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SSDの世界市場、2016年は16.5%増の9,500万台と予測

~日本HDD協会2016年1月セミナーレポート(SSD編)

会場のスクリーンに映しだされたセミナーの主題。2016年1月28日に撮影

 ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は、1月28日の午後に東京都港区で「2016年の業界動向~HDDと大容量データ活用の最前線」と題するセミナーを開催した。

 本セミナーでは市場調査会社テクノ・システム・リサーチの調査員を務める蜂谷友樹氏が、「HDD and SSD Market」と題して講演した。HDDとSSD(Solid State Drive)の市場動向を明快に把握できる非常に重要な内容であったので、その概要をご紹介したい。

 講演のテーマは前半がHDD市場、後半がPC市場とSSD市場である。HDD市場に関する講演は既報の通りだ。今回は講演の後半であるPC市場のパートとSSD市場のパートをご報告する。

PC出荷台数は漸減が続く

 PC市場の動向は、ストレージ市場の動向を大きく左右してきた。ストレージ市場の行方を展望するためには、PC市場の動向を把握しておくことが欠かせない。講演では、2010~2016年におけるデスクトップPCとノートPCの出荷台数(世界市場)の推移を示した。

 2015年のデスクトップPCの出荷台数は前年比11.3%減の9,860万台と推定した。デスクトップPCの出荷台数は2010~2013年に微減あるいは横ばいで推移していた。2014年はWindows XPマシンの入れ替え需要が発生して前年比で微増となった。しかし2015年は入れ替え需要の反動などで2桁の減少となり、1億台を割り込んだ。2016年のデスクトップPC出荷台数は前年比1.6%減の9,700万台と予測した。

 2015年のノートPCの出荷台数は前年比11%減の1億5,360万台と推定した。ノートPCの出荷台数は2010年代前半に減少トレンドに転じている。2014年にはデスクトップPCと同様にWindows XPマシンの入れ替え需要が発生して微増となったものの、2015年はデスクトップPCと同じく2桁減となった。2016年のノートPC出荷台数は、前年比1.7%減の1億5,100万台と予測した。

デスクトップPCとノートPCの出荷台数推移(世界市場、2010~2016年)。出典:テクノ・システム・リサーチ

HDD出荷台数はPCよりも速いペースで減少

 続いてPC出荷台数とHDD出荷台数の推移を2010~2016年まで比較した。両者は類似の動きをしていることが分かる。ただし出荷台数の減少ペースは、HDDがPCよりも速い。2010年の時点では、PC出荷台数が3億1,720万台、HDD出荷台数が6億5,140万台で、HDDはPCの2倍強の台数を出荷していた。それが2015年にはPC出荷台数が2億5,220万台、HDD出荷台数が4億7,210万台へと変化した。HDDはPCの1.87倍の出荷台数となっている。

PCの出荷台数とHDDの出荷台数の推移(世界市場、2010~2016年)。左は出荷台数、右は前年比成長率。出典:テクノ・システム・リサーチ

 さらに、PC出荷台数とリテール/サードパーティ向けHDDの出荷台数を2010~2016年まで比較してみた。出荷台数の推移は、両者は類似の動きをしている。ただし前年比成長率で見ると、かなり違った動きをしているという。

PCの出荷台数とリテール/サードパーティ向けHDDの出荷台数の推移(世界市場、2010~2016年)。左は出荷台数、右は前年比成長率。出典:テクノ・システム・リサーチ

2桁成長が続くSSD市場

 ここからはSSDに話題を転じよう。SSDの出荷台数(世界市場)は2015年に8,150万台と推定した。前年比では14.3%増と2桁成長した。2016年のSSD出荷台数は前年比16.5%増の9,500万台と予測する。依然として2桁成長が続く。

SSDの出荷台数と売上高の推移(世界市場、2010~2016年)。なお、図中のテキストに「2015年のHDD出荷実績」とあるのは「2015年のSSD出荷実績」の誤り。出典:テクノ・システム・リサーチ

 SSDの出荷台数を出荷先別(IT産業、PC、その他OEM、リテール/サードパーティ)に見ていくと、最も大きな出荷先はPC向けで全体の6割強を占める。占有率は2014年に67%、2015年に62%、2016年に63%である。

 PC向けSSDの成長率は、2015年に前年比6.2%増と大きくは伸びなかった。2016年は同18.1%増と高い成長を見込んでいる。

 リテール/サードパーティ向けはSSDにとって、PC向けに次ぐ大きさの市場である。占有率は2015年に23.8%と2割強を占める。また2015年は前年比32.0%増と出荷台数を大きく伸ばした。2016年の成長率は10.8%で、2桁成長を維持する。

SSDの出荷先別(用途別)出荷台数推移(世界市場、2014~2016年)。出典:テクノ・システム・リサーチ

PC向けストレージはHDDとSSDの合計でも減少

 講演ではさらに、PC向けストレージの動向を説明した。HDDとPC向けSSDの出荷台数を2014~2016年で比較した。HDDはこの間に出荷台数を23%減らしているのに対し、SSDは出荷台数を26%ほど増やしている。ただし、合計の出荷台数は減少する。2014年が3億1,080万台であったのに対し、2016年は2億6,300万台と予測している。

 PC向けストレージに占めるSSDの割合は増加が続く。2014年に15.4%を占めていたのが、2016年には22.8%と2割を超える。SSD普及の主役はノートPCで、2015年の搭載率は25%である。2016年の搭載率は10ポイントも増え、35%に達すると予測する。

PC向けHDDとPC向けSSDの出荷推移(世界市場、2014~2016年)。出典:テクノ・システム・リサーチ

SSD価格の急落が普及を促す

 PC向けストレージでSSDが台数を伸ばしている背景には、急速な価格の低下が存在する。講演では、売れ行きの良いHDD製品とSSD製品をサンプルとして選択し、2013年以降の価格の推移を2016年(予測)まで示していた。

 2.5インチHDDは記憶容量が500GBの製品と1TBの製品をサンプルとした。500GB品の価格は40ドルから始まり、35ドル付近まで低下する。わずか5ドル弱しか、下がっていない。1TB品は60ドル弱から始まり、40ドル強まで低下する。3.5インチHDDは記憶容量が1TBの製品をサンプルとした。価格は2013年の50ドル弱から始まり、2016年には約40ドルまで低下する。

 これらのことからHDD製品に共通して言えるのは、価格の低下が緩やかであることと、35ドル~40ドルで価格の低下がほぼ止まることだ。

 SSDは記憶容量が128GBの製品をサンプルとした。価格は2013年に100ドル。これが2014年に70ドル、2015年に50ドルと急速に低下してきた。2016年には40ドルと、製品単価としてはHDDの代表品種と変わらない水準にまで下がると予測する。

 ただし、記憶容量当たり(GB当たり)の単価ではHDDとSSDにはまだ開きがある。2013年の8倍強に比べると縮小したものの、2016年でも3倍強の違いが残る。にも関わらずSSDの搭載率が上昇しつつあるのは、PCユーザーがストレージに速さを求めているからだと、蜂谷氏は説明する。

PC向けHDD製品とSSD製品の価格推移(2013~2016年)。なおグラフのタイトルに「IT Industry向け」とあるのは誤りで、「PC向け」が正しい。左は取り引き価格(米ドル)、右は記憶容量(GB)当たりの単価(米ドル)。出典:テクノ・システム・リサーチ

 なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて撮影と録音が禁止されている。本レポートに掲載した画像は、講演者と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。

(福田 昭)