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「2016 Samsung SSD Forum Japan」レポート(講演編)

~経産省IoT推進担当者による基調講演からSSDの最新情報まで

「2016 Samsung SSD Forum,Japan」は、コンラッド東京ホテルで開催された

 日本サムスンが先日開催した「2016 Samsung SSD Forum Japan」は、その名の通り、SamsungのSSDに関するフォーラムであり、今回が初の開催となる。フォーラムでは、経産省による基調講演や、Samsung製SSDの導入事例、Samsung製SSDの特徴などの講演が行なわれた。ここでは、その講演についてレポートしたい。フォーラムで展示されていた製品については、別途記事にまとめたのでそちらをご覧いただきたい。

基調講演で経産省のIoT推進の取り組みが紹介される

 最初に日本サムスン 常務MarketingTeam長の李彰洙氏が、開会の挨拶を行ない、「SSDはSamsungにとって重要な事業であり、今後もさらに進化を続けていく」と述べた。

 続いて、経済産業省商務情報政策局の三浦章豪氏が「IoT推進に向けた経済産業省の取り組み」と題した基調講演を行なった。三浦氏は、現在は第4次産業革命の最中であり、それはデータによって駆動される社会だとした。

日本サムスン 常務MarketingTeam長の李彰洙氏
経済産業省商務情報政策局の三浦章豪氏

 三浦氏は、今後IoTの発展に伴い大きな経済効果が予測されているが、企業経営者のIoTに対する意識を調査したところ、グローバルでは「新たな収益源の創出に貢献すると考える」経営者が多いのに対し、日本では大半が「オペレーションの効率化や生産性向上に貢献する」と考える経営者が多いと指摘した。

 また、政府と経済界の代表らによる第2回官民対話の成果として、「自動走行」、「ドローン」、「電波」、「健康医療」の4項目についての具体的な方針が決定、安部総理から指示が出されたことも明らかにした。特に力を入れているのは、次世代の人工知能技術の研究開発についてであり、総務省と文部科学省、経済産業省の3省で連携して、人工知能技術の開発に注力するとのことだ。こうしたデータが重要になってくる社会において、高速にデータの読み書きが可能なSSDは重要な役割を果たすため、今後もさらなる性能向上に期待したいと語った。

基調講演のタイトルは「IoT推進に向けた経済産業省の取り組み」である
IT利活用の変遷について。2000年代前半はPC to PCが主流だったが、2000年代後半にはMobile to Mobileに移り変わり、2010年代にはThing To Thingになった
現代は第4次産業革命の最中である。それはデータ駆動型社会であり、モノのデジタル化・ネットワーク化が進み、ビッグデータの解析による判断の高度化や自律制御が進展する社会だ
2025年にIoTによって各分野に期待される経済効果予測。総計で年間11兆1,000億ドルにもなると予想されている
IoTについての企業経営者に対する意識調査結果。グローバルでは「新たな収益源の創出に貢献すると考える」経営者が多いのに対し、日本では大半が「オペレーションの効率化や生産性向上に貢献する」と考える経営者が多い
第2回官民対話の成果として、「自動走行」、「ドローン」、「電波」、「健康医療」の4項目についての具体的な方針が決定、安部総理から指示が出された
次世代の人工知能技術の研究開発について。総務省と文部科学省、経済産業省の3省で連携して、人工知能技術の開発に注力する

富士通がワークスタイル変革についてスピーチを行なう

富士通クライアントコンピューティングの大橋慎太郎氏

 次に、富士通クライアントコンピューティングの大橋慎太郎氏が「富士通の目指すワークスタイル変革の提案」と題した講演を行なった。大橋氏はまず、2016年2月1日に設立されたばかりの富士通のPCの新会社である富士通クライアントコンピューティング株式会社の概要を紹介し、同社の「Made in JAPANのこだわり」をアピールした。

 富士通は、企画・開発から製造・サポートまで一貫した国内生産体制を確立しており、業界トップレベルの製品評価試験を実施するなど、品質にこだわっている。さらに、国内生産を活かし、顧客の用途に応じてオーダーメイドサービスやカスタムメイドプラスサービスといった、カスタマイズサービスを行なっているという。

 このオーダーメイドサービスは、添付品やアプリのカスタマイズから、ハードウェアのカスタマイズ、要望に応じた専用モデル開発まで、さまざまなレベルでのサービスを受けることができる。専用モデル開発の例として、生命保険業務向けタブレットが紹介された。既存モデルでは10.1型ワイド液晶を採用していたが、それでは縦方向の解像度が足りず、自社開発した業務用アプリを使う際にスクロール操作が必要であるため、縦解像度が高い12.1型スクエア液晶を採用したモデルを作ったという。さらに外出先で長時間、快適に使えるように、本体の軽量化も図られている。

