ニュース

AMD、Kaveriの後継となるCarrizoの概要やMantleをアピール

〜3DMarkやカプコンのゲームエンジンもMantle対応に

 AMDは、シンガポールのWホテルで、同社顧客や報道関係者などを対象としたプライベートイベント「AMD Future of Compute」を11月20日に開催した。同イベントは、AMDのAPJ地域(日本を含むアジア太平洋地域)の顧客、報道関係者を対象にしたもので、AMDが現在発売している製品、今後発売する製品などを中心にプレゼンテーションや展示を行なう。

 プレゼンテーションでは、Kaveriの後継となるCarrizo(カリッツォ)についての説明や、Futuremarkが3DMarkにMantleに対応を追加すること、そして日本の大手ゲームベンダーであるカプコンがMantleに対応したゲームエンジンを開発中であることなどが明らかにされた。

AMDの未来はHSAにあり、スクエア・エニックスとの共同プロジェクトも

 AMD APJメガリージョン担当副社長 デビット・ベネット氏は、AMDの全体的な戦略を説明した。ベネット氏は「この20年AMDはx86の世界のテクノロジーをリードしてきた。最初の1GHzプロセッサ、64bit命令、APUなどさまざま新しい技術をもたらしてきた。そしてこれからの20年はHSA(Heterogeneous System Architecture)がリードしていくだろう」と述べ、AMDのx86プロセッサ市場において競合他社を技術的にリードしてきたことが、今後はHSAにより実現されていくだろうと強調した。

 HSAは、CPUとGPUをハードウェア的にもソフトウェア的にも同等に扱えるようにする仕組みのことで、AMDが基礎部分を作り、ほかのプロセッサベンダーが参加できるオープン規格だ。すべてのIP(知的所有権)はHSA Foundationにより管理しており、半導体メーカーは自由にHSA規格準拠のSoCを製造できる。

 ベネット氏はこのHSAについて「HSAはARM、Qualcomm、MediaTek、Samsung、Imagination、TIなどが参加しており、広く半導体業界に受け入れられている」と、IntelとNVIDIAを除き多くの半導体メーカーが参加していることで、未来が非常に有望だと強調した。

 また、ベネット氏はAMDのAPJ地域での独自のマーケティングプランについて触れ「我々はスクエア・エニックスと非常に強力な取り組みを日本で行なっている」と述べ、株式会社スクエアエニックス エグゼクティブ・プロデューサー 齊藤陽介氏を壇上に呼び、AMDとスクエア・エニックスの取り組みについての説明を行なった。

 説明された内容は、日本で既に2年前から販売されているドラゴンクエストXの共同マーケティングについで、齋藤氏は「ドラゴンクエストシリーズは、幅広い年齢層のユーザーに受け入れられているゲームで、今後もそうでありたいと考えている。このためハイエンドのゲーマー以外にもアピールするため、できるだけグラフィックス性能を維持しながら必要なスペックを下げたいと思っていた。このために、弊社のエンジニアとAMDのエンジニアが密接にやりとりをしており、APUでの性能を上げている」と述べた。また、同時にAMDとスクエアエ・ニックスが共同でAPUにバンドルするなどのマーケティングキャンペーンを日本で行なっていること(別記事)などが説明された。

AMD APJメガリージョン担当副社長 デビット・ベネット氏
AMDがx86市場で成し遂げてきた革新
HSAは業界の多くのパートナーが参加している
株式会社スクエアエニックス エグゼクティブ・プロデューサー 齊藤陽介氏
スクエア・エニックスとAMDの日本での取り組みについて説明

前世代のKaveriに比べて電力効率が倍になるCarrizo

 続いて登壇したのが、AMD副社長兼製品CTOのジョー・マクリー氏。マクリー氏はHSAの概要を説明した後、AMDの第2世代HSA対応APUに関する説明を行なった。

 AMDのHSAをサポートした最初のAPUは、今年の1月に米国ラスベガスで行なわれたInternational CESで発表されたKaveri。Kaveriは現在のAMDの主力製品で、ノートPC向けとデスクトップPC向けが既に出荷されている。今回マクリー氏が明らかにしたのは、そのKaveriの後継となるCarrizoだ。

 Carizzoには2つのバージョンがある。1つはExcavatorコアと呼ばれる新設計x86コアとなるCPUを内蔵し、次世代Radeon GPUを内蔵したCarrizoと、もう1つはPuma+と呼ばれるBeema/Mullinsに採用されているCPU(Puma)の改良版と、GCN世代のRadeon GPUを内蔵するCarrizo-Lだ。

 CarrizoはKaveriの後継に、Carrizo-LはBeemaの後継として位置付けられている製品になる。いずれの製品も、サウスブリッジも含めて1つのダイにまとめられているSoCで、ARMのTrustZoneに対応したセキュリティプロセッサも内蔵。「Carizzoでは性能向上とバッテリ駆動時間の向上の両方が実現されている」としており、電力効率の改善が製品の鍵になる。

 続いて登壇したAMDコーポレートフェロー サム・ナフチガー氏の講演ではCarrizoの電力効率がKaveriに比べて倍になることが予想されることを明らかにした。つまり、Carrizoは、Kaveriと同じ消費電力であれば倍の性能を発揮し、逆にKaveriと同じ性能であるならば消費電力は半分になるということになる。現時点ではAMDがどのような製品のプロファイルにするかは明らかではないが、デスクトップPC向けは前者、ノートPCやタブレット向けには後者という設定も考えられ、実際にどのような製品になるかが楽しみだ。

