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スマホで瞬時に8K動画も転送。富士通が世界初のテラヘルツ帯小型受信機を開発

テラヘルツ帯高感度受信機の内部構造(内蔵アンテナと受信増幅チップの接続部)

 富士通株式会社と株式会社富士通研究所は8日、数十Gbpsの高速無線通信を実現する300GHz帯小型受信機を世界で初めて開発したと発表した。

 周波数が100GHzを超える電波はテラヘルツ帯呼ばれ、現在のスマートフォンやタブレットで扱う0.8~2GHzの周波数帯に比べ、電波を使用できる周波数の幅が100倍以上広く、通信速度も100倍に高められる。しかし、テラヘルツ帯の電波は、空間に伝播していくと強度が著しく減衰する。その微弱な伝播を受信するには、感度の高い受信機が必要だが、受信機にすると受信増幅チップを実装したモジュールとアンテナの個別構成となるため、携帯端末には組み込めないほどサイズが大きくなるという課題があった。

 今回両社は受信増幅チップとテラヘルツ帯のアンテナを低損失で接続し、容積0.75立方cm(出力端子含まず)という一体化する技術を開発。携帯端末に搭載可能な大きさで、アンテナ内蔵300GHz帯の受信機を世界で初めて開発した。

 技術的には、ポリイミドをプリント基板に採用。プリント基板の表面と裏面にはグラウンドが形成され、表裏のグラウンドを貫通ビアで接続する。ポリイミドは石英より10%ほど損失が大きいが、加工精度が4倍以上高いため、貫通ビアを波長の10分の1以下となる数十μm以下の間隔で形成し、石英基板上の接続配線と比べ、損失を半減。また、ミリ波帯衝突防止レーダー用チップの実装で使用される、受信増幅チップの回路形成面をプリント基板に対向させて接続する実装技術の適用可能周波数をテラヘルツ帯にまで拡張することにも初めて成功した。

テラヘルツ帯高感度受信機とその断面構造(受信増幅チップ実装部の断面)

 これによって数十Gbps級の通信速度を利用したKIOSK端末からスマートフォンに8K級の動画を瞬時伝送するといったことが可能となる。また、端末間の瞬時データ交換や、携帯端末データの瞬時バックアップといった応用も期待される。

 富士通では、2015年度中にこの技術を使った転送実験を開始し、2020年頃の実用化を目指す。

テラヘルツ帯高感度受信機の利用シーン

(若杉 紀彦)