富士通株式会社は9日、2012年PC夏モデルの発表会を開催した。今季からブランドキャラクターに、ダンスボーカルグループの「EXILE」(エグザイル)を起用する。新製品の詳細は関連記事を参照されたい。
発表会の冒頭、富士通 執行役員副社長 佐相秀幸氏が挨拶。2011年度のPC事業を総括し、「出荷台数は目標は届かなかったが、利益を上げ堅調だった」と事業の安定性をアピール。4月1日には組織改革を実施したが、顧客側は営業の売上アップ、事業側はさらに良い製品を開発し これらを融合して組織を最大限活用していくとした。同社のユビキタス事業において、特にPC事業は「グリップを効かせて進める」と意気込みを語った。
次に、執行役員常務 大谷信雄氏が今後の戦略について説明し、「マイクラウド」という新コンセプトを発表した。
富士通 執行役員副社長 佐相秀幸氏 | 富士通 執行役員常務 大谷信雄氏 |
大谷氏は「PCは10年ぐらい家の中での活用に特化されてきた」とし、その用途の中心がインターネットやメールにとどまっていることに、「お客様に(PC性能を最大限に使う)活用の提案ができてなかった」と反省点を挙げた。続けて、「現在のPCの性能は大幅に伸びている」として、浮動小数点演算性能(FLOPS)が約6年前のIAサーバーと同等になっていることを示し、「この性能を個人で使えるようになっているのを活用していきたい」とした。
インターネットとメールを手軽に使えるスマートフォンやタブレットの普及で、「PC自体が要らないんじゃないかと言われているが、それによって個人所有のデータが増大して、携帯端末では活用しきれない情報量になっている」と指摘。PCの重要性はより高まっていくだろうとした。
大谷氏はハードウェア単体のビジネスの限界として、オーディオ機器を例に挙げ、1970年代に200万円クラスのプロ/マニア向けから、1980年代以降は20万円クラスのコンポ、数万円のラジカセ、そしてカセットテープもCDもプレーヤーがポータブル化された。汎用化が進んだ現在では、プレーヤー自体は2~3千円程度のものが残り、デジタル化されたポータブルプレーヤーは音楽配信サービスとともに伸びてきた。モノや機能を提供していた時代から、利便性を提供する時代になってきたとする。
PCの用途はインターネットとメールにとどまってしまった | CPUの浮動小数点演算性能は約6年前のIAサーバー並みに向上 | 性能向上に対して用途は10年来変わらず、提案できなかったメーカーの責任と反省 |
オーディオ機器の変遷。現在はサービスを含めた商品が伸張 | デジタル化で肥大化する個人データ | サービスも溢れID管理や信頼性に課題 |
また、アナログ時代はデータ量も限られたが、現在はデジタル化によってデータ量が増加し、その管理が課題になっていると指摘。レコーダの録画、ポータブルプレーヤーに保存されている音楽、デジカメや携帯電話に保存されている写真など、大容量のデータが機器毎に散在している現状は、個人では管理しきれないとした。
同社のアンケートによると、撮った写真をどうしているかの質問に、デジカメやスマートフォンに入れたままという回答が51%。PCに保存する回答は49%で、そのうち62%が保存しているだけと回答。つまり、約8割が撮った写真を眠らせているだけだという。
また別の課題として、サービスにおいても扱うものが増え、サービスごとにIDが必要だったり、サービス数の増加で選択が難しくなったり、データ漏洩などの信頼性も含めて多くの課題があると指摘。
新コンセプト「マイクラウド」(My Cloud)を提案 | 一元管理できるプラットフォームで展開 | |
自動の写真整理サービス | デジタルデータのスクラップ帳サービス | リモートサポートサービス |
これらをまとめ、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを融合させたのが、マイクラウドというコンセプトになると紹介。家庭内に存在するデジタルデータは、PCが束ねて活用し、クラウド側はさまざまなサービスを一括で管理(1つのIDや認証/課金など)できるようにするプラットフォームを用意。個人側はマイクラウドP、サーバー側はマイクラウドSと呼称している。マイクラウドPでは、PCがデジタルデータを自動で収集・整理を行ない、共有したりサーバーに保存したいデータをマイクラウドS側とリンクして、外出先から携帯端末で活用できるようにする。マイクラウドSでは、製本サービスなども展開するほか、外出先から家庭内の家電の状態を確認、操作できるようなホームコントロールサービスや、リモートサポートなども提供予定。マイクラウドSのサービス開始は10月を予定しているという。
大谷氏は、マイクラウドを活用できるよう「ユビキタスフロントとしてクラウドサービスとさまざまな端末を開発していく」と今後の展開を語った。
富士通 執行役員 齋藤邦彰氏 |
続いて、執行役員 齋藤邦彰氏がこの2012年夏モデルの新商品を紹介した。先のマイクラウドについては、この夏モデルにマイクラウドPが搭載される。現時点では、写真を自動で集めて自動整理を行ない、顔認証技術を用いた顔での整理、撮影日からカレンダーで整理して、自動で記念日などのアルバムを作成。音声認識も活用し、会話の内容から新しいアルバムも作成できる。
具体的な製品としては、Ultrabookの「LIFEBOOK UH75/H」を紹介。HDD搭載のUltrabookとして世界最薄の15.6mm(最厚部)、14型液晶搭載ノートPCとして体積が世界最小の約1.1Lと、2つの世界一を実現しているとアピール。天板全面加圧200kgfクリアの堅牢性も備え、これらは隙間なく部品を重ね合わせて格子状にした「超圧縮クロスグリッド構造」により達成。齋藤氏は「Made in Japan」だからこそ実現できたとした。
最後に、新ブランドキャラクターのEXILEから、HIROさん、MATSUさん、AKIRAさんの3名が招かれトークセッションを開催。HIROさんは「自分たちのできることを精一杯やって製品の良さを伝えていきたい」、AKIRAさんは「仲間がARROWSのCMに出ていたので、自分もCMに出たいと思っていた」と話した。
LIFEBOOK UHの感想を聞かれると、「デザイン性が好きです。かっこいい。それと薄さ。ライブツアー中でPCを色々な場所に持ち運ぶので、薄さが重要です。起動が速いところも嬉しい」とコメント。また、Made in Japanについては、「日本の底力を見せていくのが大事なんじゃないかと思う。富士通さんのそこに共感しました。良きパートナーとして頑張って行けたら」、「日本人としての誇り、精神というものを大事にしていきたい。Made in Japanの良さを伝えていきたい」、「僕たちも日本の良さを胸にエンターテインメントを追求して、世界へ羽ばたいていけるように全力で精進していきたい」と話した。
トーク中の(左から)AKIRAさん、HIROさん、MATSUさん | 富士通の佐相氏、大谷氏、齋藤氏とEXILEの3名 | 会場の至る所に貼られていたポスター |
(2012年 5月 9日)
[Reported by 山田 幸治]