSD搭載機が増えてくることになりそうだ。

 そのほか、既に発売されているリテール向け製品の「850 PRO」と「850 EVO」も展示されていた。850 EVOについては、現在販売されている製品は2TBまでだが、2016年後半には4TBモデルを投入する予定とのことだ。

PC Client & Comsumerゾーンに展示されていたSATA対応SSD
SATA対応2.5インチSSD「PM871a」。3bit MLCのV-NANDと「MAIA」コントローラを搭載。容量は128GB/256GB/512GB/1TBの4モデルを用意。写真では2bit MLCとなっているが誤り
SATA対応2.5インチSSD「CM871a」。プレーナ型3bit MLC NANDと「MAIA」コントローラを採用したエントリーモデル。容量は128GB/256GBの2つ
SATA対応2.5インチSSD「850 PRO」。リテール向けのハイエンド製品で、容量は128GB/256GB/512GB/1TB/2TBの5モデルを用意
SATA対応2.5インチSSD「850 EVO」。メインストリーム向け製品で、容量は250GB/500GB/1TB/2TB/4TBの5モデルが書かれているが、4TBは未発売
SATA対応M.2 SSD「850 EVO」。基本的に2.5インチのものと性能は同じだが、容量は250GB/500GB/1TBの3モデルとなる

世界初のBGA SSD「PM971」が展示

 今回のフォーラムで展示されていた製品の中でも、特に興味を持った製品がBGA SSD「PM971」である。その名の通り、BGAパッケージ内にNANDフラッシュメモリ(3bit MLCのV-NAND)と新型コントローラの「Photon」、キャッシュ用DRAMを集積した製品だ。

 一見ただのフラッシュメモリチップのように見えるが、それだけでSSDとして動作するため、M.2などと比べても遙かにコンパクトで、重量も軽い。容量は128GB/256GB/512GBの3モデルが用意され、シーケンシャルリードは最大1,500MB/sec、シーケンシャルライトは最大600MB/sec、4Kランダムリードは最大19万IOPS、4Kランダムライトは最大15万IOPSと、性能に関してもSATA SSDを大きく上回る。PM971は、一般的なモバイルノートPCよりもさらに薄型化や軽量化が求められるタブレットや2in1ノートPCを主なターゲットとした製品であり、2016年後半や2017年に登場する製品への搭載が期待できる。

今回初めて展示された未発表のBGA SSD「PM971」。M.2などに比べて大幅に小型化できる。写真では2bit MLCとなっているが、正しくは3bit MLC
PM971のアップ。サイズはSDカードよりも小さい

USB接続の高性能ポータブルSSD「Portble SSD T3」

 また、USB経由で接続するポータブルSSD「Portable SSD T3」(以下T3)も展示されていた。この製品は、2015年1月に発売された「Potable SSD T1」の後継製品で、フォーラム開催時点では国内未発表であった。T3の容量は250GB/500GB/1TB/2TBの4モデルが用意されており、本体にUSB 3.1 Type-Cポートを備えている(USB 3.1 Gen1対応なので速度はUSB 3.0相当)。シーケンシャルリード/ライトともに最大450MB/secであり、SATA対応SSDに迫る性能を誇る。

 そのほか、Core i5+HDD搭載マシンとCore i3+SSD搭載マシンの性能比較デモも行なわれていた。

USB経由で接続するポータブルSSD「Portable SSD T3」
SATA対応2.5インチSSD「CM871a」とHDDの比較。エントリーモデルのSSDでも、HDDに比べると性能は格段に高い
Core i5+HDD搭載マシン(左)とCore i3+SSD搭載マシン(右)の性能比較デモ。CPU性能が下でも、SSD搭載モデルの方がアプリケーションの動作は高速である

エンタープライズ/データセンター向けの新製品ではリード最大5,000MB/secを実現

 エンタープライズ/データセンター向けSSDの新製品も多数展示されていた。NVMe対応の「PM1725」は、HHHLを採用しており、PCI Expres 3.0 x8インターフェイスに対応。3bit MLCのV-NANDを搭載し、容量は1.6TB/3.2TB/6.4TBの3モデルがある。シーケンシャルリード最大5,000MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,800MB/sec、4Kランダムリードは最大100万IOPS、4Kランダムライトは最大12万IOPSと、桁違いの性能を誇る。

 「SM1725」も、HHHLタイプの超高速SSDだが、こちらは2bit MLCのV-NANDを搭載。容量は1.6TB/3.2TBの2モデルがあり、シーケンシャルリードは最大3,000MB/sec、シーケンシャルライトは最大2,200MB/sec、4Kランダムリードは最大75万IOPS、4Kランダムライトは最大185,000IOPSであり、リード性能はPM1725の方が高いが、ライト性能はこちらの方が高い。特にライト性能を重視する用途向けの製品である。

