インテル株式会社は24日、コードネーム“Ivy Bridge”で呼ばれてきた、第3世代Coreプロセッサー・ファミリーを正式発表した。これに伴い、都内で記者会見を開催し、製品特徴を説明するとともに、リテールボックスを29日に発売することを明らかにした。
なお、製品の詳細およびベンチマークについては関連記事を参照されたい。
冒頭では、同社代表取締役社長 吉田和正氏が挨拶。「本日発表する第3世代Coreプロセッサー・ファミリーは、コンピューティング技術の革新でより豊かな社会の構築に貢献するというインテルの目標に基づき開発され、その実現に向けた基礎となるものだ」と語った。
世界初の22nm/3次元トライゲート・トランジスター | ユーザー体験を高める製品 | 第3世代Coreプロセッサー・ファミリー |
Ivy Bridgeのウェハを手にする吉田和正氏 |
また、「世界ではじめて22nmプロセスと3次元構造のトランジスタを採用するが、これはインテルの競争力の源泉となっているものでもある。第3世代Coreプロセッサー・ファミリーでは14億トランジスタを集積しており、これを採用したシステムは優れたユーザー体験を提供する。また、製品価値は高い性能のみならず、高い電力効率、そして集積度の向上によるグラフィックスやセキュリティなどの付加価値の向上に及ぶ。世界最高のプロセッサがこれだけの進化を遂げながら、従来製品より小さいダイサイズを実現しており、今後はよりスタイリッシュなデザインのPCが実現するだろう」と述べた。
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーは第2世代と比較して、CPU性能が最大20%改善されたほか、メディア/3Dの処理能力が約2倍になった。また、新チップセット「7」シリーズによって、USB 3.0やPCI Express 3.0への対応も果たした。「現在、世界で約600モデルに及ぶ製品開発が行なわれており、第2世代以上に急速に普及していくだろう」とした。
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの性能 | 開発中の製品 |
製品の価値をエンドユーザーに知ってもらうために、発売の29日にあわせて、秋葉原のベルサール秋葉原(東京都千代田区外神田3 住友不動産秋葉原ビル1F)で「Intel Technology Day in AKIBA 2012」を開催し、この場で吉田社長も自らも出席し、エンドユーザーに第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの魅力を伝えるという。
また、5月10日にも、東京ミッドタウン イベントスペース ガレリア「アトリウム」にて、Ultrabookに関するイベントを開催。このイベントでは未発表の国内外のUltrabookを紹介するとしている。
発売にあわせて、Intel Technology Day in AKIBA 2012を実施 | Ultrabookのイベントも六本木で開催 |
●“Tick+”に相当する第3世代Coreプロセッサー・ファミリー
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの特徴について、同社 インテル技術本部長 土岐英秋氏と、IA技術部長 秋庭正之氏が、掛け合いのプレゼンテーションで紹介した。
インテル技術本部長 土岐英秋氏 | IA技術部長 秋庭正之氏 | このような掛け合いの形式で、新製品の特徴説明が行なわれた |
ご存知の通り、インテルはプロセスルールの革新と、CPUアーキテクチャの革新を交互に投入する「Tick-Tock」ビジネスモデルを投入しているが、第3世代Coreプロセッサー・ファミリーはプロセスルールの革新の回、つまりTickに相当するが、秋庭氏は「今回はTick+」であると、さらに付加価値があることを強調した。
なぜTick+であるかというと、2011年5月4日に発表した3次元構造の新型トランジスターを採用した点にある。「3次元トライゲート・トランジスター」と呼ばれるこの半導体では、ゲートに対してシリコンがフィン状となって垂直に貫通する構造を採用。これによりトランジスタのスイッチング速度を37%改善、または同等の性能における消費電力を半減できたという。
このほか、Intel HD Graphics 4000や、クアッドコアCPUを集積し、トランジスタ数は14億、ダイサイズは160平方mmなどのスペックを持つ。今回からL3キャッシュはCPUとGPUで共有するタイプになったという。
Tick-Tockのビジネスモデル | プロセスルールと製造技術の進化 |
3次元トライゲート・トランジスターの構造 | 第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの概要 |
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーを紹介するビデオも上映され、3次元トライゲート・トランジスターやIntel HD Graphics 4000の特徴に加えて、高速なリングバス、PCI Express 3.0などについても解説が行なわれた。なおこのビデオはYouTube上でも公開されている。
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーを紹介するビデオから |
特に、Intel HD Graphics 4000について解説がフォーカスされ、第2世代Coreプロセッサー・ファミリーと比較してエンコード性能が2倍になったこと、3Dグラフィックス性能も2倍になったこと、Intel Media SDK 3.0の提供によりアプリケーションの開発が容易になったこと、そしてDirectX 11などのAPIを新たにサポートしたことなどを挙げた。
第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの特徴 | 7シリーズチップセットの特徴 | SYSMARK 2007の総合スコアの向上 |
3DMark Vantageのスコアは2倍近く向上 | Cinebenchのスコア比較 | 動画編集性能の向上 |
ベンチマークによる結果も紹介され、特にグラフィックス関連の性能向上をアピール。また、吉田社長自ら自作したCore i7-3770搭載PCも披露し、吉田社長は「従来と比較して小型化ながら高性能化を実現できているのではないか」とアピールした。
吉田社長の自作PC | 自作PCの構成 |
PC製作時の風景 | 完成した自作PC |
デモでは、旧世代のCore i5-680との比較が行なわれ、ペガシスの「TMPGEnc Authoring Works 5」で4倍以上の性能が発揮されていること、また、grass valleyの3D動画編集ソフト「EDIUS 3D Preview Version」で3D動画の編集もコンシューマレベルで可能になったことなどをアピールした。
TMPGEnc Authoring Works 5でエンコード作業を行なったところ。Core i7-3770では58秒出終了したが、Core i5-680ではまだ25%程度しか完了していなかった | EDIUS 3D Preview Versionで3D動画の編集も行なえる |
(2012年 4月 24日)
[Reported by 劉 尭]