 また、富士通はスマートデバイスを活用することで、さまざまな業種・業態のワークスタイルを変革する提案を行なっている。そのワークスタイル変革において、SSDの導入効果は大きく、業務の効率化やシステムのレスポンス向上が期待でき、その導入効果を生産性に換算すると、社員200人の会社なら、1年間に約3,333万円もの生産性が生み出されることになるという。富士通は、ワークスタイルを「オフィスWORK」、「営業WORK」、「現場WORK」の3つに分け、今後もニーズに合わせて端末からアプリケーション、サービスまでの垂直統合での導入をサポートするとのことだ。

まず、設立されたばかりの富士通の新会社の概要が説明された
富士通のPCは「Made in JAPANのこだわり」として業界トップレベルの製品評価試験を行なっている
また、顧客の用途に合わせてオーダーメイドサービスやカスタムメイドプラスサービスを行なっていることも特徴だ
オーダーメイドサービスの例。生命保険業務向けタブレットの場合、通常モデルだと液晶の縦解像度が足りないので、縦解像度を増やしたスクエア液晶を搭載している。さらに、本体の軽量化も図られているという
富士通の提供するワークスタイル変革。スマートデバイスを活用することで、さまざまな業種・業態のワークスタイルを変革し、効率を上げることができる
ワークスタイル変革におけるSSD導入効果。さまざまな業種で業務効率化とシステムのレスポンス向上が実感できる
HDDをSSDに換装することで、1日約20分間の時間が節約できるとすると、従業員200人の会社では、1年間で約3,333万円分の生産性が生み出されることになる
現場のイノベーション変革。ワークスタイルを「オフィスWORK」、「営業WORK」、「現場WORK」の3つに分け、ニーズに合わせて端末からアプリケーション、サービスまでの垂直統合で導入をサポートする

さくらインターネットのSSD導入事例

さくらインターネット株式会社の須藤武文氏

 続いて、さくらインターネットの須藤武文氏が「さくらインターネットにおけるSamsung製SSDのメリットと活用方法について」と題した講演を行なった。さくらインターネットは、国内有数の規模と歴史を誇るデータセンター事業およびインターネットサービス事業を行なっている企業であり、日本のインターネット黎明期から、インターネットの発展に貢献してきた。

 さくらインターネットは、最新技術の導入に積極的であり、SSDもいち早くクラウドサービスやホスティングサービスに導入してきた。同社が最初にSSDを採用したサービスの提供を開始したのは2012年2月29日であるが、既にユーザーにもSSDはHDDより良いものだというイメージが定着しているという。SSD関連の売上は提供開始以来、全サービスで伸長を継続しており、SSDを積極的に選択する利用者が増えているとのことだ。

 さくらインターネットでは、SSDに限らず製品を導入する際には、さまざまな条件で性能を計測し、その要求水準を満たした製品を採用している。同社のテストは、かなり厳しい条件で行なわれるため、SSDによっては公称値の10分の1以下の速度しか出ないこともある。Samsung製SSDは、そうしたテストでも好成績を記録していることが選定された理由になっている。また、世代が新しくなるごとに性能がさらに向上していることも、Samsung製SSDの利点だという。

さくらインターネットの売上構成や顧客数について。売上の7割近くをホスティング事業が担う。また、個人と法人では、顧客数は個人の方が多い
さくらインターネットのサービスのうち、SSDを導入しているサービスとSSD導入時期。一番SSDの導入が早かったのは「さくらの専用サーバー」で、2012年2月29日からSSDを導入している
SSDはHDDより良いものというイメージが定着しており、SSDを選ぶユーザーが増えている
Samsung製SSDの中での比較。赤が上位モデルのSM863(V-NAND/MLC)、水色がPM863(V-NAND/TLC)、緑色がSM843Tn(プレーナNAND/MLC)であり、世代が新しくなるごとに性能が大きく向上している
Samsung製SSDの利点。既存製品だけでなく、毎回改良が施されており、新製品にも期待が持てる。また、サービス事業者として、今後もこれまで同様の性能改善とbitコストの低減、およびデータセンターにおける使用に合わせた製品作りを期待したいとのこと

SSD導入でビデオ会議が円滑に

株式会社TKCの金森直樹氏

 今度は、TKCの金森直樹氏が「社内コミュニケーション基盤とOffice 365利活用」と題した講演を行なった。TKCは、栃木県宇都宮市に本社があり、会計事務所や税理士事務所、地方公共団体向けの情報サービスを行なっている企業である。

