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分子研、光の照射でオン/オフを切り替える超伝導スイッチを開発
(2015/2/13 12:35)
自然科学研究機構分子科学研究所の須田理行助教、山本浩史教授、独立行政法人理化学研究所の加藤礼三主任研究員らの研究グループは13日、世界で初めてとなる、光の照射によってオン/オフが可能な超伝導スイッチの開発を発表した。
一定の温度以下で電気抵抗がなくなる超伝導物質を用いた超伝導トランジスタとして、同グループではこれまでにκ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Br(κ-Br)という有機物質を用い、ゲート電極に電圧を印加して物質に電荷を蓄積させることで電気抵抗を制御する、一般的なトランジスタと同じ電界効果を用いたものを開発していた。
今回の研究では、このκ-Brを用いた超伝導トランジスタのゲート電極部分を、光に応答して電気的に分極する有機物質であるスピロピランと呼ばれる物質による有機薄膜に置き換えた。スピロピランは光の照射によって色が変わる現象を示すフォトクロミック分子の一種で、紫外線を照射することで正極と負極へ分かれた双性イオン構造へ変化し、可視光照射または熱処理で中性構造へと変化する。
この現象により、新たに開発したトランジスタに紫外線を照射するとスピロピラン薄膜の分極によってκ-Brに電荷が蓄積され電気抵抗が減少。逆に可視光を照射することによって分極が解消され、電荷を取り除くことができる。
同研究グループでは、このκ-Brによる光駆動型トランジスタを極低温まで冷却しながら電気抵抗を測定。当初は絶縁体状態であったが、紫外線を照射することで次第に電気抵抗が減少。180秒の照射後、7.3K(ケルビン)で超伝導状態となることが観測された。また、この超伝導状態は紫外線の照射を止めても維持され、かつ可視光を照射することで絶縁体に戻ることも確認されたことから、光を用いて可逆的にオン/オフが可能な超伝導スイッチとして動作させられる。
この研究で、光によって超伝導を切り替えるという新しいデバイスの概念を提示したことで、光で遠隔操作が可能な高速スイッチング素子や超高感度光センサーなどの新たな技術革新が生まれる可能性があるほか、原理的には電界効果トランジスタに用いられている多くの物質に拡張して適用できると考えられることから、さまざまな光駆動型相転移デバイスの開発に繋がる基盤技術になることも期待されるとしている。