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レゴ、「教育版レゴ マインドストームEV3」

〜9月の発売に先駆け、記者体験会を開催

4月25日 開催

 レゴマインドストームは、レゴブロックを使ったロボットや制御の学習キットであり、学校教育や企業研修などの現場で広く使われている。マインドストームの第3世代となる最新モデル「マインドストームEV3」は、9月に発売される予定だが、発売に先駆け、レゴエデュケーション日本正規代理店である式会社アフレルにより、25日に記者体験会が開催された。体験会では、マインドストームEV3についてのプレゼンのほか、ライントレースなどの課題に挑戦することができたので、その様子を紹介したい。

15年の歴史を持つマインドストームの最新版「EV3」

マインドストームの前身となったR2-D2ロボキット。簡単なプログラミングが可能であった

 マインドストームの前身となったのは、スター・ウォーズに登場するロボット「R2-D2」のキットだという。このキットは、基本的にR2-D2専用であり、マインドストームという名前はまだなかったが、マイコンを搭載しており、簡単なプログラミングが可能であった。このキットが好評だったことで、より自由度が高く、ロボットや制御の学習に役立つキットとして「マインドストーム」が誕生した。

 1998年に初代マインドストームである「マインドストームRCX」が、その8年後の2006年には第2世代の「マインドストームNXT」が登場した。実に15年の歴史を持ち、世界60カ国で、合計200万台が出荷されているという。また、ハードウェア、ソフトウェア共に仕様が公開されており、ユーザーの手によるさまざまな拡張が行なわれていることも特徴だ。実際、Maker Faireなどで、マインドストームを活用した作品が展示されていることも多い。

 今回発表されたマインドストームEV3(以下EV3)は、第3世代となる製品であり、これまでのユーザーからフィードバックを元に、さまざまな改良が行なわれている。EV3は、基本セット(45,150円)と拡張セット(14,280円)があり、基本セットには全部で541のパーツが含まれている。基本セットには、コンピュータを搭載した心臓部となるインテリジェントブロック、インタラクティブサーボモーターM、インタラクティブサーボモーターL×2、超音波センサー、ジャイロセンサー、カラーセンサー、タッチセンサー×2などが入っており、色々なロボットを製作することが可能だ(ただし、ソフトウェアは別売りである)。拡張セットは、全部で853のパーツが含まれており、ギアやホイールなど、基本セットにはないパーツが入っている。さらに、追加パーツとして、赤外線によるワイヤレス操作やデータ通信を可能にするIRセンサー(4,830円)やIRビーコン(4,200円)、スマートフォンなどでWi-Fiによる通信が可能なWi-Fiドングル(5,250円)、温度センサー(6,090円)、DCアダプター(2,730円)などが用意される。

1998年に登場した初代マインドストーム「RCX」
2006年に登場した第2世代マインドストーム「NXT」
今回発表された第3世代マインドストーム「EV3」
EV3に拡張セットを追加すると、このような4足歩行のロボットも製作できる
マインドストームEV3基本セットに含まれるパーツ類。パーツ数は全部で541で、インテリジェントブロック(EV3本体)とサーボモーターMが1つ、サーボーモーターLが2つ、カラーセンサーが1つ、超音波センサーが1つ、タッチセンサーが2つ、ジャイロセンサーが1つ含まれている
マインドストームEV3拡張セットに含まれるパーツ類。パーツ数は全部で853で、ギアやホイールなど基本セットにはないパーツが多数入っている

ARM 9を搭載し、16MBのメモリを装備

 心臓部であるインテリジェントブロックのスペックは、前世代のNXTに比べて大きく強化されている。NXTでは、ARM 7ベースのCPUが搭載されていたが、EV3ではARM 9ベースのCPUになっており、処理性能が向上。インテリジェントブロックの上でLinuxを動かすことも可能だ。メモリは、NXTではRAMが64KB、フラッシュメモリが256KBしかなく、あまり複雑なプログラムを動かすことはできなかったが、EV3ではRAMが64MB、フラッシュメモリが16MBと、大きく増加している。

【お詫びと訂正】初出時にメモリ容量を誤っておりました。お詫びして訂正させて頂きます。

 そのほか、出力ポートも3から4に増加し、iPhoneやiPadなどとの通信も可能になっている。さらに、microSDカードスロットやUSBホスト機能も備えているほか、USBによるインテリジェントブロックのデイジーチェーンが可能で、最大4台までのインテリジェントブロックを接続することで、最大16個のサーボモーターを制御可能だ。

 サーボモーターは、回転センサーを内蔵しており、角度制御や計測も可能である。ジャイロセンサーを利用することで、セグウェイのような倒立振子も実現できる。さらに、インテリジェントブロックには、Bluetoothが内蔵されており、Bluetooth経由でのコントロールにも対応する。インテリジェントブロック単体でのプログラミングも可能だが、別売りの「教育版EV3ソフトウェア」(シングルライセンス14,070円、サイトライセンス56,700円)を利用することで、より高度なプログラミングやデータのロギング、グラフプログラミングなどが可能になる。

