PCメーカー6社が2011年の事業方針を説明
~日本コンピュータシステム販売店協会が新春特別セミナー

1月17日 開催



 社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA、大塚裕司会長=大塚商会社長)は、2011年1月17日、東京・内幸町の帝国ホテルで、平成23年新春特別セミナー・賀詞交歓会を開催した。

 同協会の大塚裕司会長は、「2011年4月に、非営利型一般社団法人へ移行することから、今回が社団法人としては最後の新春特別セミナー・賀詞交歓会となる。経済環境は確実に回復しつつあり、大塚商会を例にあげれば、コピー用紙の販売も前年比2桁増になっていることからもそれは明らかだ。2011年はうさぎ年。うさぎのように飛躍する年にしたい。そして、昼寝をしないうさぎにならなくてはならない」などと語った。

 特別セミナーでは、日本電気航空宇宙システムのシニアエキスパートである小笠原雅弘氏が、「太陽系大航海時代の幕明け~『はやぶさ』を継ぐもの~ 」をテーマに講演。NECの「チームはやぶさ」に参加した立場から、「はやぶさは、強靱な冗長性を有する設計と、JAXA、チームが一丸となったチーム力によって達成したもの」などとして、自らの経験を披露。「あかつき」や2014年に予定されている「はやぶさ2」など、新たな衛星ロケットへの取り組みについても紹介した。

挨拶する日本コンピュータシステム販売店協会の大塚裕司会長はやぶさについて講演する日本電気航空宇宙システムのシニアエキスパートである小笠原雅弘氏

●PCメーカー各社のプレゼン

 続けて、新春恒例となっているPCメーカー6社による「2011年の製品・販売戦略プレゼンテーション」では、各社のPC事業のトップが登壇して、事業方針が説明された。

ソニーマーケティング 執行役員ITビジネス部門長の松原昭博氏

 ソニーマーケティング 執行役員ITビジネス部門長の松原昭博氏は、2011年の取り組みとして、IPコミュニケーションとITマネジメントの観点から説明。IPコミュニケーションでは、ビデオ会議システムの技術が、銀行ATMを通じた遠隔金融コンサルティングや、人材派遣会社における教育などに利用されていることを示しながら、「ビデオ会議システムは、出張費の削減やコスト削減といった用途以外でも利用されている。企業においても、ビデオ会議システムとVAIOを組み合わせることで、外出先でもハイクオリティの画質を維持しながら、ビデオ会議を利用できるようになる」とした。

 また、ITマネジメントの領域では、「一部のネットブックを除いた2009年秋モデル以降のすべての製品に搭載しているVAIO Careと、日立のIT Operations Directorとの連携によって、中小企業向けクライアントPCにおいて、より強固なセキュリティ対策を実現できる」などと説明した。

 VAIO CareとIT Operations Directorの組み合わせでは、HDD劣化やバッテリ劣化状況などを把握できるといった独自の機能も提供できるという。

 また、「タブレットについてはここで詳細を言及するわけにはいかないが、ソニーは、PCをスタンドアロンとしての提供だけでなく、ユニークなソリューションとして提供していきたい。今年のソニーに期待してほしい」などとした。

ソニーの講演より
東芝 執行役上席常務 デジタルプロダクツ&ネットワーク社社長の深串方彦氏

 東芝 執行役上席常務 デジタルプロダクツ&ネットワーク社社長の深串方彦氏は、2010年にノートPC発売から25周年、累計1億台を出荷した実績を示しながら、「25周年モデルとして4機種を投入したほか、教育用タブレットPCやAndroid搭載タブレット、3DノートPC、キッズPCといった製品を発売した」などと1年を振り返った。

 また、「企業においてはサーバー運用コストの削減が課題だったが次のIT投資はクライアント端末。それに向けて東芝は、汎用部品を活用して低価格化を図ったRX3シリーズのアーキテクチャーとソフトウェアマスタを活用した14型社内向けモバイル、15型デスク据え置きの製品を近々投入する。さらに、仮想シンクライアントであるSV-PCにより、大規模サーバーを不要としたコスト削減と、従来のシンクライアントの課題であった画面表示の高速化を実現できる」などとした。

 一方で、タブレットPCについては、既存システムとの親和性が高く、幅広い業務に対応するWindows 7搭載の製品と、ウェブベースのシステムを活用した、より機動的な業務に特化したAndroid搭載製品について言及。「今年の早い時期に投入する」とした。また、CESでも参考展示しグラスレスた3DノートPCについては、「流通、教育、遠隔医療といった分野での応用が期待できる」と語った。

 深串氏は、さらに「こうした数々の製品群によって、あらゆるユーザーニーズに応えたい。今年はうさぎのように大きな耳で顧客の声を聞き、うさぎのように目が真っ赤になるように仕事に励みたい」として会場の笑いを誘った。


東芝の講演より
レノボ・ジャパン 執行役員 エグゼクティブディレクターの留目真伸氏

 レノボ・ジャパン 執行役員 エグゼクティブディレクターの留目真伸氏は、日本市場において5四半期連続で最も大きな成長を遂げているPCメーカーであることを示しながら、「製品ラインアップ、ブランディング戦略、パートナービジネスによるシンプルな戦略といったことが功を奏した。大和研究所による日本のモノづくりを中心に先進国、新興国の強みを生かしたイノベーションを起こし、オペレーションの効率化も強みであり、日本における本社および研究開発拠点の移転によって、それをさらに加速することができる」などとした。

