レノボ、ThinkVantageの機能と特長を解説

麻生純一氏

9月7日 開催



 レノボ・ジャパン株式会社は7日、ノートPC「ThinkPad」シリーズに搭載されている「ThinkVantageテクノロジー」についての記者説明会を都内で開催した。

 冒頭では、同社 研究開発TVT・ノートブック ソフトウェア開発担当 開発部長の麻生純一氏が挨拶。「ThinkVantageは、ThinkPadを使うナレッジワーカーに求められる生産性の高さをさらに高めるためのものとして位置づけ開発されたもの。我々のソフトウェア開発部門では、WindowsやBIOSに関する基盤ソフトウェアの最適化、セキュリティに関する先進的なソフトウェア、エンドユーザーにフレンドリーなUIを持つソフトウェアの開発などを行なっているが、ThinkVantageはこの集大成であり、トップツーボトムのThinkPadに搭載されている」とした。

ソフトウェア開発部門での取り組みThinkVantageはトップツーボトムで搭載されている

●BIOSやセキュリティ面
宮本保子氏

 続いて、5つの代表的な機能の開発に携わった開発者による機能解説がなされた。まず、BIOSレベルから提供されているセキュリティ機能について、第一BIOS開発 主任SWエンジニア 宮本保子氏が説明。ThinkPadにおいては、エンドユーザーにとってシンプルでわかりやすく、そしてIT部門や管理者にとって、セキュリティポリシーへの適合と容易な監査性を提供できるとした。

 エンドユーザー向けでは、指紋センサーによるパワーオンを紹介。指をスワイプするだけで、電源の投入からハードウェアパスワード認証、そしてWindowsログインを一括して行なえる便利さを訴えた。

 一方、BIOS設定についても、1台ずつ設定することなく、管理者が一括スクリプトでBIOS設定を配布して設定できる機能を設け、一元化を目指した。また、パスワードの一括管理や、インテルのAnti-Theft(盗難防止)機能などにも対応し、管理者が容易に社内のセキュリティポリシーを適用させられることを紹介した。

指紋センサーを指でスワイプするだけでPCがONになり、ハードウェアパスワードとWindowsパスワードを認証Windows上からBIOSの設定が可能で、管理者がポリシーを配布できる
パスワードをサーバーで一括管理できるIntelのAnti-Theft機能にも対応し、リモートで電源をOFFにできる

●Lenovo Enhanced Experience

 第三TVT開発 Microsoftプロジェクト・マネージャーの柴谷淳治氏は、Windows 7モデルに搭載されている「Lenovo Enhanced Experience」機能について解説。Windows起動時のサービス起動状況とCPU使用率を分析し、BIOSとドライバを最適化、さらにOSレベルにまで手を入れることで、起動時間を約半分に短縮することができたという。

 具体的な方法は紹介されなかったが、サービスにおいては起動方法や順序を改善することで起動時間の短縮を図る。一方デバイスドライバなどは、「場合によっては書き直しが生じる」という。また、OSへのテコ入れは、Microsoftと協業して、フォントキャッシュファイルの読み込み動作を改善することで、速度向上を実現したという。

柴谷淳治氏Lenovo Enhanced Experienceによる起動時間の短縮3種類の改善を施した結果
改善その1。CPU使用率を分析し、BIOSとドライバを最適化サービス起動状況を分析し、起動方法を変更するHDDの使用状況を解析し、OSレベルで改善を施す

●VoIP
塚本泰史氏

 近年増えているVoIPアプリケーションへの最適化について、第一TVT開発 主任SWエンジニアの塚本泰史氏が説明した。

 2009年秋モデルから搭載されている「ThinkVantage Communications Utility」は、すべてのVoIPアプリケーションに対応できるソフトウェアで、Fn+F6キーで起動する。離席時などにカメラがOFFになっているアイコンを相手に写す「プライバシー機能」や、キーボードタイプ時に発生するノイズを、キーストロークを認識してマイク音量を自動的に下げる機能などを紹介した。

VoIPアプリケーションへの対応Fn+F6キーで起動するCommunications Utility
一時的に相手のカメラにカメラがOFFになっているアイコンを表示するプライバシー機能キーストロークを検出し、マイクの音量を下げることでキータイプノイズを軽減する

●バッテリなどの省電力機能

 ThinkPadに搭載されている「省電力マネージャー」について、第三TVT開発 主任SWエンジニア 今井拓水氏が説明。従来のバージョンから複雑なUIを改善し、スライダーで省電力設定を直感的に行なえるようにしたほか、スタートアップ/シャットダウン/ログオフ/スクリーンセイバー時などに画面の明るさを抑えてバッテリ消費を抑える機能などを追加したという。

 また、バッテリの使われ方を分析し、実容量より少ない容量をOS上から100%として認識させ、実容量のフル充電をしないことでバッテリ寿命を伸ばす「デュアルモード・バッテリ」機能を搭載させた(ただし対応バッテリ利用時のみ)。これにより最大で寿命を1年から3年に延長できるという。

 さらに、画面を閉じても一定時間スリープに移行しないことで、ネットワークやログイン状態を保持する「簡易復帰機能」を搭載。会議室への移動時などに有用とした。簡易復帰機能利用時は、一部プロセスを止めるので、HDDやファンの回転もOFFにし、不意な騒音や熱を抑えられるという。

今井拓水氏実容量より少ない容量を100%として認識させ、バッテリ寿命を伸ばす機能
デュアルモードにより、電池寿命を最大3年伸ばせるというネットワーク接続などはそのままに、プロセスを止める簡易復帰機能

●Access Connections

 最後に、第一TVT開発 Advisory SWエンジニアの長沢達美氏が、ネットワーク接続ユーティリティの「Access Connections」について解説。

 中でも強調されたのがWi-Fi、WiMAX、モバイルブロードバンド、そのほかの接続といったさまざまな接続方法への対応で、1つのユーティリティでシームレスな通信環境を実現できるとした。

 特にWiMAXについては、切断時に自動的に再接続する機能や、信号強度の変化を監視し、不安定な環境においてもできるだけ接続を維持する接続性を強調した。

長沢達美氏さまざまな無線規格をサポートするAccess Connections
Access Connectionsから直接WiMAXへサインアップできるWiMAX切断時に自動的にリトライを試みる

 発表会の最後で、麻生氏は、「今後もThinkVantageは、エンドユーザーにとって使いやすく有益で、なおかつ管理者にとって管理しやすく、TCO削減につながる機能を強化し、進化していきたい」と述べた。

(2010年 9月 7日)

[Reported by 劉 尭]