マイクロソフト、ITベンチャー支援を強化する新プログラムを開始

マイクロソフト株式会社 最高技術責任者 加地佐 俊一 氏

12月1日 発表



 マイクロソフト株式会社は1日、従来から実施しているITベンチャー企業向け支援活動を強化すると発表。経営などビジネスに関するスキルアップのための講座「マイクロソフト イノベーションアカデミー」と、マイクロソフトの最新技術サポートと検証環境を無償提供する「早期採用支援」の2つを、2010年1月から東京・大手町のマイクロソフト大手町テクノロジーセンターで実施する。

 マイクロソフトの最高技術責任者・加地佐俊一氏は同社がこれまで実施してきたベンチャー企業支援策を次のように説明した。

 「これまでマイクロソフトでは、スタートアップ企業を支援する『Microsoft BizSpark』、自治体と協働でベンチャー企業の技術およびマーケティングを支援する『ITベンチャー支援プログラム』、優れたベンチャー企業を表彰する『マイクロソフト イノベーション アワード』を提供してきた。2007年にスタートしたイノベーションアワードの第1回目の受賞企業ルナスケープさんは、海外に支店を設けるなどグローバルな活動を始めている。2003年にスタートしたITベンチャー支援プログラムは、すでに16自治体と提携関係を結び、さらに本日4つの自治体とのプログラム実施を発表している。昨年(2008年)11月に発表したBizSparkは国内で900パートナーとの連携が実現し、さらにベンチャー企業を支えるベンチャーキャピタルや自治体などのネットワークパートナーの数も順調に増加している。また、3年前に調布に開設したマイクロソフトイノベーションセンターは10月6日付けで大手町に移転し、内容も拡充し、オンプレミスだけでなく、プライベートクラウド、パブリッククラウドとシームレスに連携する環境を提供するための施設となっている」。

 加地佐氏の指摘したITベンチャー支援プログラムの実施自治体として、12月1日付けで静岡市、福岡市、宮崎県、山形県の4つの自治体との連携が発表されている。

 新たにスタートするITベンチャー企業支援策は、これまで提供してきた支援策の内容をより深くしたもので、いずれも大手町のイノベーションセンターで提供される。

 「イノベーションアカデミー」は、受講費は無料で、事業計画や資金計画といった経営に関するスキルと、最新技術に関する研修を実施する。

マイクロソフトがこれまでに実施してきたITベンチャー支援策これまでのITベンチャー支援成果
新しく2つの施策を加えた新しいベンチャー支援体制2009年1月から提供される2つの新ベンチャー支援策

マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ビジネスインキュベーション 長井伸明 シニアマネージャー

 「会社を設立し、技術環境も一通り揃っているが、新しい技術をどう活用すればよいのかわからないといった声に応えるため、最新技術の活用方法や会社をどう運営していくのかといったビジネストレーニングを実施し、今後はオペレーショントレーニングの提供も行なう」(マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ビジネスインキュベーション 長井伸明 シニアマネージャー)

 「早期採用支援」は、Maicrosoft AzureやVisual Studio 2010といったこれから登場するものをはじめとしたマイクロソフト製品とどのようにコラボし、新しい価値を生み出していくのかをセミナー方式で支援する。セミナー実施後は、最大1カ月間のメールによるソリューション開発サポートと、構築したソリューションの検証環境を提供する。

 2008年にマイクロソフト イノベーションアワードを受賞した株式会社ジースポートの黒田篤社長は、「かなり早い段階からWindows 7の開発支援を受け、米国に行ってWindows 7の開発チームと会うこともできた。今後は、Azureなどクラウドアプリケーションとして当社の商品を提供していくことも計画していきたい」とイノベーションアワードを受賞したメリットを説明した。

 また、成果として、ジースポートが開発したヘルスケア分野のソフト「ゆがみーる」は、Windows 7のマルチタッチ機能に対応したバージョンを新たに発売している。

 ITベンチャー支援プログラムで連携している自治体の代表として埼玉県 創業・ベンチャー支援センターの鈴木康之所長が、「埼玉県では地域経済活性化策として、『創業するなら埼玉』をキャッチフレーズにやる気のある企業の支援を行なっている。今回、イノベーションアワードに昨年7月に設立したばかりのリトルアイランドが選ばれた。この成果は本人たちのがんばりが一番だが、周りの支援もあったからこそ実を結んだ成果といえるのではないか」と成果が具体的に出ていることを強調した。

第2回イノベーションアワードの受賞企業となった株式会社ジースポートの黒田篤社長マイクロソフトと協業しベンチャー支援を行なう埼玉県創業・ベンチャー支援センター 鈴木康之所長勢揃いした今回の発表者

●イノベーションアワード最優秀賞はワンビ株式会社が受賞

イノベーションアワード2009 最優秀賞発表の瞬間

 ITベンチャー企業向け支援活動の強化に加えて、2007年より展開している優秀なITベンチャー企業を表彰する「マイクロソフト イノベーション アワード2009」が開催され、最優秀企業1社を含む、5社の優秀賞受賞企業が発表された。

 イノベーション アワード 2009の最優秀賞は、「Tech・Ed Japan 2009」の会場に、マイクロソフトが選定した優秀賞受賞企業5社のソリューションを展示。イベント参加者およびマイクロソフト社員の投票の投票によって決定する。

 大賞に選ばれたのは、東京都渋谷区に本社を置くワンビ株式会社。盗難/紛失したPC及びデータを遠隔消去する製品「トラストデリート」が評価された。

 ワンビの加藤貴社長は、「これまで賞を獲った経験が全くなかったので、今回の受賞が本当に信じられない。私をはじめ役員の思いつきを具体的なソフトにしてくれる社員のみんなに感謝をしたい。また、今回の優秀賞受賞メンバーの皆さんとは、日本でソフトを作っている同級生として今後も一緒にがんばっていきたい」と話した。

マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章氏からトロフィーを受け取るワンビ・加藤社長(向かって左から)マイクロソフト・大場統括本部長、ワンビ 加藤貴社長、マイクロソフト・加地佐最高技術責任者ワンビ・加藤貴 社長

 ワンビ以外に優秀賞に選ばれた企業は以下の通り。

・三三株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 寺田親弘)
・株式会社スカイフィッシュ(本社:栃木県宇都宮市、代表取締役 大塚雅永)
・マジックチューブ(本社:愛知県名古屋市、代表 向井 真人)
・株式会社リトルアイランド(本社:埼玉県蕨市、代表取締役 小池浩昭)

 イノベーションアワードの最後にマイクロソフト・加地佐最高技術責任者は、「当社にとってベンチャー支援は、景気が良い時期でも、悪い時期でも継続的に実施すべき重要な事項だと認識している。調査会社のIDCさんの予測では、Windows 7発売によって来年年末までに2.3兆円の技術ビジネスが創出されるとあり、ITベンチャー企業の皆さんが活気づくチャンスを迎えているといえる。また、11月にPDCで発表したMicrosoft Azureといった製品により、さらに新しいテクノロジーの世界が花開いていくのではないかと期待したい」とITベンチャー企業にビジネス拡大のチャンスが大きく広がっていると強調した。

優秀賞を受賞した三三株式会社・寺田親弘社長(中央)優秀賞を受賞した株式会社スカイフィッシュ・大塚雅永社長(中央)優秀賞を受賞したマジックチューブ・向井真人代表(中央)
優秀賞を受賞した株式会社リトルアイランド・小池浩昭社長(中央)勢揃いしたイノベーションアワード2009受賞者達

(2009年 12月 2日)

[Reported by 三浦 優子]