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情報通信研究機構など、TV周波数帯を用いた802.22通信の実証実験に世界で初めて成功

今回開発された基地局/加入者局装置
1月23日 発表

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社日立国際電気、株式会社アイ・エス・ビーは、TV放送で使われる周波数帯のホワイトスペースを利用した中長距離地域無線(WRAN:Wireless Regional Area Network)規格「IEEE 802.22」に準拠した基地局装備と加入者局装備の開発と実証実験に世界で初めて成功した。

 本来はTV放送などで利用される周波数帯(日本の地デジ放送であれば470~710MHz帯)として割り当てられているが、地理的条件や時間的条件によってほかの目的にも利用可能な周波数帯をホワイトスペースと呼ぶ。本来の用途への影響が十分に小さい場合にはほかの目的に利用することが検討されている。

 国内においては、2009年より総務省がホワイトスペースの活用を検討し、2011年4月には実験実験などを行なうホワイトスペース特区を定めたほか、2012年10月にはホワイトスペースの有効活用を検討することを明記した、「周波数再編アクションプラン(改訂版)」を公表するなど、検討が進められていた。

 このホワイトスペースを用いたWRANの規格として米国電気電子学会(IEEE)が「IEEE 802.22」を定めている。ただ、欧米各国の規制や規格上の機能制限が高く開発例がない状態だったという。

 今回の開発/実験では、IEEE 802.22に準拠した論理(MAC)層、物理(PHY)層を搭載した基地局装置と加入局装置に、MAC層ソフトウェア、干渉回避ソフトウェア、IP通信ソフトウェアを実装。一次(本来目的の)利用者と二次利用者の干渉を計算して利用可能な周波数を通信機に知らせる“ホワイトスペースデータベース”に接続して、一次利用者に影響を与えない周波数を自動的に選択。基地局装置から10~30km圏内にある複数の加入者局装置へ、最大20Mbps前後のIP通信を行なえることを実証した。

 NICTは今回の成果について、インターネットなどが十分普及していなかったり、一次利用者への干渉を回避しやすい地方における有線の代替または補助回線、災害時の通信インフラ確保などの目的に、ホワイトスペースを活用した中長距離地域通信の技術開発が推進されることが期待できるとしている。

 また、ホワイトスペース無線通信システムの業界標準規格/相互認証を行なう「ホワイトスペースアライアンス」とも協調して、商用化に向けて開発を進めるとしている。

(多和田 新也)