日本マイクロソフト株式会社は6日、東京・品川本社のビルで記者会見を開き、同社 代表執行役の樋口泰行社長が2012年度の経営方針について説明した。
日本を取り巻く環境 |
冒頭で同氏は、日本を取り巻く環境は「かつてない危機的な状況」にあると指摘。まず少子高齢化で、学力/国力が相対的に低下し、中国にGDPを追い抜かれている。また、過去に「匠」と言われてきた技術も、経済のグローバル化により「ガラパゴス」と呼ばれるようになってしまい、国際的なベンチマークでは取り残されてしまう。さらに、震災や原発事故、それに伴う政治への影響もあるとした。
樋口氏は、「我々の顧客からは、“今、日本はビジネスだけが頼りになっている”との声も聞こえてきている。そこで、我々は顧客へビジネスプラットフォームを提供し、日本ビジネスの全体を支えていかなければいけないと考えた」とした。
日本マイクロソフトの2011年度の実績を具体的に振り返ってみると、5つの分野で着実な進化を遂げたという。まずWindows 7やOffice 2010では、コンシューマ/ビジネス双方で潜在ニーズの掘り起こしに成功した。クラウド事業では、イメージ向上、AzureやDynamics CRMなどの製品投入によるラインナップの拡大で本格化した。社名変更と本社移転により、パートナー/PCメーカーとの連携性が向上。新社屋は品川という好立地も手伝って、3.11東日本大震災の当日は、380名の顧客が日本マイクロソフトに来社し、このうち200名の帰宅困難者が宿泊していったという。このほか、富士通やトヨタとのグローバルレベルのパートナーシップにも成功し、ソリューションビジネスも加速したという。
特にクラウドについては、365日/24時間のサポート体制や、営業/SEを揃え、日本市場に向けた体制強化を行なった。パートナーシップの面でも1,000社を超えるパートナーシップを達成し、復興支援での連携もあったという。さらに、Office 365やWindows Azure、Dynamic CRM Online、Hyper-V Cloudの投入により、オファリングも拡充した。
2011年度の実績 | 2011年度のクラウド分野の推進 |
これまでの日本マイクロソフトの経営について振り返ると、外資系らしい短期的な視点から、中長期的な戦略にフォーカスを移すことで、業績の改善が図られたという。そして日本企業の現在も同様に、古い視点にとらわれず、変化しなければならない局面にあるとし、2012年度は「日本の『変わる』を支援」することを目指すとし、具体的な注力分野は、「デバイス/コンシューマ」、「クラウド」、「ソリューション」の3つだとした。
2012年度の目標に向けて | 2012年度の注力分野 |
とくに、デバイス/コンシューマでは大きく推進する。まず、7月1日付で、コンシューマー&パートナーグループ」を新たに設立し、社内体制を強化。コンシューマはあくまでも「モノ」を追求するので、Windows Phone 7、スレートPC、Kinect for Xbox 360の投入で市場を拡大。一方、既存のWindows 7やOffice 2010などについては、地デジへの完全移行を機に、継続的に価値訴求を行なうとした。
Windows Phone 7については、iOSやAndroidと比較して出遅れていることを認めながらも、「日本はPCとスマートフォンを両方作れるメーカーが多く、PCとの連携で差別化を図れる。Mangoについても最終段階まできており、キャリア、コンテンツメーカー、パートナー、SNSとの話し合いもかなり進んでいる、また、開発環境が無料で提供されているのも大きなアドバンテージであり、アプリケーションが成功の鍵だと考えている」と述べた。具体的な製品投入時期について、「現段階では話せない」としながらも「期待していただきたい」とした。
クラウドでは、継続してオファリングを充実させるとともにパートナーシップの強化、本格的な企業導入を狙うとする。特に震災後はクラウドへの需要が高まっているとし、品質向上とサポート体制の整備、可用性の確保でアピールしていきたいとした。
ソリューションでは、DRM/サーバーなどは信頼性向上を目指すと共に、エンジニアのスキル向上、営業力向上でBtoBのエコシステムを強化。また、米国本社と連携したサポートにより、顧客のグローバル展開やエコシステムの確立を目指すとした。
このほか、東日本大震災の復興/再生へも取り組み、ICTの活用により、震災地に特化した就労支援、自治体との協力による地域活性化、クラウドの推進によるエネルギー削減および節電を実現したいと述べた。
デバイス/コンシューマの強化 | クラウドの推進 |
ソリューション事業の強化 | 復興/再生に向けた取り組み |
最後に樋口氏は、「日本企業はもともとグローバルで戦える力があるが、現代においてはオープンスタンダードの上で競争しなければならない。我々がIT基盤を強化し、顧客に提供することで、日本企業のビジネスの成功に貢献したい」とした。
2012年度の経営執行チーム | 日本マイクロソフトの目標 |
(2011年 7月 6日)
[Reported by 劉 尭]