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Intel、ビッグデータや個人所有デバイスの活用でビジネス効率の向上
(2013/3/21 15:38)
インテル株式会社は21日、都内で記者会見を実施。Intel社内において、ITがどのように活用され、ビジネスに貢献しているかについて、さまざまな事例を紹介した。Intelでは、このようなIntel社内の取り組みを外部に公開することを「IT@Intel」プログラムとして進めており、IT利用の活性化につなげようとしている。
Intelの従業員は契約社員を含めるとワールドワイドで10万人ほどで、その内、6,500人ほどが社内ITシステムを管理する部門の社員となる。2012年は売上高に対するITに関する支出は2.53%、社員1人当たりに対するIT支出額は13,600ドルとしている。日本での多く企業におけるIT支出は売上高に対する割合で1%前後、社員1人当たりに対するIT支出額は60万円前後としており、説明を行なったIntel情報システム IT@Intelプログラム Japan and North APAC地域部長の邱天意(キュウ・テンイ)氏は「Intelはほかの企業の2倍という積極的なIT投資を行なっている。これはITが生み出す価値を強く信じる証拠」であると述べている。
2012年に同部門が行なった取り組みの結果は、下記のスライドにまとめられている。記者会見では、これらの結果を生み出した取り組みについて詳細が説明された。2012年以前から継続的に行なっている取り組みもあるが、それらが2012年にさらに成果を上げている部分もある。また、これまでに出していなかった“マルウェアの感染率”という指標を出し、これを1%未満に抑えているとしている。
具体的な取り組みの事例
ビジネスインテリジェンス(BI)の取り組みでは、ビッグデータの活用を進めている。例としては、過去の売り上げ、市場データなどを分析し、有力なリセラーを導き出す売り上げ予測システムを活用している。これにより、2012年には2,000万ドルの販売機会を創出できたとした。
製造部門では、チップの製造プロセスに大量のセンサーを設置し、ここから送られる大量のデータを活用することで、品質の検証やテストといった工程を25%削減しており、早期に製品を市場に投入することに貢献しているという。このシステムは、2012年は1つのラインにのみ試験的に導入したそうだが、結果として300万ドルのコスト削減ができたことから、2013年は適用ラインを増やし、3,000万ドルのコスト削減を目指すとしている。
また、ビッグデータを扱う上はインフラも重視する必要があり、Apache Hadoopを導入した。Intelとしては初めてサードパーティ製のソフトウェアを組み入れたという。
Intelのビジネスに対する貢献についての事例は4つ紹介があった。
最初に紹介されたのは、新製品や新サービスの開発支援に関するもの。これはIT部門が製品開発に必要な情報を提供するもの。例えば、企業向けUltrabookの開発ではユーザビリティや企業ニーズを満たせているかなどのフィードバックを行なっている。スマートフォン開発でもテストやエラーの修正、市場テストなどに協力しているという。
新製品の開発におけるハードウェア/インフラの面では、20,000台のXeonサーバーにSSDを導入し高性能化。Hyper-Threadingの効果もあり、必要な計算速度を20%削減することで、4年間で2,000万ドルのコスト削減につなげたという。また、スマートフォン/タブレットの開発では、エミュレータを開発し社内に提供。このエミュレータの社内利用率も向上しており、年間で1,800万ドルのコスト削減を達成した。
Intelのサプライチェーンについては、75万件以上の注文に対して、16カ所の工場と30カ所の倉庫で対応しているが、このシステムを5年かけて改革。リードタイムを60%削減したという。例えば、在庫管理では在庫の一元管理や自動計画システムを構築。在庫確認の所要日数を3日から1日へ短縮したほか、32%の在庫削減につなげたという。
工場についても可用性の高いデータベースアーキテクチャの導入を勧め、工場がダウンした場合の復旧に、従来は1時間かかっていたところを2分で再稼働できるように短縮した。2012年は3つの基幹系業務データベースに適用しただけだが、総額80万ドルのコスト削減につながったとしており、2013年はさらに10個のデータベースへ拡張するとしている。
社員の生産性向上につながる取り組みの紹介もあった。大きくは4つ。
1つ目は社員へのUltrabookへの支給である。日本法人の営業部は全社員がUltrabookを使用しているという。またSSDの搭載も100%近いものになっているという。また、2013年にはソフトフォンの導入を勧め、机上の電話機を廃し、電話もPCで行なえるようにする予定としている。
2つ目はいわゆるBYOD(Bring your own device:私用デバイスの持ち込み)に対する取り組みだ。Intel社内でこれをプログラムとして進めており、その適用台数が23,500台と、前年比38%増加した。Intel自身の試算では、これらの取り組みで、1日当たり57分の就労時間削減につながっており、1年間では500万時間に相当する生産性向上に繋がったとしている。またモバイルデバイス向けには、社内専用のアプリも開発。社内の略語辞典や製品情報データベース、コミュニケーションツール、電話会議参加の自動処理アプリなど、現在は41個のアプリが用意されている。
3つ目はクラウドコンピューティングへの取り組みで、マーケティングキャンペーンに用いる一時的なWebサイトの一元化による110万ドルの削減や、ソフトウェア開発チームへのPaaS導入による開発時間の短縮。また、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッド・クラウドの導入により、Webサービスの柔軟性を向上させた。例えば、需要の波が大きいWebサービスでもハイブリッド・クラウドであれば動的にリソースの調整ができるという。また、新サービス立ち上げ時もデータセンター側の準備を待つ必要がなくなり、従来は90~120日かかっていたところを、5~10日以内に展開できるようになったとしている。
4つ目はソーシャルメディアの活用である。社内にソーシャル・コラボレーション・プラットフォームを立ち上げ、参加を奨励。IT部門でも機能強化などを行なうなどした結果、2012年には参加人数が23%増加し、Intel社員の63%、人数にして60,000人を超える社員が参加している。世界各国に多くの社員がいるIntelでは、とくにソーシャルメディアを使う文化を醸成することが重要であるという。また、コミュニケーション活性化により、社員間でトラブル解決を行なうことが増え、結果、サポートコストの削減にもつながったとしている。
最後にエンタープライズ・リスクについて説明があった。モバイルデバイスの増加もあり、よりセキュリティを高めつつ、社員が不満なく利用できる環境を維持するかのバランスが重要であるとする。Intelでは先に紹介したBYODプログラムの一環として「Protect to Enable」(可能にするためのセキュリティ保護)という戦略を採っており、4つの項目をキーに増強を進めている。その中にはIntelが買収したMcAfeeの製品に依るものも含まれており、さらにIT部門でも、McAfeeの新技術について積極的に社内提案を行なっているという。
また、社内の改革を推進するだけでなく、IT部門自身もサービスの改革を進めている。IT投資の効率を上げることで新たな予算を作り出し、それをまた新しいIT投資へつなげていくとした。