米NVIDIAは17日、先だって発表された「Fermi」アーキテクチャベースのプロフェッショナル向けグラフィックスソリューション「Quadro」シリーズの国内発表会を開催した。
ワールドワイドでの発表は、7月の末に開催されたSIGGRAPHで行なわれており、製品の仕様などは既報の通り。最上位の「Quadro 6000」は448基のSPと6GBのGDDR5を搭載し、ジオメトリ性能は前のモデルの「Quadro 5800」に対し5倍に達する。
また、Fermiベースのアーキテクチャでは、GPGPUの演算性能が強化されており、LINPACKによるベンチマークではクアッドコアのNehalem Xeonに対して8倍の性能を実現するという。
新Quadroのラインナップ。QuadroPlexはQuadro 6000を2枚内蔵する外付けボックス | 会場に展示されていたエルザジャパンのQuadro 5000 | 同Quadro 4000 |
発表会では本社Professional Solutions GroupでDirector of Marketingを務めるDanny Shapiro氏が製品を解説した。
過去記事にもある通り、Shapiro氏は「Quadroは単なるビデオカードではなく、それを取り巻く開発環境、エンジニア、企業向けサポートなども含む包括的なグラフィックソリューションである」と説明。
たとえば、同社は物理演算エンジンの「PhysX」、シーン管理エンジンの「SceniX」、プログラマブルシェーディングエンジンの「CgFX」、シーンスケーリングエンジンの「CompleX」、レイトレーシングエンジンの「OptiX」と言った、高度かつ便利なソフトウェアを無償で提供しており、Quadroユーザーはこれらを使って、効率的に作業/開発が行なえるとしている。
Quadroはハードウェアを核とし、開発環境なども含んだ一連のソリューションであるとShapiro氏 | NVIDIAはいくつかの用途に向けたソフトウェアエンジンを無償で提供している |
新Quadroについては、Fermiベースになったことで、これまでの主用途であったビジュアライゼーション(可視化)だけでなく、コンピュテーション(演算)も1つのカードで実行できるようになったと紹介。
実際、RTTが開発する自動車用設計CADソフト「RealFluid」では、モデリングだけでなく、空力のシミュレーションまでリアルタイムに行なうことが可能で、自動車開発にかかる時間やコストを大幅に削減できるとした。
また、映画「アバター」においては、特殊効果プロダクションのWetaがQuadroを使うことで、従来の100倍近い高速化を果たした事例を引用した。
RTTのRealFluidは、自動車のモデリングとシミュレーションが同時に行なえる | 映画アバターはQuadroを使うことで特殊効果の作業効率が100倍に向上 |
さらに同じくアバターで使われたテクスチャペイントソフト「Mari」を開発する英FoundryのプロダクトマネージャであるJack Greasley氏が登壇。同ソフトを実演しながら、Quadroの大容量メモリとCUDAによる演算能力により、作業がよりスムーズになり、これまでできなかったGPUによるカラーマニピュレーションも可能になったことなどを説明した。
最後にNVIDIA日本法人Tesla Quadro事業部プロフェッショナルソリューションマネージャの福田敦彦氏が国内での販売戦略を説明した。
同社はワールドワイドでは、既存市場における販売数の拡大と、新市場の開拓を2つの柱とするが、それにあたり日本では「QPP」(Quadro Preferred Partner)と呼ばれるパートナー認定プログラムを用意し、アプリケーション、SI、OEMの各分野で認定パートナーと共同で拡販を行なっていく。
OEMパートナーとしては、デル、日本ヒューレットパッカード、レノボ・ジャパン、NEC、富士通などのほか、マウスコンピューター、サードウェーブ(ドスパラ)、ユニットコム、ツクモなどが名を連ねる。
FoundryのJack Greasley氏 | 同社のテクスチャペイントソフトMari | NVIDIAの福田敦彦氏 |
日本のQPP認定パートナー | 会場にはパートナーの製品も展示 | Quadroは3D VisionもRF対応のProバージョンにアップグレードされている |
(2010年 8月 17日)
[Reported by 若杉 紀彦]