オムロン、Atomベースのマシンオートメーションコントローラ

Sysmac NJシリーズ

7月29日 発売



 オムロン株式会社は、IntelのAtomをベースとしたマシンオートメーションコントローラ「Sysmac NJ」シリーズ、マシンオートメーションソフトウェア「Sysmac Studio」シリーズを7月29日に発売する。価格は前者がオープンプライス、後者が1ライセンスあたり298,500円から。

 Sysmac NJシリーズは、Atom 1.6GHz(シングルコア)を搭載し、プログラミング環境を一新したマシンオートメーションコントローラ。512MBのメモリや専用のリアルタイムOSなどを搭載し、USBポートやSDカードスロットなどのインターフェイスを備える。また、EtherNet/IPとEtherCATをサポートするネットワークインターフェイスを搭載する。

Sysmac NJシリーズによる制御例完全なファンレス構造となっている

 従来、FA(ファクトリーオートメーション)分野はASIC(Application Specific Integrated Circuit)に独自のプログラミングを施し、対応してきたが、FA電気技術者用“ラダー言語”をベースに各社それぞれ異なる仕様を用いていたため、ソフトウェアエンジニアは複数の言語仕様を同時に習得する必要があり、エンジニアの早期育成の障壁となっていた。

 そこで、Sysmac NJシリーズではAtomを採用し、ソフト構造をグローバル標準規格「IEC61131-3」に対応させた。これにより、エンジニアは学校で学んだ技術をすぐに応用できるようになり、エンジニア早期育成を可能にした。また、ハードウェアからソフトウェアベースのプログラミングに移行し、制御を変数として扱うことで、高い再利用性を実現した。

 一例として従来16bitから32bitにデータサイズを移行する際には、すべての命令とメモリアドレスを変更する必要があったが、Sysmac NJシリーズの場合、データ型(変数)を変更するのみで対応でき、プログラムを変更する必要はない。

 また、制御する機械が例えば1個増えた場合、従来はプログラムの変更やハードウェアアドレスの変更が発生したが、新製品の場合は変数を追加するのみで対応できるようになる。

 Atomの採用により、従来の「CJ2H」と比較して演算時間が4倍高速化。倍精度浮動小数点数演算では230倍高速化したという。また、汎用CPUの搭載により、CPUの進化のペースとともに性能向上が実現できるようになった。

 マシン制御用としてオープンネットワーク規格「EtherCAT」に対応。EtherCATによる制御、スレーブ間の動作同期、センシングなどをサポートする。

新Sysmacシリーズの概要ソフトウェアをSysmac Studioに統合Sysmac NJシリーズの概要
処理速度が大幅に向上したモーション機能とPLC(プログラマブルロジックコントローラ)機能が統合汎用アーキテクチャだが産業機器としての信頼性も確保
Sysmac NJシリーズの機能EtherCATに対応し、周期の同期などが可能高速化しながらも同期周期のブレを抑えられるという
ソフトウェア面の特徴変数に対応し、開発を容易化した
制御をソフトウェア化することで、プログラムの独立性と再利用性が高まったハードウェアを追加しても変数の追加のみで済むという

 11日に都内で開かれた発表会では、同社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー、カンパニー社長 藤本茂樹氏が挨拶。新製品でグローバルオープンスタンダードに対応し、市場に投入することで、2020年にこの市場において「制御No.1」、「品揃えNo.1」、「未来(エネルギー)No.1」を目指す「Value Generation 2020」構想を実現すると述べた。

藤本茂樹氏Value Generation 2020の長期構想

 新Sysmacの開発背景については、同社 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー オートメーションシステム統括事業部 統括事業部長の山崎眞哉氏が、「日本の機械メーカーは新技術よりも継続性を重視する傾向にあり、そのためグローバルなオープンスタンダードから取り残された。このため、機械が低価格化しづらい、エンジニアが評価されないといった問題を抱えている。新製品の投入によりこれらの問題を解決できると信じている」と述べた。

山崎眞哉氏日本の製造業が抱える課題

(2011年 7月 11日)

[Reported by 劉 尭]