日本マイクロソフトと千葉県は8日、千葉県千葉市のホテルポートプラザちばにおいて、ICTを活用した地域活性化協働プログラムの成果報告会を開いた。
両者は、2010年2月17日~2011年2月16日までの1年間に渡って、ICTの利活用促進を通じた千葉県内の地域活性化を目的に、「地域活性化協働プログラム」を実施してきた。
プログラムの内容は、地域IT産業の活性化と新たな雇用創出を目指し、IT企業とその技術者を対象に、次世代IT技術に対応する企業やその人材を育成するためのセミナー、トレーニングを実施する「IT人材育成支援プログラム」、NPOやNPO支援組織などを対象に、活動運営におけるIT活用を支援する「NPO基盤強化プログラム」、シニアを対象とした初心者向けPC講座、ICT活用の利便性を周知するイベント、ICTの普及に取り組む団体などを対象にした講師スキルアップ講座を実施する「高齢者向けICT活用推進プログラム」、千葉県地域IT化推進協議会を主体として、地域住民を対象に、インターネットを安全に使うための基本的なセキュリティスキルの研修を実施し、地域ITリーダーの発掘・育成を行なう「セキュリティ啓発プログラム」の4項目。
千葉県の森田健作知事は、「千葉県における協働事業の成果はすごい。日本マイクロソフトの樋口社長からもそうした声をいただいた。この協働事業で得たものを、元気な千葉県のために活用してほしい」と挨拶。日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「日本マイクロソフトは、ソフトウェアや、ICTを活用して社会貢献を行ないたいと考えており、その一環として、地域活性化協働プログラムを実施している。これまでにもいくつかの自治体と協働プログラムを実施しているが、千葉県は、他の自治体とのプランを見直ししないとレベルが追いつかないほどの高い成果が出ている」などとして、地域活性化協働プログラムの成果を高く評価した。
千葉県の森田健作知事 | マイクロソフトの樋口泰行社長 | 報告会に出席し、関係者に拍手を贈る森田知事と樋口社長 |
期間中で2,700人がセミナーなどを受講する結果になったという。
IT人材育成支援プログラムでは、次世代ITセミナーに30人、最新技術トレーニングで53人、オンキャンパスセミナーで550人が参加。NPO基盤強化プログラムでは、ITリーダー養成講座では4回に渡り194人が参加。IT活用講座では186人が参加。ITリーダーたちの自発的なアイデアにより講師31人で発足したICT31グループによるキャンペーンイベントも開催されたという。
会場に展示されていた千葉県とマイクロソフトによるICTを活用した地域活性化協働プログラムの成果 |
一般社団法人CATの犬塚裕雅理事長 |
ICT31のリーダー役でもある一般社団法人CATの犬塚裕雅理事長は、「ICTに実際に触れたことがない、あるいは自らの生活にどんな効果があるのかということを理解できていない人たちがまだまだ多い。ICTの効果がよりわかりやすく実感できるような入口を作ることができたと考えている。『ほぅ、なるほどね、私でも』といってもらえるような提案を行なえたのではないかと考えている。また同時にITリーダーたちが養成講座で学んだことを、お互いが共有できるという点、ICTを活用して作業や活動の効率化を図るという点でも効果があった」とした。
高齢者向けICT活用推進プログラムでは、シンポジウム「ICTのチカラでシニアライフをもっと豊かに!」では、156人が参加したほか、初心者向けPC講座では8回に渡り502人が参加。講師スキルアップ講座では、8回の開催で延べ109人が参加した。またセキュリティ啓発プログラムでは、情報セキュリティ講座に289人が参加。地域ITリーダー養成講座には51人が参加したという。
また、高齢者向けICT活用推進プログラムの1つとして行なわれたシニア・ショートムービー・コンテストの表彰式も行なわれた。
60歳以上のシニアを対象に、「千葉県の魅力」をテーマとして、2010年11月12日~2011年1月12日まで、デジカメで撮影した写真を組み合わせて、ムービーメーカーにより制作したショートムービー作品を募集。「県民の日PR用コマーシャル」、「私のお気に入り千葉」、「次世代に残したいもの・伝えたいモノ」の3部門に対して、106点の応募があった。
大賞は、阿曽村孝雄氏の「千葉ヘリテージング100選」。また、マイクロソフト賞は堀江彬氏の「年越し行事」が受賞。部門賞では、県民の日PR用コマーシャル部門では伊地知香代子氏の「千葉再発見」、私のお気に入り千葉部門では王子田良二氏の「旧堀田邸」、次世代に残したいもの・伝えたいモノ部門では、鳥飼英氏の「我孫子市のもう一つの沼~古利根沼~」がそれぞれ受賞した。
シニア・ショートムービー・コンテストで大賞を受賞した阿曽村孝雄氏の「千葉ヘリテージング100選」 | 森田知事から表彰状を受けとる阿曽村孝雄氏 |
シニア・ショートムービー・コンテストの受賞者による記念撮影。千葉県のキャラクターであるチーバくんも駆けつけた | 大賞を受賞した阿曽村孝雄氏 |
大賞を受賞した阿曽村氏は、「明治以降の建築物でも、すばらしいものがある。千葉県においても、100以上のヘリテージ(遺産)といえる建築物があるだろう。私自身、千葉県におけるヘリテージを100カ所選びたいという気持ちを込めたものである。個人的にも撮影したあとに写真を見る機会が少ないため、ムービーメーカーを利用して動画に再構成し、知人と一緒に見るといったことをしている。そうした点でもムービーメーカーの使い道がある。ムービーメーカーには、画像の展開方法が数多く搭載されているので、どれも使ってみたくなるが、作品の完成度を優先して、そうした機能を多用せずに最低限活用することを心がけた」などと述べた。
千葉県 環境生活部・森茂部長 |
千葉県 環境生活部・森茂部長は、1年間に渡るICTを活用した地域活性化協働プログラムを振り返り、「千葉県だけの取り組みでは、ここまではできなかった。日本マイクロソフトから教材の提供や講師の派遣を受けたこと、さらに、NPOとの協業や千葉県情報サービス産業協会との連携など、共働事業開始後に、良い組み合わせができ、ここまでの成果につながった。高齢者向けICT活用推進プログラム、NPO基盤強化プログラムについては、次年度も県として予算を計上して、活動を支援して行くことを決定している。今後も、ICTを活用して豊かな県民生活につなげていきたい」としたほか、千葉県 県民活動・文化課事業推進室の・内山真義室長は、「当初は予定になかったICT31の活動や、シニア・ショートムービー・コンテストが開催されたほか、さらに、プログラム終了後も継続的な活動へとつながったことも、高いレベルといわれる成果の理由だろう」などとした。
ITリーダー養成講座などを2011年度の千葉県の予算措置のもとに継続していく計画を明らかにしたほか、「今後、日本マイクロソフトのNPO Dayを千葉県で開催し、継続的に情報交換を行なえるようなことも考えたい」(千葉県・内山室長)という。また日本マイクロソフトでは、「千葉県での事例を、他の自治体と共有するだけでなく、実際に千葉県のICTリーダーを各地に派遣するといったことで、より密着した連携へとつなげ、成果を全国へ広げたい」とした。
(2011年 3月 8日)
[Reported by 大河原 克行]