 TKCは拠点が全国に分かれているため、社内コミュニケーション用のビデオ会議ネットワークを構築しているが、その導入は一筋縄ではいかなかったという。2013年にビデオ会議アプリを全社導入したが、PCがHDDモデルであったため起動が遅く、資料が共有できないなどの問題も発生したため、2014年からSSDモデルのPCを導入。Webカメラも標準搭載したPCにすることで、ビデオ会議を実用的に使えるようになった。

 その際、課題となったのが、旧モバイルPCの処分方法である。そこで、旧モバイルPCのキーボードやタッチパッドを交換し、HDDをSSDに換装。Windows 10にアップデートして開発部門や顧客向けの貸出機としてリユースしたという。SSD換装の効果は大きく、4、5年前のモバイルPCでも実用的な性能が得られたとのことだ。

TKCの概要。従業員数2,201名と、かなり大きい会社である
TKCは拠点が全国に分かれているため、社内コミュニケーション用のビデオ会議ネットワークを構築している
社内コミュニケーション基盤構築の流れと課題。2013年にビデオ会議アプリを全社導入したが、HDDモデルであったためPCの起動が遅く、資料が共有できないなどの問題も発生した。そこで2014年からSSDモデルのPCを導入した
また、Office 365も導入したが、音声や動画を利用するにあたって、PCをSSD化し、Webカメラを標準搭載するなど、PCの性能も向上させた
2015年9月に社内で利用するモバイルPCをSSDとWebカメラ搭載のものに更新した。その際、課題となったのが旧モバイルPCの処分方法である
旧モバイルPCのキーボードやタッチパッドを交換し、HDDをSSDに換装。Windows 10にアップデートして開発部門や顧客向けの貸出機としてリユースした
SSDの効果は大きく、Windows 10やアプリの起動が早くなり、動画視聴もスムースになった。また、移動中の振動や衝撃も気にしなくなったとのことだ
まとめ。社内コミュニケーション基盤とOffice 365+SSD搭載PCによって、社内リソースを有効活用でき、情報を正確に伝達できる

市場調査会社によるSSDとHDDのトレンド解説

株式会社テクノ・システム・リサーチの馬籠敏夫氏

 続いて、テクノ・システム・リサーチの馬籠敏夫氏が「SSD and HDD Outlook in 2016」と題した講演を行なった。テクノ・システム・リサーチは、エレクトロニクス、半導体、電子デバイス、自動車などの分野を対象とする市場調査会社であり、SSDやHDDといったストレージ分野についても調査レポートを発行している。

 馬籠氏はまず、NANDフラッシュメモリの用途について解説した。2015年の調査では、NANDフラッシュメモリの用途は、モバイルストレージが49.2%、SSDが27.8%、USBフラッシュメモリやSDカードなどが17.6%である。また、2015年のSSDの出荷台数は総計約8,000万台であり、その大半がPCで使われており、2016年の出荷台数は9,400万台になるとのことだ。

 エンタープライズ向けのSSDとHDDのトレンドについては、10,000rpm以上の高速HDDは年々減っていき、代わりにSSDが増えると予測されている。また、ノートPCについては、2015年の統計ではHDD搭載機が71.2%、SSD搭載機が28.9%だが、2017年にはほぼ半々となり、2018年にはSSD搭載機が59.3%と過半数を占めるようになるという予測を示した。

NANDフラッシュメモリの用途について。2015年の調査では、モバイルストレージが49.2%、SSDが27.8%、USBフラッシュメモリやSDカードなどが17.6%となっている
2015年のSSD市場について。SSDの出荷台数は総計約8,000万台であり、その大半がPCで使われている。2016年の出荷台数は9,400万台になると予想されている
エンタープライズ向けのSSDとHDDのトレンド。出荷台数のトレンドでは、10,000rpm以上の高速HDDは年々減っていき、代わりにSSDが増えると予測されている
ノートPCにおけるSSDの普及状況。2015年の統計では、HDD搭載機が71.2%、SSD搭載機が28.9%だが、2017年にはほぼ半々となり、2018年にはSSD搭載機が59.3%と過半数を占めるようになる

サムスン電子がSSDの最新技術と今後の予測について講演

サムスン電子の李禎培氏

 続いて、サムスン電子の李禎培氏が「Revolutionary Era of Flash Storage」と題した講演を行なった。李氏は、SamsungはNANDフラッシュ市場、モバイル向けストレージ市場、クライアント向けSSD市場で、全てNo.1シェアを獲得しているだけでなく、3次元NANDフラッシュ「Samsung V-NAND」を世界に先駆けて開発。その後も進化を続けており、2015年に登場した第3世代の「V3」では、レイヤーを48層重ねていると語った。

