Microsoftのクルトワ氏がコンシューマ事業への注力を強調

ジャン・フィリップ・クルトワ氏



樋口泰行氏

 日本マイクロソフト株式会社は、米Microsoft及びMicrosoft Internationalのプレジデントであるジャン・フィリップ・クルトワ氏が来日したことに伴い、コンシューマ事業への取り組みについて説明した。同氏は、米国とカナダを除く、Microsoftの海外拠点を担当している。今回は、アジア地域視察の一環として来日した。

 冒頭、今回の会見について日本マイクロソフトの代表執行役社長樋口泰行氏が、「日本マイクロソフトではコンシューマ事業への注力のために、ワールドワイドでコンシューマチャネルグループという新しい塊を設立した。日本では執行役常務の香山春明が担当するが、この事業グループ設立の狙いについて、クルトワの方から説明させてもらう」と説明。

 それを受けてクルトワ氏が、コンシューマチャネルグループ設置の狙いを次のように話した。

 「コンシューマ事業は我々の事業のコア事業の1つである。会社が設立した30年前から、コンシューマ向けのソフトウェアを販売してきた」。

 「米国では2011年4月、日本では7月に設立されたコンシューマチャネルグループ、略してCCGはこれまで別々に販売されてきたWindows製品、Office、Windows Phone、Xbox 360 Kinectといった製品を連携してより集中してコンシューマのお客様に販売していく。すでに日本で発表しているマルチプロダクトでの広告キャンペーンは35カ国で実施し、さらに小売り現場でのセールスプロモーションも実施していく予定だ。これらの施策により、我々の技術がどう進展しているのかを、コンシューマの皆さんに知ってもらうことができる」。

 「コンシューマ市場に向けて、ホットなテクノロジーを提供するために、我々は大きな投資を行なっており、Kinectはその典型的な例といえる。実績としても1カ月で4,000万台と、これまでで最も急速に売り上げを伸ばしたコンシューマデバイスとなった。さらに、KinectのWindows SDK提供により、全ての開発者および学生の皆さんも、Kinectのインターフェイスを利用したゲーム以外のものも含めたソフトウェア開発をしてもらうことが可能となった。その成果は多くの場面で共有されていくことになるだろう」。

 「我々のクラウドは、現在人気を集めているスマートデバイスをより輝かせ、いつでも使えるものとする。コンシューマとビジネス領域は最近になってますます境界が曖昧になっている。コンシューマ事業は我々のコア戦略である。ビジネスとの境界が曖昧になって、個々の事業が統合されていく意味を理解する唯一の会社だ」と述べた。

 買収したSkypeにも触れ、「買収が承認されたことで、多くの皆さんに愛されているSkypeが正式にマイクロソフトファミリーの一員となった。SkypeがどのようにMicrosoftのポートフォリオに加わるのかをお話するのは時期尚早であるが、CEOであるトニー・ベイツはスティーブ・バルマーにディビジョンの責任者として報告を行なっている。日本法人のスタッフも、1月には日本マイクロソフトに移転する予定だ。今後、ビジネスディビジョンと連携し、同僚や協業相手、さらに家族といつでも繋がることができるテクノロジーとなるべく作業を進めている」とした。

 また、プロダクトやサービスが別々に開発され、連携されていない問題については、セールス現場の統合と共に「プロダクトデベロップメントによる統合が進んでいくだろう」という見通しを示した。

 海外に比べ日本での展開が遅れているWindows Phoneについては、「今後の展開についてはお話できないが、キャリア、機器ベンダー共に拡大を目指して展開する」(樋口社長)意向だという。

●WDLCは年末から若者のICT活用支援キャンペーンを開始
香山春明氏

 日本でのCCG責任者となった香山春明氏は、コンシューマ市場活性化の一環としてウィンドウズ デジタル ライフスタイル コンソーシアム(略称=WDLC)の会長に就任すると共に、若年層のICTスキル向上を図る新プロジェクト「Digital Youthプロジェクト」を開始することを発表した。

 「数年、米国に出向し、8月に日本に戻ってきた。日本は良い意味で得意なマーケットで、量販店を例に取ると米国では誰もいない店舗の棚に無造作にPCが置かれているのに対し、日本ではシナリオ訴求による販売や店頭スタッフの教育が行き届いているといった違いがある。この日本独自の環境に合わせた施策としてWDLCがあり、その取り組みは海外でも注目されている。新プロジェクトは経済産業省からも後援を受け、ICT市場活性化に留まらず人材育成につながるような内容のものとなっている」。

今回のキャンペーンDigital Youthプロジェクトの概要プロジェクトの構成Digital Youth育成のステップ
SUPER ROOKIESキャンペーン概要将来のユースシーンイメージターゲット像のインサイト
キャンペーン施策展開MAP経験フォルダの概要
同世代の等身大ヒーローも紹介キャンペーン参加企業

