日本マイクロソフト、サーバーに関する節電対策について説明
~サーバールームの室温を2℃上げると、最大39,000kWの節電に

中川哲氏

6月23日 開催



 日本マイクロソフト株式会社は23日、報道向け説明会を開催し、同社コマーシャルWindows本部業務執行役員本部長の中川哲氏が、サーバーに関する節電対策などについて解説した。

 同社は去る5月に同様の説明会を開催し、個人向けPCの節電方法について紹介を行なった。中川氏はまず、その成果などについて説明した。

 自動節電プログラムは125,000のダウンロード、節電設定無償電話サポート窓口には1,355回の電話があったほか、ネットでは同社の取り組みを評価する声が多く見受けられたという。節電プログラムのダウンロード数は、オプションのプログラムとして異例の数だという。また、こちらは3月から掲載しているものだが、節電対策のページにはこれまで876,000回の来訪があった。

 また同社は6月に、PCでの節電に関する独自の市場調査を行なった。その結果によると、地域によって1割程度のばらつきはあるものの、全国平均で80%の人が自宅で何らかの節電対策を行なっているという。対策内容として最も多いのは照明に関するものだが、29.6%(複数選択可)はPC/液晶に関して対策を行なっていることが分かった。

 またこの調査では、PCの初期設定を変更することで消費電力を下げられることを知っているかという質問も行なったが、これについては51%が知っていると答えた。中川氏にとって、この数値は思ったより多かったというが、それと同時に、別の質問から、知っていると答えた人、つまりPCリテラシーの高い人は、そうでない人よりも情報源としてインターネットをより活用していることも浮き彫りになった。

 同社では、到来する夏に向けて、PCメーカーなどとも協力して節電を呼びかけていくが、現在リーチができていない人に向け、6月26日に新宿でお笑い芸人の「TKO」や「ますだおかだ」らを招いた啓蒙イベントを行なう。

 また、東京電力管内の電力需給状況を表示するWindows Vista/7向けガジェットを23日より提供開始する。

5月10日の発表の反響51%の人がPCの節電設定が可能なことを知っており、インターネットユーザーの方がリテラシーが高い傾向に6月23日より提供するガジェット

 一方、法人向けの調査では、93.7%が節電意識があると答えたものの、すでにPCの節電を実施/評価しているのは18.6%に留まり、47.5%は計画中、33.9%は計画なしと答えた。7月以降、節電の実施率は高まると思われるが、企業が従業員に継続的な節電意識を維持させるには、節電の「見える化」を行なうことが重要であるとして、同社は「System Center Configuration Manager 2007 R3」の180日試用版を無償提供開始することを決定した。同ソフトを使うと、消費電力のほか、約20種類の電力管理レポートを作成できる。

 サーバーの節電については、効果的な対策として、サーバールームの室温の変更、サーバーの仮想化による統合、クラウドの利用を挙げた。

 一般的なサーバールームでは室温が22~24℃くらいに設定されている。しかし、サーバー自体の動作温度は概ね35℃までメーカーによって保証されている。空調の設定を弱めるとその分消費電力は下がるが、同時にサーバーはファンの回転数が上がり、消費電力が増す。

 そこで、同社が電力中央研究所で検証したところ、サーバーの吸気口温度が35℃を維持する範囲までは、消費電力は増大せず、性能にも影響がないことが分かった。

 現在、日本全国には約270万台のサーバーがあり、その内約59%が東電管内に存在し、その内の約66%が電気事業法第27条の使用制限の対象となり得る事業者データセンター外に存在。そして、サーバールームの総消費電力の内、サーバーが約43%、空調が約52%を占める。

 ここから、これら東電管内の事業者データセンター外の全サーバールームの室温設定を2℃上げると、小型水力発電所4基分の発電量に相当する約39,000kWの節電が理論上可能になるとの試算を示した。

 クラウドについては、事業者データセンターは、高い電力効率を実現しているため、同じサーバーを動かすにしても、個々の企業で運用するより、トータルで消費電力を下げることができるとした。

 また、仮想化によって4台のサーバーを1台に集約すると、約70%の節電を行なうことができるという。なお、同社は仮想化導入の無償質問受付窓口を設置している。

 これらのサーバー向け節電支援情報は、とりまとめて同社サイト上で公開される。

企業の節電意識は高いが、PCでの対策実施率は低いデータセンターの消費電力に関する調査結果サーバールームの温度と消費電力の検証
温度が上がっても性能に影響はほとんどないサーバールームの室温を2℃上げると、約39,000kWの節電に同社では仮想化、クラウド移行の支援サービスも行なっている

(2011年 6月 23日)

[Reported by 若杉 紀彦]