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シャープ、省エネ性能などIGZOの特徴を解説
(2012/12/21 14:43)
シャープ株式会社は21日、「IGZO」についての記者説明会を開催。同社ディスプレイデバイス開発本部技術開発センター技術企画室室長の今井明氏と、ディスプレイデバイス第2生産本部第2プロセス開発室室長の松尾拓哉氏が説明を行なった。
IGZOは、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、亜鉛(Zinc)、酸素(Oxygen)で構成される酸化物半導体。2004年に東京工業大学細野秀雄教授らが、アモルファスIGZOが液晶への応用性が高いことを見いだし、2009年に半導体エネルギー研究所がCAAC-IGZOと呼ばれるIGZO薄膜の作製に成功。そして2012年にシャープが半導体研究所と共同で、世界で初めてIGZOの量産化に成功。スマートフォン、タブレット、4K2K液晶などで製品化され、すでにスマートフォンなどは出荷が開始されている。
IGZOの大きな特徴の1つ目は、消費電力を抑えられる点。IGZOは従来のシリコン半導体である、アモルファスシリコンと比べると100倍、低温ポリシリコンと比べると1,000倍も電流オフ性能が高い。これを利用して、IGZOでは液晶アイドリングシリコンと呼ばれる仕組みを盛り込んでいる。通常の液晶では、映像に変化がなくても常時電流を流す必要がある。これに対しIGZO液晶では、画面に更新がない場合、リフレッシュレートを1Hzにまで下げることができる。
また、IGZOはアモルファスシリコンよりも20~50倍ほど電子の移動度が高いため、トランジスタを小型化できる。これにより、バックライトの透過率が上がるため、相対的にバックライトの消費電力を下げることが可能になるほか、高精細化にも有利に働く。
今回の説明会会場に設置されていたデモ機によると、液晶消費電力は、IGZOが1.25W、S-CG Siliconが9.13W、CG Siliconが9.49W、バックライト消費電力は、IGZOが7.51W、S-CG Siliconが7.71W、CG-Siliconが14.65W程度となっており、IGZOが従来品より省エネであることが示された。また、先日NTTドコモから発売になったスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」では、一般的な使い方で2日間充電せずに使えることを売り文句としている。
IGZOのもう1つの特徴が、タッチパネルに好適な点。先にも述べたとおり、通常の液晶では、常時電流を流しているため、これが液晶上にあるタッチパネルにノイズを与えてしまう。そのため、指先のように、ある程度導電性と接地面積のあるものでないと、タッチを検出できない。
これに対しIGZOでは、液晶アイドリングストップを利用して、液晶とタッチパネルの駆動するタイミングを交互にずらすことができる。これによって、タッチパネルのSN比は5倍に向上。結果として、手袋をしたり、爪先や先の細いペンなどを使っても、タッチを検出できるようになる。
また、こういった良好な特性を持ちながら、アモルファスシリコンと同等の製造プロセスを利用できるという強みも持つ。
同社では2013年以降、ハイエンドスマートフォンがフルHD(1,920×1,080ドット)へと移行すると目しており、それに向けた新製品を投入していく。また、IGZOについては台湾などでも製品化が始まっているが、先んじて確立した量産体制におけるノウハウに大きな自信を持っており、今後もこのリードを活かした開発/製品化を行なっていくとしている。