こちらは、Enterprise & Datacenter関連の展示スペースである
Enterprise & Datacenterゾーンに展示されていたNVMe対応の超高速SSD
HHHLタイプの「PM1725」。3bit MLCのV-NANDを搭載。容量は1.6TB/3.2TB/6.4TBの3モデルがある
「SM1715」。2bit MLCのV-NANDを搭載。容量は1.6TB/3.2TBの2種類

 NVMe対応2.5インチSSDの「PM963」は、PM953の後継製品で、3bit MLCのV-NANDを採用。容量は960GB/1.92TB/3.84TB/7.68TBの4モデルがあり、シーケンシャルリードは最大1,600MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,200MB/sec、4Kランダムリードは最大38万IOPS、4Kランダムライトは最大35,000IOPSである。PM1725は、HHHLフォームファクタだけでなく、2.5インチフォームファクタのモデルも用意されており、そちらの容量は800GB/1.6TB/3.2TBの3モデル。シーケンシャルリードは最大3,100MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,800MB/sec、4Kランダムリードは最大75万IOPS、4Kランダムライトは最大12万IOPSである。

NVMe対応2.5インチSSD「PM963」。PM953の後継製品で、3bit MLCのV-NANDを採用。容量は960GB/1.92TB/3.84TB/7.68TBの4モデル
「PM1725」。3bit MLCのV-NANDと「Epic」コントローラを採用。容量は800GB/1.6TB/3.2TBの3モデル

エンタープライズ/データセンター向けSATA対応SSDやSAS対応SSDの展示も

 エンタープライズ/データセンター向けのSATA対応製品やSAS対応製品も展示されていた。SATA対応2.5インチフォームファクタの「SM863」は、2bit MLCのV-NANDを採用しており、容量は120GB/240GB/480GB/960GB/1.92TB/3.84TBと、小容量ものから大容量のものまで幅広い。シーケンシャルリードは最大520MB/sec、シーケンシャルライトは最大485MB/sec、4Kランダムリードは最大97,000IOPS、4Kランダムライトは最大29,000IOPSである。

 同じくSATA対応2.5インチフォームファクタの「PM863」は、3bit MLCのV-NANDを採用。こちらも容量は120GB/240GB/480GB/960GB/1.92TB/3.84TBの6モデルが用意されている。シーケンシャルリードは最大540MB/sec、シーケンシャルライトは最大480MB/sec、4Kランダムリードは最大97,000IOPS、4Kランダムライトは最大18,000IOPSである

 SATAよりも高速なSAS対応2.5インチフォームファクタのSSDとしては、「SM1635」と「PM1633a」が展示されていた。SM1635は、2bit MLCのV-NANDを採用しており、容量は400GB/800GB/1.6TBの3モデル。シーケンシャルリードは最大1,490MB/sec、シーケンシャルライトは最大1,290MB/sec、4Kランダムリードは最大20万IOPS、4Kランダムライトは最大37,000IOPSである。

 一方のPM1633aは、3bit MLCのV-NANDを採用。容量は480GB/960GB/1.92TB/3.84TBの4モデルで、シーケンシャルリードは最大1,400MB/sec、シーケンシャルライトは最大930MB/sec、4Kランダムリードは最大194,000IOPS、4Kランダムライトは最大41,000IOPS。

 そのほか、DDR3メモリ+HDDシステムとDDR4メモリ+NVMe SSDシステムの性能と消費電力の比較デモも行なわれていた。両者はCPUの世代も違うので、その分も考慮する必要はあるが、DDR4メモリ+NVMe SSDシステムの性能は、DDR3メモリ+HDDシステムの160倍以上もあり、消費電力は約14%小さいという結果が出ていた。

Enterprise & Datacenterゾーンに展示されていたSATA対応SSDとSAS対応SSD
SATA対応2.5インチSSDの「SM863」。2bit MLCのV-NANDを採用し、容量は120GB/240GB/480GB/960GB/1.92TB/3.84TBを用意
SATA対応2.5 SSDの「PM863」。3bit MLCのV-NANDを採用。容量は120GB/240GB/480GB/960GB/1.92TB/3.84TBの6種類
SAS対応2.5インチSSDの「SM1635」。2bit MLCのV-NANDを採用。容量は400GB/800GB/1.6TBの3モデル
SAS対応2.5インチSSDの「PM1633a」。3bit MLCのV-NANDを採用。容量は480GB/960GB/1.92TB/3.84TBの4モデル
DDR3メモリ+HDDシステムとDDR4メモリ+NVMe SSDシステムの性能と消費電力の比較デモ
DDR3メモリ+HDDシステムの消費電力は54.9Wで、性能は230TPSであった
それに対し、DDR4メモリ+SSDシステムの消費電力は47.3Wで、性能は37,779TPSであった

(石井 英男)