 新しいプロジェクトは、「Digital Youthプロジェクト」の名称で、若者の成長の目を伸ばし、国際競争力を持った人材を育成することが目標となっている。ITスキルと共に日本の若者の弱点といわれる創造性を伸ばすことにも着目している。

 プロジェクトの第1弾として、「SUPER ROOKIESキャンペーン」を2011年12月1日から2012年5月31日までの期間開催。大学生を対象にPCで実践してもらいたい以下の7つのシナリオを用意し、プロジェクトを進める。

(1)いつでも、どこでもMY PCを持ち歩くモバイル高速通信
(2)人とのつながりを大事にするためのSNS活用
(3)PCとスマートフォンの効果的な使い分け
(4)社会に出たら必須スキルとなるOfficeの利活用
(5)講義や海外とのコミュニケーションにも活用できるOneNote活用
(6)SkypeやWindows Live活用による学習や海外とのコミュニケーションによる創造力、語学力
(7)趣味、娯楽のためのPC活用

勝俣喜一朗氏

 「Windows PCを核に、力をつけてもらう目的で7つのシナリオを用意した。このシナリオを活用していく一環として、WDLCに参加する企業に機器購買、サービス契約などの機会が生まれ、ビジネスが広がるように、必要なデバイスやサービスを購買する際に特典となるプロモーションとセットで紹介していく」(WDLC事務局長兼日本マイクロソフト株式会社 OEM統括本部 マーケティング本部 業務執行役員 本部長 勝俣喜一朗氏)。

 ICT活用による成功例として、今回のプロジェクトに関わる放送作家で脚本家の小山薫堂氏をはじめ、30人の大人の体験や作品を紹介するデジタルファイルの公開や、同世代でヒーローとなる体験をしている人を紹介し、ICT活用の参考例としてもらう。

 さらに、経済産業省が推進する人材育成、キャリア教育のように、WDLCとしてデジタルビジネス企画を構築できる人材を育成する「WDLC塾(仮称)」も中期プロジェクトとして提供する計画だ。

 WDLC塾は6カ月を1クールとして座学による学びと、企画の具体化を行ない、協賛企業のもとで実習を行なうことで、人材育成を行なう。現在、4月のスタートに向けて具体的な中身を検討している。

Digital Youthの今後の施策展開スケジュールWDLC塾(仮称)の考え方
カリキュラム案今後のスケジュール案キャンペーンサイト

 「これまでの直接PC購買に結びつくキャンペーンとは毛色が異なるものだが、一社ではできない取り組みとは何かを考えた結果、今回のキャンペーンとなった。前回行なったPCで地デジカキャンペーンは、例年に比較してPC販売台数が85万台増、WDLCに参加するPCメーカー、量販店、コンテンツベンダーなどを通し1,100万人が価値理解する結果を得た。新しいプロジェクトはこれに比べると結果が出しにくいが、海外先進国のPC普及率が50%を越えているのに対し、日本は33%に留まっている。この原因が若者のPC利用が少ないためではないかと分析しており、この結果を少しでも変えていきたい」(勝俣事務局長)。


WDLCのこれまでの実績と今後の方向性「パソコンも地デジカ」キャンペーンの総括
地デジキャンペーン成果成果を生んださまざまなアクティビティ

 このプロジェクトに協賛している経済産業省 産業人材政策室 室長補佐の大野孝二氏は、「経済産業省としても小・中・高時代には職業感を育成するキャリア教育、大学生には社会で必要となる社会人基礎力が必要と考え、事例の提供などを進めている。今回のプロジェクトはこうした動きと合致している」と話した。

 同年代の等身大のヒーロー事例として紹介される予定の震災復興ITボランティアのメンバーで、慶應義塾大学大学院に在学中の澤畑学さんは、「これまで6回、また11月25日から7回目の東北大震災、被災地に出向いてITによる被災地支援を行なってきた。被災地の皆さんのIT活用によって現地からの情報発信やコミュニティの構築に繋げてもらうお手伝いをしている。実際に現地に出向くと、この機会がなければ自分の手でPCを触ることがなかった人がパソコンを使うことで思わぬ効果が現れるのを目の当たりにしている。Skypeでコミュニケーションをとることはもちろん、Wordを使ってキレイな装丁の葉書を出すことでも効果があらわれる」とボランティアを実体験しているからこその感想を紹介した。

大野孝二氏澤畑学氏ICTキャラバン隊と復興支援ITボランティア
活動のビジョンとこれまでの成果ICTが被災地にもたらすもの活動を通じて学んだことと今後に向けて

(2011年 11月 28日)

[Reported by 三浦 優子]