 また、マイクロソフトとの提携によるエンハンスド・エクスペリエンス機能による優位性を訴求。AndroidとWindowsのスレートPCを投入する計画や、タブレットとノートPCのハイブリッド型製品の投入などについても言及した。

 「タブレットPCについては、個人向け、法人向けともに開発を進めている。日本でも近々、ローンチする予定だ」とし、「新たなビジネス提案により、さらに日本を元気したい」とした。


レノボの講演より
NEC 取締役執行役員常務の國尾武光氏

 NEC 取締役執行役員常務の國尾武光氏は、「NECが、グループビジョンで掲げる『人と社会にやさしい情報社会』を実現するには、C&Cクラウドと環境がキーになる。そして、NECのコアコンピタンスは、ITとネットワークの融合、ミッションクリティカルシテスムのノウハウの蓄積、ユビキタス技術、環境技術にある」と前置きし、「そうしたコアコンピタンスを生かしたクラウド端末として、昨年11月からクラウドコミュニケーターのLifeTouchを市場投入している。PCと携帯電話の中間領域の製品が求められており、そこに、見やすさと持ち運びやすさを実現することで、あらゆる人のあらゆる生活シーンに入り込むことができると考えている。LifeTouchは、CESで発表した2画面端末を含めて、Androidならではのカスタマイズ性の高さを活かすことができる。そこにNECのアセットを活用したソリューションによって、それぞれの企業に適した製品として提供していくことになる」とした。

 さらに、「環境への取り組みについては、これまで取り組んできた生産、廃棄、物流といった領域だけに留まらず、オフィスまるごとエコの提案により、運用の領域でも省エネ化を図る。例えば、離席センサーを活用することで、会議などで席を離れる際の電源をカットでき、それだけで約6割も消費電力を削減できる」などと語った。最後にデジタルサイネージについても言及し、羽田空港の国際線ターミナルに約500台の大型ディスプレイを導入した実績を紹介した。


NECの講演より
日本ヒューレット・パッカード 執行役員の那須一則氏

 日本ヒューレット・パッカード 執行役員の那須一則氏は、グローバルでの売上高が10%成長したことや、7~9月の米IDCの調査において主要分野で1位ないしは2位を獲得している実績を紹介。「ビジネスモデルの進化、テクノロジーの進歩、働き方の変化といった大きなトレンドの中で、ヒューレット・パッカードは、Instant-On Enterpriseというコンセプトを定義し、ビジネスニーズの変化に瞬時に対応できるように企業を支援していく。また、2001年以降、45社を買収し、ポートフォリオを拡大してきたのも、多様化する顧客ニーズに対応するためのものだった。データセンターからオフィスソリューション、幅広いストレージ製品、ネットワーク製品、そしてコンシューマ向け製品、スマートフォンまでを取り揃えている」などとした。

 また、「今年はWindows 7の置き換え、新たなモバイルデバイスの活用、そして、端末の仮想化が増えていく。今後注目を集めるであろうシンクライアントに対しても、ヒューレット・パッカードは、フルポートフォリオで対応できる」などとした。


ヒューレット・パッカードの講演より
富士通 執行役員パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏

 富士通 執行役員パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏は、「来るべきヒューマンセントリックなインテリジェント・ソサエティに向けたフロントエンドの役割を果たすのがPCである。PCにおいては、研究所からコンサルティング、サーバー、ソフト、半導体までを持つ富士通の総合力と、企画、デザイン、設計・開発、生産、サポートまでをすべて国内で行なえるMADE IN JAPANの強みが発揮されることになる」とし、「技と繊細さによる『匠』と、いち早く先進技術を搭載し、スピーディーにカスタマイズ対応を図ることができる『疾風』(はやて)によって、それを実現する」などとした。

 また、エコ部材の採用や、人感センサーによる自動表示オフ機能を採用したエコ対応PCや、遠隔操作によるHDDデータの消去を行なう「CLEARSURE(クリアシュア)」、CESで参考展示したスレート型PCなどを紹介。「長年に渡る北米市場におけるタブレットの実績もあり、経験は豊富。一味違うタブレットPCを投入する」とした。


富士通の講演より

 一方、午後5時から開催された賀詞交歓会では、経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の東條吉朗課長、NECの遠藤信博社長が来賓として祝辞を述べたほか、社団法人コンピュータソフトウェア協会会長であり、オービックビジネスコンサルタント社長の和田成史氏が乾杯の音頭をとった。また、感謝状の贈呈や、新規入会会員の紹介などが行なわれた。

来賓の祝辞を述べる経済産業省商務情報政策局情報処理振興課・東條吉朗課長来賓として祝辞を述べるNECの遠藤信博社長乾杯の音頭をとる社団法人コンピュータソフトウェア協会の和田成史会長(オービックビジネスコンサルタント社長)

(2011年 1月 18日)

[Reported by 大河原 克行]