シャープなど13社が「手描きコンソーシアム」を設立
~Appleなどに対抗しうるサービスの創出を目指す

ユニファイ・リサーチの五内川拡史氏

4月19日 開催



 民間企業13社と大学研究者によって4月12日に、手描き入力を利用したコンテンツおよびサービスの開発/普及を目指す「手描きコンソーシアム」が設立された。これに合わせて19日に都内で、報道向けに説明会が開催された。

 現時点での会員企業は、学研パブリッシング、シャープ、ゼンリン、デジタルハリウッド、日本テレビサービス、ロケーション、ウィルコム、ブイキューブ、グローバルエンジニアリング、BOOST、スマートジャパン、イートライジャパン、ユニファイ・リサーチの13社で、学術会員として東京大学、早稲田大学の研究者も参加する。説明会では、事務局を務めるユニファイ・リサーチ代表取締役社長の五内川拡史氏が説明にあたった。

 団体設立の背景として五内川氏は、欧米諸国がタイプライターに由来するキーボード入力文化であるのに対し、日本では古くは鳥獣戯画から現代の漫画やアニメまで手描きに慣れ親しんでいるという構図があるが、ここへ来てタッチパネル標準搭載の時代がやってきたことを挙げた。

 これまでもタブレットPCなどは存在していたが、ニッチなものでしかなかった。しかしAppleのiPadやiPhoneに代表されるような電子書籍向け端末やスマートフォンにはタッチパネルが標準となり、手描きが見直される時代にさしかかっているという。

 手描きは、単に日本人になじみ深いだけでなく、誰でも理解できるのでデジタルデバイドが解消される、アナログ的表現が可能になるといったメリットもある。ひいては、手描きが普及することで、Webや、サービス、文化までも変えていく可能性があると同氏は示唆する。

デジタルにも手描きの時代が到来手描きによる恩恵

 一方で、Appleの場合のようにハードウェアやソフトウェアが統一されないこと、技術的な成熟度、アイディア不足、パートナーがいないといった課題もある。そこで、多種多様な企業が集まって、サービスをワンセットで提供する場が必要であるとして、今回のコンソーシアム設立に至った。

 その目的は、デジタル手描き技術の普及と、手描きサービス/アプリの創造を後押しするため、業種業界の垣根を越え、産官学と専門家が結集する中核の場所とコミュニティを提供し、技術情報の収集/発信活動、交流/アライアンス活動、新規事業支援活動を行なうこととなっている。

 また、デジタル分野における新たなユーザーエクスペリエンスを実現し、日本ならではの繊細かつ高度な手描き文化を世界に発信して、競争力ある新ビジネスの創出と産業界の革新に寄与するとしており、海外展開も視野に入れている。

 標準化技術を作ってからでは、欧米に対して後手後手に回ってしまうため、まずは事業創出ありきで動き、その後に必要であれば標準化なども行なっていく。目標としては、今後1年間で会員数を30~50社程度にまで増やすとともに、活動成果として、具体的サービスの立ち上げを目指す。

コンソーシアムの活動方針と役割手描きの具体例として紹介されたウィルコムの現行サービスである「手描きチャット」リアルタイムで手描きデータをケータイ端末やPCとやりとりできる

(2010年 4月 19日)

[Reported by 若杉 紀彦]