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米Dell、ワークステーション向け検証施設を稼働
~5Kディスプレイも今年後半に登場
(2014/3/7 11:10)
米Dellは、米国時間の2014年3月5~6日の2日間、米テキサス州オースティンの同社本社において「Dell Precision Press Day」を開催し、同社のワークステーション事業戦略について発表した。
米DellのPrecisionワークステーション担当エグゼクティブディレクタのAndy Rhodes氏は、「Dellが提供する新たなワークステーションは、さまざまな業界に向けて、クリエイターやエンジニアだけでなく、多くの人が活用できる、これまでとは異なる環境を提供できるようになる」などとした。
米Dellでは、モバイルワークステーションと呼ばれるラップトップ型の製品を投入しているが、これらの製品ラインアップを継続的に投入することで、「机の下にワークステーションを設置し、エンジニアが机の前に縛られるという利用環境はもはや古い。ワークステーションをあるゆる場所に持ち出して利用するという柔軟な環境を提案する」と述べた。
また、「Dell Wyse Datacenter for Virtual Workstaion」を提供することを発表した。これは、仮想環境に専用化して開発されたリファレンスアーキテクチャで、認定されたワークステーション向けアプリケーションを、信頼性が高く、安全な仮想デスクトップ環境をWyse上で実現するものになる。
さらに「Virtual Workstaion on Center of Excellence」も発表。同センターは、Dellがワークステーション向けに初めて提供する仮想化センターであり、チャネルパートナーやISVパートナー、顧客が世界中のあらゆるところからアクセスし、アプリケーションの性能を検証することができる施設となる。
ワークステーション市場における新たな潮流
一方、同社ではワークステーション市場における3つの潮流を示した。
1つは、デスクトップからデータセンターへという流れだ。これは、仮想化への対応を表現したものだ。
Rhodes氏は、「仮想化によって、3つの問題が解決できる。1つは、ユーザーにとって、個別にワークステーションを購入する必要がなくなり、予算面での課題を解決することができる点。仮想化によって、多くの人が、より柔軟なワークステーション活用が可能になる。2つ目にはセキュリティ環境を強化できる点。自動車メーカーが新たな自動車を設計する際に外部に設計情報が漏れないことや、映画やビデオのコンテンツが上映前に漏れないようなセキュアな環境が必要である。また、それでいて世界中の人たちとコンタクトを取りながら、より多くの人がコラボレーションを行なえるようにしなくてはならない。Dellではそれを実現する環境を提案できる。そして、3つ目には、複数のデバイスからのアクセスが可能になるという点である。もはやワークステーションは、クリエイターやエンジニアだけのものではなく、営業部門の人たちがプレゼンテーションに活用するといったことも起こっている。また、マネージャに対しても提示しなくてはならない。部屋を移動して、別の会議室でも活用しなくてはならない。モバイルワークステーションの活用においても仮想化は重要な役割を果たす」と説明する。
さらに、「ワークフローの効率化という点でも、仮想化は効果がある」とし、「多くのユーザーは、ISVが開発した複数のアプリケーションを利用するケースが目立つ。だが、演算能力が求められるレンダリング処理を行なうと、その際に、ほかのアプリケーションの作業を止めなくてはならないという問題が発生し、効率性を下がることになる。だが、データセンターの余っている能力を活用することで、同時に実行できる作業量を増やすことができるというメリットを提供することができるようになる」とした。
2つ目には、プロフェッショナルな品質が求められる環境において、最適なツールが提供されていないという課題への対応だ。
