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Synaptics、指紋認証センサー搭載タッチパッドを展示

 1月6日~9日(現地時間)の日程で開催される2015 International CES。その開幕を2日後に控えた1月4日に報道関係者向けのイベント「CES Unveiled」が開催された。今年(2015年)のCES Unveiledは、ウェアラブルデバイスを中心としたIoTデバイスが数多く展示されていた。一方、昨年(2014年)まで参加していたLenovoが参加を取りやめるなど、PCメーカーによる最新PCの展示は一切なかった。この辺りは、まさに時代の流れを反映する内容と感じた。そういったCES Unveiledではあったが、PC向けの周辺機器などで一部面白い製品が展示されていたので、本稿ではそれらを紹介する。

Synaptics

 タッチパッドメーカーとしておなじみのSynapticsは、独自の指紋認証センサーを組み込んだタッチパッドを展示した。従来、ノートPCなどに広く搭載されていた指紋認証センサー。ただ、2012年に指紋認証技術を有するセキュリティ企業「AuthenTec」をAppleが買収したことにより、指紋認証機能を搭載するPCは大幅に数が減ってしまった。ただ、企業向けPCを中心として、指紋認証機能のニーズは大きく、それに対応するために開発されたものという。

 実際にノートPCに搭載し展示していたが、タッチパッドの左上隅に指紋認証センサーを内蔵するという点がこれまでにない大きな特徴だ。また、指紋認証時には指をセンサー上に置くだけでよく、指をスライドする必要がないため、扱いやすさが向上しているという。実際に、センサーに指を置いて1秒かからず認証が完了しており、かなり利便性に優れると感じる。これら、センサーや指紋認証技術、ソフトウェアなどは全てSynapticsのオリジナル技術とのこと。

 今回展示されていたのはプロトタイプで、現在はPCメーカーなどと細かな仕様を詰めている段階という。従来の方式との価格差なども、現時点では未定。ノートPCなど実際の製品に搭載されるのは、2015年の年末頃になるとのことだ。

指紋認証センサーを搭載するSynaptics製タッチパッド
タッチパッドの左上隅に指紋認証センサーを搭載するという、これまでにない仕様を実現。赤いLEDの上部にある四角い部分がセンサーだ
指紋認証時には指をスライドさせる必要はなく、指をセンサーに置くだけで認証が行なわれる
認証は1秒未満の短時間で完了。指紋認証システムはSynapticsオリジナルとのこと
展示されていたのはプロトタイプで、搭載製品は2015年末頃に登場予定

Technology Launch

 Technology Launchは、「Motix」というポインティングデバイスを展示していた。このポインティングデバイスは、光学センサーユニットと横長のタッチセンサーで構成される。光学センサーユニットとタッチセンサーはケーブルで接続され、一般的なデスクトップ向けキーボードの後方に光学センサーユニット、キーボードのスペースキー手前にタッチセンサーを装着して利用する。その構造上、ノートPCでの利用は難しいとのこと。

 利用時には、右手または左手の親指でタッチセンサーに触れつつ、光学センサーの正面付近の空中で右手または左手の人差し指を動かすことで、マウスポインタの操作やWindows 8/8.1のタッチ操作などが行なえる。タッチセンサーでは、マウスのクリック操作が行なえる。また、1~3の数字が書かれており、指で触れる数字によって操作できる範囲が変化するという機能も備える。

 例えば、1に触れている状態ではデスクトップ領域全体が操作領域となるが、2では表示領域の約半分、3ではさらに狭い範囲が操作領域になる。操作範囲を変更することにより、画面全体でのウィンドウ操作や、特定アプリ内での細かな操作など、用途ごとに最適な利便性を実現できるという。

 PCとはUSBで接続し、標準のマウスドライバで動作する。独自ドライバが不要のため、利用環境は問わないとのこと。Windows PCやMacなど、広く利用可能という。

 ジェスチャー操作システムの「Leap Motion」に近い印象のデバイスではあるが、Leap Motionはエンターテインメント用途が中心となるのに対し、MotixはOSや一般アプリの操作を主用途とする、マウスやタッチパッドを置き換える新たなポインティングデバイスだという。実際の操作の感覚は、慣れるまでにやや時間がかかりそうという印象もあるが、ホームポジションから手を大きくずらすことなくマウスカーソル操作やタッチ操作が行なえるため、慣れれば利便性を高められると感じた。

 北米では2015年2月より販売開始を予定しており、販売価格は119.99ドル。

Technology Launchのジェスチャー型ポインティングデバイス「Motix」。キーボード後方には指の動きを検知する光学センサーユニットを配置し、スペースキー手前にはタッチセンサーを装着して利用する
光学センサーの前方で人差し指を空中で動かすことにより、マウス操作やOSのタッチ操作が可能となる
親指でタッチセンサーの数字に触れると、カーソル操作が可能となる範囲を変更可能。1はデスクトップ領域全体、2は約半分、3はさらに狭い範囲となる
慣れるまでには時間がかかりそうだが、ホームポジションから手を動かさずにマウス操作が行なえるため、慣れれば利便性を高められそう

XYZ Printing

 格安3Dプリンタメーカーとして日本でもおなじみのXYZ Printingは、食品用3Dプリンタ「3D FOOD Printer」を展示した。3Dプリンタの技術を応用しつつ、ケーキなどへのデコレーションや、クッキー、ピザなどの食品が作れるという。内部の構造は3Dプリンタに近いが、チョコレートなどを封入した注射器型の射出機をセットしてプリントを行なうようになっている。USB接続によって、PCを利用してデザインが行なえる点は、3Dプリンタ同様だ。

 実際にチョコレートを利用したデコレーションのデモが行なわれていたが、複雑なデコレーションを均一に行なえる点が大きな利点としていた。また、クッキーなどは3Dプリンタのように生地を積層するように射出して行なうが、もちろん食べるにはその後オーブンで焼く必要がある。この食品用3Dプリンタは、食品の形状を作りあげるまでとなる。

 展示されていたのはプロトタイプで、発売時期や価格などは未定とのことだが、2015年中には発売したいという。

3Dプリンタ技術を応用した3D食品プリンタ「3D FOOD Printer」
注射器型の射出機にチョコレートなどの食材を封入しプリントする
食材は3種類まで装着可能
細かなデコレーションも均一の品質でプリントできる
クッキーはプリント後に焼けば完成

Microsoft

 2013年より基調講演とブース展示を取りやめたMicrosoftだが、今年のCES Unveiledに久々に参加した。ただし、展示していたのは新たなデバイスではなく、アメリカンフットボールリーグ「NFL」に提供しているSurface Pro 2ベースのカスタムタブレットだった。

 Surface Pro 2に独自のハンドグリップカバーを装着し、NFL専用アプリをインストール。画面にはプレイ映像がリアルタイムに配信され、映像を見ながらペンで文字や印などを書き込みつつ、コーチと選手とで戦術を詰めるといった用途に活用できるという。このシステムはNFL所属の全チームに供給されており、実際に今シーズンの試合で活用されているとのことだ。

MicrosoftがNFLに提供しているSurface Pro 2ベースのカスタムタブレット。ペンで指示を書き込みながら、試合中の戦術確認などに利用されているという
本体にはこのようなオリジナルカバーを装着。外部からの強い衝撃から本体が保護される
背面に用意されたグリップで、片手でも安定して利用できる
専用のラック。この中で本体の充電を行なうとともに、中に入れて戦地を移動するという

(平澤 寿康)