AMD副社長兼製品CTO ジョー・マクリー氏
Carizzoを説明するスライド
AMDコーポレートフェロー サム・ナフチガー氏
Carrizoの予想される電力効率はKaveriの2倍になる見込み

今年中にMantleのフィーチャーテスト機能を搭載した3DMarkを公開される予定

 3DMarkなどのベンチマークソフトウェアベンダーとして知られるFuturemark社長のオリバー・バルチ氏は、Futuremarkのベンチマーク・ロードマップなどに関しての説明を行なった。

 この中でバルチ氏は、来年(2015年)Microsoftがリリースする予定のWindows 10に合わせて、PCMark 8の後継となる、PCMark 10と呼ばれる次世代バージョンを計画していることを明らかにした。また、バルチ氏は現行バージョンのPCMark 8を法人PC向けの評価ソフトとして売り込みをかけていることや、すでにブラジル政府やEU政府などの調達の条件としてPCMark 8のスコアが採用されていることなどを説明した。

 また、3DMarkに関しても説明し、2014年中にリリースする次バージョンで、GCNアーキテクチャ向けAPIのMantleを、フィーチャーテストのテスト項目でサポートする予定であることを明らかにした。このフィーチャーテストは、3DMarkの総合スコアに影響を与えるものでは無く、あくまで、Mantleを使った場合と、Direct3D 11(いわゆるDirectX 11)を使った場合の比較テストになる。従って、AMDのGPUを持っていて、Mantleの価値を確認したいというユーザー向けとなる。

 さらに、バルチ氏は3DMarkのDirect3D 12(いわゆるDirectX 12)の対応について触れ、2015年にDandiaという開発コードネームのテストを追加して、Direct3D 12のテストをできるようにする予定であることも明らかにした。その一部で、Direct3D 11、Direct3D 12、MantleにおいてDrawCall機能テストを行なった場合の数値を公開し、Direct3D 12とMantleがDirect3D 11に比べて700〜800%も高い性能を示すことが示された(Direct3D 12やMantleが7〜8倍速いという意味ではない、あくまで3D描画の一部であるDrawCallの処理がそれだけ効率よくなるという意味だ)。

FutureMark社長のオリバー・バルチ氏
FutureMarkのWindows用総合ベンチマークのロードマップ、Windows 10に合わせてPCMark 10がリリースされる予定
ブラジル政府がPCMark 8のスコアを調達の要件にしている
EU政府はPCMark 7 Professional Editionのスコアを調達要件にしている
3DMarkのPC向けロードマップ。今年中にMantel対応の機能テストが追加され、2015年にはDirect3D 12(いわゆるDirectX 12)に対応したテストが追加される
DrawCallのフィーチャーテストのベンチマーク結果。Direct3D 11に比べてD3D 12、Mantleは700%超の向上
Direct3D 12に対応した3DMarkの画面

カプコンは開発中の自社製次世代ゲームエンジンにおいてMantle対応を明らかに

 このほか、AMDが最近盛んにアピールしているディスプレイ同期技術FreeSyncについてや、Mantle対応ゲームについての話題も紹介された。この中でAMDは、Samsung ElectronicsがFreeSync対応ディスプレイを投入する予定であること、Mantle対応のゲームとして新たに「INQUISTION」、「Battlefield Hardline」、「Star Citizen」がラインナップされることを明らかにした。

 さらに、今後Mantle対応ゲームをリリースする可能性があるゲームパブリッシャーとして日本のカプコンが紹介された。株式会社カプコンのテクニカルディレクター伊集院勝氏は「従来のゲームエンジンでは描画リソースの設定に無駄なCPUコストがかかっている、描画リソースの整合性チェックにCPUが利用されてしまうなどの課題があった。Mantleを使えばそれらの負荷が解決できるのではないかと考えて評価を始めた」と説明した。伊集院氏によれば、現在カプコンが開発を進めている自社製の次世代ゲームエンジンでは、Mantle対応が進められているとのことで、近い将来にカプコンがリリースするPCゲームなどでMantle対応が進められる可能性があることを明らかにした。

 ただし、今回の発表はあくまで、カプコンが開発を進めている次世代ゲームエンジンでMantle対応を進めるということであって、具体的にどのタイトルでMantleがサポートされるということは発表がなかった。しかし、ゲームの基礎となるゲームエンジンでの対応が進む以上、当然その次世代ゲームエンジンを利用したカプコンのPCゲームがMantle対応になる可能性が高まったとは言うことができるだろう。

ディスプレイ同期技術FreeSyncの説明
競合他社の仕組み(NVIDIAのG-SYNCのことだと思われる)との比較
Samsung ElectronicsがFreeSyncに対応したUHDディスプレイを発表、2015年に出荷予定
AMDのMantleに対応されることが明らかにされた3つのゲームタイトル
株式会社カプコン テクニカルディレクター 伊集院勝氏
カプコンがゲーム開発をする上で抱えていた問題。CPUやGPUのリソースを有効利用できなかった
カプコンが開発中の次世代ゲームエンジンにMantleの機能を実装する予定
Mantleを採用するもう1つのメリットとしては、ゲームコンソールとの開発を共通化できる

(笠原 一輝)