社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は、1月22日、東京・内幸町の帝国ホテルで、平成22年賀詞交歓会・新春特別セミナーを開催した。
午後1時から開催された新春特別セミナーでは、テレビ東京報道局報道番組センターの福田裕昭チーフプロデューサーと、日本経済新聞社編集局政治部次長兼編集委員の秋田浩之氏が、「2010年・時代はどう動くか~二人のスペシャリストが最新の政治経済動向を徹底分析~」と題して講演。さらに、トレンドマイクロの代表取締役会長であるスティーブ・チャン氏が、「クラウド時代におけるITインフラストラクチャーの変革」をテーマに講演した。
午後3時40分から行なわれた「2010年 わが社の製品・販売戦略」では、富士通、ソニー、東芝、レノボ・ジャパン、NEC、日本ヒューレット・パッカードのハードメーカー6社が、2010年のPC事業戦略について、プレゼンテーションを行なった。
●2010年 わが社の製品・販売戦略2010年 わが社の製品・販売戦略において、最初に登壇したのは、富士通パーソナルビジネス本部の齋藤邦彰本部長。
「富士通は、人に優しいヒューマンセントリックコンピューティング社会の実現を目指している。現状の人があわせる形態から、ITが人にあわせる形態へと変化させる。それを実現するのが、PCや携帯電話などのフロント技術と、ネットワークを中心としたクラウド技術である。人を中核として、センサー、端末、ネットワーク、サービスが融合することで新たな価値の創造が可能になる。これからもみなさんとともに、長きに渡り、すべてのお客様に最適なソリューションを提供していく。期待してほしい」などとした。
富士通パーソナルビジネス本部の齋藤邦彰本部長 | 富士通のヒューマンセントリックコンピューティングへの取り組み |
ソニーマーケティングITビジネス部門の松原昭博部門長は、「4月1日から、品川にあったPCの設計、製品企画の機能を長野に移転し、製造、サービスまでの一気な通貫体制とする。さらなるスピードアップと、顧客に評価される製品を作る」と前置きし、「今年は2つの大きなトレンドがある。通信の進化に呼応した製品の投入と、家庭内における3Dの活用である。VAIOは、この2つに力を注ぎたい。春モデルは、価格ゾーンを含めてラインアップを拡充しており、近接無線転送技術であるTransferJetの搭載を実現したほか、ビジネス向けモデルでは、かかりつけの医者のような機能を果たすVAIO Care ASSISTボタンによって、TCOおよびライフマネジメントコストを低減することができる。ソニー社内でもすでに数万台のビジネス向けVAIOが稼働しており、高い評価を得ている」などとした。
ソニーマーケティングITビジネス部門の松原昭博部門長 | VAIO Care ASSISTボタンはTCO削減を実現する |
東芝 PC&ネットワーク社社長・深串方彦執行役上席常務は、過去の主力製品の広告を映像で紹介しながら、「2010年は、東芝が世界でラップトップPCを出荷してから25年目の節目の年である。その間、世界初の技術を採用した製品を投入し続けており、ノートPCの累計出荷は8,500万台を突破。この8,500万人の声を反映したノートPCを作り続けたい。2009年は、日本においても各調査機関で、ノートPC部門で第1位のシェアを獲得しているほか、2つの環境賞を受賞しており、高い技術力によって地球温暖化防止にも取り組んでいきたい」としながら、「今年はみなさんにあっと驚いてもらえる25周年記念モデルを投入したい。また、クラウドや仮想化の潮流に対しても取り組んでいく。サーバーレス環境の提案を進める一方、クラウドや仮想化に最適なPCを投入していくほか、2.5インチHDD事業、SSD事業への投資をさらに加速することになる」とした。
東芝 PC&ネットワーク社社長・深串方彦執行役上席常務 | クラウドの潮流に対して東芝の技術を活用して最適なPCを投入する |
レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン代表取締役社長は、「2009年のレノボは、プロダクトラインの拡充、価格戦略の見直し、ハードウェアのマーケットカバレッジ戦略の強化、パートナーアライアンスの強化、レノボジャパンへの投資を増やすことに取り組んだ。その結果、第3四半期は対前年同期比35.5%増となり、全ベンダーのなかでトップの成長率となったほか、出荷台数は4期連続でプラス成長となった。2010年4月には、六本木ヒルズ森タワーに本社を移転する。2010年は、業務のスピードアップ、オペレーションの効率化、納期の改善、一元化した在庫管理に取り組んでいく。今年はパーフェクト10の1年を目指す」とした。
レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン代表取締役社長 | 2010年4月には本社移転することを発表した |