マインドストームは、MIT(マサチューセッツ工科大学)とレゴの共同開発によって誕生した
マインドストームとは、センサーやモーター、インテリジェントブロックを使って、ロボットや機械、システムを作るキットである
マインドストームの歴史。初代RCXが1998年に登場、第2世代のNXTが2006年に登場した。今回発表されたのが、第3世代となるEV3である
ロボットを使った学習の利点。ハードウェアやソフトウェアを作って、その場で動かし、試行錯誤しながら目的を達成することで、理解が進む
マインドストームによる教育の強みは、創造力や論理的思考力、問題解決力、体験による理解力が付くことだ
日本社会では、思考力や判断力、表現力、国際競争力、コミュニケーション能力などを持った人材が求められる
そのために、国を挙げて生きる力を育成することが重要
マインドストームの利点。これまでに全世界60カ国で、延べ200万台が販売されている。また、ライフサイクルが長く、互換製が高いことも利点。さらに、ハード、ソフト共に情報が公開されており、さまざまな拡張が可能である
中学校では、昨年から技術/家庭科の技術分野で、コンピュータを利用した計測/制御やプログラミングの学習が必須となっている
マインドストームEV3では、各種センサーで取得した情報をもとに、コンピュータで処理を行ない、アクチュエーター(モーター)を制御することができる
マインドストームの国内導入実績。教育機関では、高専の100%、大学工学部の80%に導入されているという
マインドストームの国内導入実績。企業では、研修用として約230社が導入しており、合計約8,300人が利用している
公表可能な国内導入事例。企業ではJAXAやブラザー工業などがマインドストームを導入している

予約販売は5月8日に開始、予約分は8月上旬に先行出荷

 EV3の製品販売スケジュールだが、一般発売開始は9月1日で、5月8日に同社のサイトで予約販売を開始し、予約分は8月上旬に先行出荷される。また、予約特典として300名限定で、IRビーコンとIEセンサーのセットがプレゼントされる。予約だけの特別セットも用意されており、AセットはEV3基本セット+ソフトウェアで61,950円。AセットにEV3拡張セットを追加したBセットは76,230円。Bセットに通信セットを追加したCセットは90,510円となる。EV3は、教育用キットではあるが、学校関係者や企業以外の一般ユーザーも、同社から直販で購入することは可能だ。

 発売開始前に体験する機会を作ろうということで、「アフレルEV3キャラバン100」という体験会が全国100カ所で行なわれる予定である。日時は2013年5月〜7月の平日、18時30分から20時30分の予定。さらに、6月29日と30日には、EV3ソフトウェア開発者のクリス・ロジャーズ博士を招き、東京の日本科学未来館と名古屋大学でスペシャルワークショップが開催される。11月10日にはEV3による作品コンテスト「EV3 Smart Design Contest」を開催予定で、コンテストのテーマは、「Connect、コネクト、つなぐ」である。

EV3の製品販売スケジュール。5月8日に予約販売を開始し、予約分は8月上旬に先行出荷される。予約特典として300名限定で、IRビーコンとIRセンサーのセット(9,030円相当)がプレゼントされる。一般発売開始は9月1日
予約だけの特別セットの価格。AセットはEV3基本セット+ソフトウェアで61,950円。AセットにEV3拡張セットを追加したBセットは76,230円。Bセットに通信セットを追加したCセットは90,510円
EV3発売前に「アフレルEV3キャラバン100」と題して、全国100カ所で体験会を開催する。日時は2013年5月〜7月の平日、18時30分から20時30分の予定
アフレルEV3キャラバン100は、すでに全国50カ所での開催が決定しており、残りの50カ所を現在募集中
11月10日にEV3の作品コンテスト「EV3 Smart Design Contest」を開催予定。作品テーマは、「Connect、コネクト、つなぐ」
EV3販売までのスケジュール。6月29日と30日には、EV3ソフトウェア開発者のクリス・ロジャーズ博士を招き、東京の日本科学未来館と名古屋大学でスペシャルワークショップが行なわれる

EV3でライントレースに挑戦! 最後は競技会も

 今回の体験会の目玉は、実際にEV3を使ってさまざまな課題に挑戦すること。レゴブロックの要領で、ハードウェアの組み立てからやるのが、本来のマインドストームの使い方だが、時間の関係もあり、今回はハードウェアはすでに完成している状態で、プログラミングのみ体験した。

 ハードウェアはシンプルな3輪ロボットで、もちろん基本セットだけで組み立てられる。課題は3つあり、課題1は「モーターを使って、目的地まで行く」、課題2は「センサーを使って、目的地まで行く」、そして最後の課題3が「黒い線に沿って走る」というもので、前の課題を応用することで新しい課題を達成できるようにカリキュラムが作られている。内容的には、中学生を対象としたものと同じだという。

 プログラミングには、PCで動作するEV3ソフトウェアを使う。今回は利用したEV3ソフトウェアは英語版だったが、発売時には日本語ローカライズされたものが提供される。