 V-NANDは、従来のプレーナ型NANDと比較して、密度と書き込み速度は2倍に、消費電力は2分の1に、耐久性は10倍に向上している。また、用途や価格に応じてさまざまなSSD製品があり、最適な製品を選べることもSamsung製SSDの利点だ。リテール向けSSDの代表がEVOシリーズで、2013年に登場した「840 EVO」は世界初の3bit MLC採用SSDであり、2014年に登場した「850 EVO」は世界初の3bit MLC V-NAND採用SSDである。さらに、850 EVOは第3世代のSamsung V-NAND採用へと進化している。

 SSDはノートPCにとって、ベストのソリューションであり、そのトレンドは大容量化、インターフェイスの高速化、小型化の3つだ。大容量化については2bit MLCから3bit MLCに変えることで、容量が1.3倍に増加した。また、インターフェイスをSATA 6GbpsからPCI Express 3.0 x4に変えることで、転送速度は5.3倍に高速化された。小型化については、2.5インチから1.8インチ、mSATA、M.2、BGAとサイズが小さくなっていった。BGA SSDは、まだ正式発表前の製品であり、今回のフォーラムで初めてお披露目されたものだが、フットプリントがM.2の5分の1未満と小さく、性能もNVMe対応のM.2 SSDとほぼ同等であるため、2in1 PCや超薄型タブレットなどに最適だ。

 また、家電やセットトップボックスなど、PC以外の用途についてもSSDの需要は年々増しており、2016年には出荷台数がHDDに並び、2017年にはSSDが上回るとの予測を示した。SSDは機械的に動作する部分がないので、HDDに比べて対衝撃性は4.6倍、耐振動性は20倍あり、シーケンシャルリードは4倍、シーケンシャルライトは1.1倍、ランダムリードは23倍、ランダムライトは6.2倍勝っている。また、信頼性も高く、HDDと比べて、平均故障間隔は1.25倍に、故障率は5分の1に改善されている。価格も年々低下しており、128GB SSDの価格は既に40ドルを切っており、64GB SSDとの差がほとんどなくなっている。また、PCにおけるSSD搭載機の割合も年々増加し、2019年にはSSD搭載機が40%に達すると予測されているとのことだ。

 最後に、日本サムスン 代表取締役の鶴田雅明氏がクロージングの挨拶を行ない「2016 Samsung SSD Forum Japan」が終了した。

SamsungはNANDフラッシュ市場、モバイル向けストレージ市場、クライアント向けSSD市場で、全てNo.1シェアを獲得している
Samsungは3次元NANDフラッシュ「Samsung V-NAND」を世界に先駆けて開発。その後も進化を続けており、2015年に登場した第3世代の「V3」では、レイヤーを48層重ねている
Samsung V-NANDと従来のプレーナ型NANDの比較。密度と書き込み速度は2倍に、消費電力は1/2に、耐久性は10倍に向上している
SamsungのOEM向けSSDラインナップ。PC向けとして「SM951」や「PM951」、「PM871」、「CM871」があり、サーバー/ストレージ向けとして「SM1635/1637」や「PM1635」、「SM1715」、「PM1633」、「PM1725」が、データセンター向けとして「SM963」や「SM863」、「PM963」、「PM863」がある
Samsungのリテール向けSSDの進化。2013年に登場した「840 EVO」は世界初の3bit MLC採用SSDで、2014年に登場した「850 EVO」は、世界初の3bit MLC V-NAND採用SSDである。さらに、850 EVOは第3世代のV-NAND採用へと進化している
SSDはノートPCにとって、ベストのソリューションであり、そのトレンドは大容量化、インターフェイスの高速化、小型化の3つだ
クライアント/コンシューマ向けSSDの特徴
PC以外の用途向けHDDとSSDの出荷予測。HDDはほぼフラットなのに対し、SSDは年々増加し、2016年には出荷台数が並び、2017年にはSSDが上回る
SSDは機械的に動作する部分がないので、HDDに比べて対衝撃性は4.6倍、耐振動性は20倍に向上している
もちろん、HDDに比べて性能も高く、シーケンシャルリードは4倍、シーケンシャルライトは1.1倍、ランダムリードは23倍、ランダムライトは6.2倍に向上している。また、信頼性も高く、平均故障間隔は1.25倍に、故障率は5分の1に改善されている
SSDの価格推移とシェアの予測。左のグラフが価格推移で、128GB SSDの価格は既に40ドルを切っており、64GB SSDとの差がほとんどなくなっている。右のグラフはSSDとHDDの市場シェア予測であり。2019年にはSSD搭載機が40%に達すると予測されている
最後に、日本サムスン 代表取締役の鶴田雅明氏がクロージングの挨拶を行なった

(石井 英男)