NECの大武章人取締役執行役員専務は、「オフィス領域でも環境規制がはじまっている。この流れに技術革新できちっと対応していくことが大切である。NECは、『オフィスまるごとエコ』の実現に向けて、省エネICT機器の投入だけでなく、オフィスファシリティやワークスタイルの変革などの観点からも対応していく。環境の視点からでもリーディングカンパニーになることを目指し、そのために一歩先んじた製品を投入する」とした。また、「一部報道もあり、NECはスパコンをやめたと思われているようだが、PC同様、スパコンも引き続きやっていく」とも語った。
NECの大武章人取締役執行役員専務 | NECが投入する省エネICT機器の数々 |
日本ヒューレット・パッカードの那須一則執行役員は、「コンパックと合併してから約6年を経過したが、この間、日本においては、x86サーバー、デスクトップPC、ビジネスPC、ノートPCのいずれの分野においても、9%~11%もシェアを伸ばしている。2010年もとことんやる。日本では発売していない国内未発表製品も今年は投入していきたい。CESではSlate PCを発表しており、これを発売するほか、昨年秋に電源を入れるだけでインターネットに接続するクラウド専用端末を発表したのに続き、流通業向けPOSクライアント、学校向けのインターネット専用端末を今年は発表する。円高のメリットも提供できるだろう」などとした。
日本ヒューレット・パッカードの那須一則執行役員 | 日本HPが投入を予定する新たな製品群の一例 |
●2010年で景気回復を目指す
一方、新春セミナー終了後には、平成22年賀詞交歓会が開催され、会員会社など業界関係者約350人が参加した。
JCSSAの大塚裕司会長(=大塚商会社長)は、「2009年は厳しい1年だったが、6月を底として潮目が変わってきたという印象がある。80万社の顧客を持ち、そのうち8割を中小企業が占める大塚商会の様子を見ても、1社あたりの平均売上高が回復している。過去2年ほど、繰り返し2000年問題需要で導入されたシステムの買い換え需要があるといってきたが、それが顕在化せずに、狼少年のようになっている。だが、今年の下期には景気がよくなり、本格的な2000年問題の買い換え需要が出てくる。また、2000年当時には、PCにWindows XPが搭載されていたものの、Pentium Dの頃であり、CPU 1個あたりの消費電力は、60~100Wもあった。最新のCPUではその10分の1から20分の1程度となっており、そうした環境の観点から買い換えるといった動きも見られてくるだろう。昨年は100年に一度の不況といわれたが、それが本当ならば、今年は不況はやってこない。リーマンショックも毎年はやってこない。今年は間違いなくよくなる。この上期から業界全体が元気になるように、また日本を元気にする先駆けとなるように努力したい」などとした。
賀詞交歓会で来場者を迎えるJCSSA協会幹部 | JCSSAの大塚裕司会長 |
また、来賓として、経済産業省商務情報政策局情報処理振興課課長・東條吉朗氏が挨拶。「JCSSAには、平成22年度予算案や税制施策に関して示唆を賜ったほか、保守運用ガイドラインに関するモデル契約や、クラウド、人材育成、中小ベンチャー支援などに関して、ユーザーに近い視点で協力を得た。2010年の景気回復には、ITの力が必要。日本津々浦々の生産性向上にITを活用してもらいたい。みなさんの役に立つ、意味のある成長戦略を組んでいきたい」とした。
同じく来賓として登壇したNECの矢野薫社長は、「そろそろ底を打ったと感じるが、一方で、日本がマイナス成長のなかで、中国は8.7%もの成長を遂げているように、世界の景色はずいぶん変わってしまった。新興国はどう変わるのか、その中で世界はどう変わるのかが第1の視点。2つ目には、IT業界にとって、クラウドにどう取り組むかが重要。そして、3つ目には環境に対する取り組みが重視され、ITを使ってのエコ、ITそのもののエコが重視される。2010年は庚虎(かのえとら)。前回の庚虎は、1950年であり、朝鮮戦争後の日本の復興期にあたり、新たな道を歩み始めた時期である。2010年は、新たな歩みをはじめていく年であり、IT業界が新しい日本、新しい世界を作る」などと語った。
乾杯の音頭をとった社団法人コンピュータソフトウェア協会会長の和田成史氏(オービックビジネスコンツテルタント社長)は、「ソフトを開発する企業が集まったコンピュータソフトウェア協会と、顧客にシステムを販売する企業が参加している販売店協会は、コラボレーションの関係、車の両輪の関係にある。今後、64bit、クラウドという新しい波が訪れており、新たな情報化社会が日本の成長を牽引するだろう」などとした。
経済産業省商務情報政策局情報処理振興課課長・東條吉朗氏 | NECの矢野薫社長 | 乾杯の音頭をとった社団法人コンピュータソフトウェア協会会長の和田成史氏 |
(2010年 1月 25日)
[Reported by 大河原 克行]