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経産省、3Dプリンタによる“ものづくり”に関する研究報告書を公表

~付加製造の経済効果は2020年に約21.8兆円と予測

2月21日 発表

 経済産業省は21日、3Dプリンタに代表される「付加製造」(Additive Manufacturing)に関して検討を行なってきた「新ものづくり研究会」が取りまとめた報告書を公表した。

 新ものづくり研究会は、3Dプリンタに代表される付加製造技術の活用可能性や革新性、社会に与える変化や企業の競争力強化のための戦略、日本企業の強味を活かすために必要な政策などを検討するものとして、2013年10月から4回に渡り開催されてきたもの。

 報告書では、「精密な工作機械“付加製造装置”」、「個人も含めた幅広い主体のものづくりツール“3Dプリンタ”」という2つの方向での発展を予測。前者は試作/設計、型の製造などにおける生産プロセスの革新のほか、複雑な内部形状の実現、人体や自然物との接点を有する場合の親和性。さらに少量生産製品を適正なコストで製造できるなど製品そのものの革新にも繋がるものであるとした。

 後者については、直接造形できる分かりやすささ、自宅やオフィスで試作でき、アイデアを即興で実体化しやすいこと、SNSの発展による他者とのアイデア共有などを発展可能性の理由に挙げている。

 また、3Dプリンタ/付加製造技術の経済効果を、2020年に全世界で約21.8兆円と予測。これは、装置や材料で1兆円、3D出力サービスなどを含む付加製造技術で製造されたものの製品市場で10.7兆円、効率アップによるコスト削減で10.1兆円を合わせたものとなる。

 一方で、積層するにあたっての精度や強度、使用可能な材料の制約、造形速度、大きさなど限界も多く「少なくとも当面は、付加製造技術でどんな製品も作れる世界がすぐに実現するわけではない」とするほか、製造業で量産に用いるには金型を使った場合に比べて製造速度とコストで劣る点などを指摘。

 さらに、同分野において欧米に比べての立ち後れていることを課題として挙げている。例えば、被引用回数が10回を超える3Dプリンタ/付加製造装置関連の特許出願件数が少なく、3Dプリンタの累積出荷台数(1988~2012年)についても日本企業のシェアは3.3%。こうした中で、日本の製造ノウハウが活かされにくい、メーカーの対応が遅い、材料を輸入する必要があるなど、日本企業が不利な立場に置かれていることから、戦略的な方策を検討することが「急務である」としている。

 また「精密な工作機械“付加製造装置”」、「個人も含めた幅広い主体のものづくりツール“3Dプリンタ”」という2つの方向で発展すると見られる付加製造技術は、今後、少なからぬ社会的変革を促すとも言及。

 特に後者においては、ものづくりの参入障壁が低下し、適量規模の消費市場を形成すること、大企業のエンジニアが社内組織では採用されなかったアイデアを自力で商品化するなどの変革を生み出す可能性があるとした。

 今後、装置やソフトが材料一体となった基盤技術の開発に取り組み、議論が進められる付加製造の標準データフォーマット策定についても、日本のものづくりの強味が活かされるよう国際的な議論に参加。これについて、平成26年度(2014年度)予算案として40億円を研究開発プロジェクトに計上しているという。

 このほか、ものづくりを促進する環境の整備や、初等/中等教育段階から3次元のものづくりへの関心を高めるような人材育成なども求めている。

(多和田 新也)