丸紅インフォテックが米SYNNEXの傘下へ
~ロバート・ファン社長が買収後の利益改善を宣言

代表取締役社長 ロバート・ファン氏

12月22日 開催



 PCを中心としたハードウェアやソフトウェア、デジタル家電などの電子機器の卸売や関連サービスを行なっている丸紅インフォテック株式会社は12月1日、米国を中心に卸売をしているSYNNEXグループの傘下に入り、シネックスインフォテック株式会社として発足した。

 新たに発足したシネックスインフォテックは卸に関する業務をほぼ継続する。PC関連の取引先メーカーとしてはNECや富士通、日本HP、日本エイサー、東芝、富士通、ベンキュー ジャパン、バッファロー、アイ・オー・データ機器、キヤノン、エプソン、ナナオなど、馴染み深いメーカーを幅広く手がけている。売上高は2009年4月~2010年3月期で1,088億円。

 一方SYNNEXは、HPやAcer、Panasonic、Lenovo、Seagate、Microsoftなど、100以上のIT OEMサプライヤーから15,000種以上の製品を調達し、北米、カナダ、メキシコにおける15,000以上の小売業者やシステムインテグレーター、再販会社と提供している。主に北米が売上の大半を占め、2009年度売上高の98%を占める。(日本企業との比較では)ITに関連する卸業では異例とも言える、92四半期(23年間)連続の黒字を達成している。2008年12月~2009年11月までの売上高は77億1,900万ドル。

 SYNNEXは今回、丸紅インフォテックの買収と統合により、丸紅インフォテック時代のベンダーとの関係を維持しつつ、SYNNEXのノウハウを活かして、企業体制を見直し、利益の改善を図る。なお、過去にSYNNEXの子会社であった日本法人のシネックスは、2005年にMCJの傘下になっている。

SYNNEXは92四半期連続の黒字を達成SYNNEXの売上の推移SYNNEXの利益の推移

●コストダウンを最優先とした利益改善、それによって付加価値を提供する

 22日に都内で開かれた記者会見では、シネックスインフォテック 代表取締役社長のロバート・ファン氏が、買収の経緯や今後の展開について語った。

 ロバート・ファン氏は1945年に台湾で生まれ、1961年に来日。その後九州大学工学部を卒業し渡米、1979年にはAMDにも入社した経歴を持つ。1980年には、SYNNEXの前身であるCOMPAC Microelectronicsを創業した。

ロバート・ファン氏

 ファン氏は冒頭で、「この40年間、日本とアメリカ両方のITに関する卸業を見てきたが、特にこの20年間、日本企業の強さが落ちてきたと実感している。日本人は、資産や技術力、ルールを守るといった文化があるが、IT業界はほかの業界と比較して変化のスピードが速く、日本のやり方では迅速に対応できず、世界のIT業界から大きく遅れている。特に日本は、部下から上司に意思疎通するまでに多くのプロセスを踏まなければならない(ハンコのリレーが続く)が、IT業界では意思決定の迅速さこそが勝負である」と問題を指摘した。

 また、「日本の企業はリスクに対する姿勢も弱い。例えば韓国のSamsungは、日本の大手家電メーカー6社の合計以上の収益を上げているが、それはリスクに対する投資に積極的であるからだ。日本の企業も同様に、積極的なリスク投資に追従していく必要がある」と説明した。

 一方、ITの卸業に焦点を絞ると、効率とコスト削減こそが最大の武器だと語る。買収からすでに約3週間が経過しているが、ファン氏はこの間に丸紅インフォテックの社員70%と直接ミーティングを行ない、声を聞いた。「声を聞いて理解したことは、“ルール”によって効率が30%ほど下がっている点ということだ。ほんの一例を挙げると、仕入れ先の挨拶だ。現在、仕入れ先への挨拶は実際に訪問して行なうが、我々の仕入れ先メーカーは200、小売店は2,500もある。1日に2社しか挨拶できないのでは、効率が悪い。だがこれは日本独特のニーズでもあり、今後は継続していく。しかし、アメリカでも導入が進んでいる電話会議やビデオ会議システムの導入などにより効率化を図り、ハイブリット化していく必要がある」と述べた。

 物流システムそのものの改善にも触れ、「例えば1つの箱に1つの商品を入れても、2つの商品を入れても、箱の大きさが変わらなければコストは変わらない。競合他社では1つしか入れないところを、我々は2つ入れることを考える。1,000億円の売上も1円から始まる。その1円を取るかどうかが、卸における成功のカギだ」と述べ、徹底したコストダウン体制を取っていくと強調した。

東京都江東区にあるシネックスインフォテック本社のオフィス

 また、コスト削減のメリットについても挙げ、「丸紅インフォテックの買収で、業務体制を改善することにより、コストを30%減らす。これによって、販売店のニーズにあった付加価値を製品に付けることができるようになる。過去に生き残った商社は、製品に付加価値を提供できたところだけであり、我々も付加価値を提供していく」と述べた。

 買収後については、「リストラは一切行なわない。業務のプロセスの改善だけで、コストを30%改善する。それによってコストダウンして、付加価値の高いところにリソースを持っていく。丸紅インフォテックはオールブランドの会社であり、ブランド的に強い人々をリクルートできたことは最大の強みである。レースにおいて、車の性能が良いというのも当然だが、良いドライバでないとレースには勝てない。SYNNEXの卸しビジネスに対する経験とノウハウ、丸紅インフォテックの優れた人材とサプライチェーンを合わせることで、成功に結びつく」と語った。

(2010年 12月 22日)

[Reported by 劉 尭]