Rhodes氏は、「大企業しか活用できなかった技術やリソースに対しても、多くの企業がアクセスできる環境が提供されるようになっている」としながらも、「ナイフといっても、包丁は一般家庭で使うが、メスは専門家が使うものであり、まったく役割と性能が異なる。しかし、今の環境は、外科医が手術室で、包丁を使っているようなもので、利用環境に求められる最適なパフォーマンスが提供されておらず、妥協しながら活用しているという例が少なくない。金融分野のユーザーが利用するのに、CPUやグラフィックの性能が足りない。あるいはミッションクリティカルなものではないといった問題が起こっていても、適切なものがないために妥協せざるを得ない。さらに、これまでのモバイルワークステーションは、モバイル対応するから演算能力に問題があっても仕方がないという見方もあった。だが、Dellが投入したモバイルワークステーション『M3800』は、モバイルだからといっても演算能力には妥協せず、ミッションクリティカルな環境でも利用できる。薄くても、軽くても、性能には妥協していない。エンジニアは、机に縛られるのではなく、移動先で仕事ができ、人々を解放することができる。Dellは、適切な技術と性能を、モバイルワークステーションに持って行くことで、この環境を実現した」などとした。
また、3Dプリンタの活用が注目を集めているように、デジタルプロトタイピングに関する需要が増加しており、迅速にプロトタイプを作り、それを繰り返し行なうといったことが、小さな企業でも求められていることを示しながら、「12カ月だった製品開発サイクルが、半分になるというように、競争力を維持するためには、より多くのパワーがワークステーションに求められる。企業では、パフォーマンスの観点で、より最適化したワークステーションが必要とされている」などとした。
そして、3つ目のポイントは、ワークステーションにミッションクリティカル性が求められているという点である。
Dellでは、パフォーマンスラボを通じて検証を実施することで、ミッションクリティカル性を全てのワークステーション製品で実現しているとし、「ビデオ編集者は、現場でワークステーションがダウンすると、導入したワークステーションの価値が無駄になってしまう。飛行機の設計エンジニアが、高いリソースを必要とするレンダリングに活用しても、ダウンせずに快適に利用できるようにしているのがDellの特徴である」などと述べる。IntelやAMD、NVIDIAなどとの強力な関係が、高いパフォーマンスの実現と、ミッションクリティカル性の達成に寄与していることにも言及してみせた。
また、クリエイターのアイデアを具現化するために、ワークステーションを活用しても、パフォーマンスが十分でないと、ひらめいたものを形にすることができないという問題があることも指摘する。
「ビデオ制作会社では、クリエイターのあるひらめきにおいて、作業に10分かかると、プロセスの流れを止めてしまい、視覚的な表現に至らないという課題があった。だが、Dellのワークステーションが実現する演算能力および表示能力によって、クリエイティブな作業の流れを邪魔することがなくなる」との事例を示して見せた。これらは、メディア&エンタテイメンメント業界だけでなく、エンジニアリング業界でも求められているものであり、Dellのワークステーションの高性能化によって解決できる課題だとした。
そして、「メーカーが投入する製品のサイクルはどんどん短くなり、スピード・トゥ・マーケットが求められている。CADエンジニアの年俸は7万ドル程度といわれるが、ここに、第1級の性能を持ったワークステーションを導入しても、3~4週間で元が取れるだろう。高い性能によって、ROIを回収できる」などと述べた。
今年後半には5Kディスプレイの投入も
そのほか、Dellのワークステーションは、1つの窓口を通じてワークステーション本体や周辺機器、アプリケーション、サポートまでを含めて提供できること、工場において、顧客ごとのカスタムコンフィグレーションが可能であること、24時間365日のサポートを提供していることなども示した。
周辺機器に関しては、世界ナンバーワンシェアを持つ液晶ディスプレイのように自社ブランドで提供する製品のほか、3Dプリンタのように、サードパーティと組む製品もあることを示しながら、「4K液晶ディスプレイを700ドル以下で販売してするのはDellだけである。今年後半には5Kディスプレイを投入することになる」と、新たな液晶モニターの投入計画にも言及した。
さらに、「Dellのワークステーションは、セキュアで管理がしやすいワークステーションという定評があるが、それは、Dellがソフトウェア分野に投資を行ない、それを元にしたツールを提供しているからである」などとし、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやサービスにも力を注いでいることを強調してみせた。