 課題1については、まず単に一定時間前進して止まるという、簡単なプログラムを作成した。プログラムといっても、マウスでブロックをドラッグアンドドロップして繋げ、速度や方向などのパラメーターを指定するだけなので、C言語などの知識は一切不要だ(なお、EV3自体はCやJavaなどのプログラミング言語にも対応予定である)。

 課題2は、課題1のプログラムに、センサーの値によって、モーターの停止を行なうブロックを追加すればよい。

 課題3は、いわゆるライントレースであり、カラーセンサーが1つしかないEV3の場合は、黒いラインの上なら斜め左に進み、ラインから外れたら斜め右に進むという、シンプルなアルゴリズムでラインに沿って走らせることができる。しかし、ここで難しいのが、斜めに進む際の方向(角度)と速度である。角度が緩いと、より滑らかに進むため、タイムロスは少ないが、急なカーブを曲がりきれなくなってしまう。逆に、角度が急過ぎると、まっすぐなライン上でも左右に大きく首を振りながら進む感じになり、タイムロスが大きい。試行錯誤によって、角度と速度のパラメーターを最適化することで、スムーズかつ高速なライントレースが可能になる。筆者は、最初難しく考えすぎて、余計なブロックを追加していたため、やたらとロボットの進みが遅くなってしまったが、シンプルな方法でいいというアドバイスを受け、プログラムを改良したところ、最初よりは高速に進むことができた。

 最後には、参加者全員による、ライントレースの競技会が行なわれた。同時に4台のロボットをスタートさせ、それぞれのタイムをストップウォッチで計測するというものだが、速度を上げすぎてカーブを曲がりきれないロボットがあったり、急なカーブでクルクル回ってしまったロボットもあり、盛り上がった。

 筆者は、当初余計なことをしていたため、パラメーターを最適化する時間が足りなくなり、真ん中よりやや上程度の成績であった。ライントレースは一見単純なようだが、ギリギリまで高速化しようとすると、結構大変なことが分かった。ハードウェアの組み替えが簡単で、プログラミングも直感的にできるEV3は、こうした制御の基礎を学ぶのに、最適な教材といえるだろう。

今回は、この3輪ロボットを使ってプログラミングを行なった。このロボットは、EV3基本セットに含まれるパーツだけで作られている
これはタッチセンサーで、赤い十字の部分が押されているかどうかを検出する
こちらはカラーセンサーで、反射光や環境光の色や明るさを知ることができる
3輪ロボットを正面から見たところ。向かって左がカラーセンサー、右がタッチセンサーである
基本セットに含まれている超音波センサー。障害物までの距離を計測できる。今回のロボットには使われていない
基本セットに含まれているジャイロセンサー。今回のロボットには使われていないが、倒立振子などを作ることが可能だ
タイヤに繋がっている赤とグレーのパーツがサーボモーターL。左右で2個使われている
出力ポートは4つ用意されており、1つのインテリジェントブロックで最大4個のサーボモーターを制御可能だ。左のMini USBポートはPCからプログラムをダウンロードするためのポートだ
インテリジェントブロックの反対側には、入力ポートが用意されている。こちらには、センサーを接続する
側面にはデイジーチェーン用のUSBポートとマイクロSDカードスロットが用意されている
今回の体験課題は3つあり、順次複雑になっていく。内容的には、中学生対象のものと同じだそうだ
専用ソフトウェア「教育版EV3ソフトウェア」を利用して、EV3のプログラミングを行なう。LabVIEWがベースになっており、ブロックベースのビジュアルプログラミングが可能である。発売時には日本語ローカライズされる予定だ『写真提供:アフレル』
教育版EV3ソフトウェアでは、データロギングやグラフプログラミングも可能だ。『写真提供:アフレル』
インテリジェントブロックの中央ボタンを押すと、電源がオンになる
フォルダメニューを開き、「Project」フォルダを開いて、「Program」を選択すると、転送したプログラムが実行される
カラーセンサー利用時は、このように赤く発光する
液晶ディスプレイで入力ポートの値を確認できる。カラーセンサーからの値を確認しているところ
ライントレースの基本的な考え方。センサーが黒いラインを検出している間は斜め左に向かって進み、ラインからはみ出して、白い部分に出たら斜め右に向かって進むことを繰り返せば、ラインに沿って走ることができる
【動画】3秒間だけ前進するプログラムを転送して実行させたところ
【動画】3秒前進後、右に回転するプログラムを転送して実行させたところ
【動画】障害物にぶつかってタッチセンサーが押されると、ロボットが停止するプログラムを実行させたところ
【動画】カラーセンサーが黒い線を検出したら、ロボットが停止するプログラムを実行したところ
【動画】筆者がプログラムを作成したライントレースロボット。首振りの角度が急すぎてあまりスムーズではないが、一応トレースはできている
【動画】ライントレース競技会の様子。スピードを出し過ぎて曲がりきれないロボットもあれば、途中で曲がりすぎてラインを見失うロボットもあり、盛り上がった

(石井 英男)