【COMPUTEX 2011レポート】
【Microsoft編】Windows 8をx86とARMの実機でプレビュー
〜タッチ用にゼロからUIを開発

会期:5月31日〜6月4日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 米Microsoftは2日(台湾時間)、COMPUTEX会場近くのホテルで「Partner Preview COMPUTEX 2011」と称した説明会を開催し、「Windows 8」のコードネームで呼ばれる次世代Windowsの実機によるデモを披露した。

 現時点で次期OSの正式名称は決定しておらず、Microsoftでは「次世代Windows」という表現をしていたが、今回の説明会では“コードネーム”が「Windows 8」であることが明言された。なお、発売の時期については、言及はなかった。

Michael Angiulo氏

 説明を行なった同社Michael Angiulo氏(Corporate Vice President Windows Planning, Hardware and PC Ecosystem)はまず、現在のデジタルライフスタイルにおいて、インターネットアプリとウルトラモバイル端末がユーザーの話題/関心の中心であり、その要求に応えるべく、Windows 8でタッチ操作を前提にしたユーザーインターフェイス(UI)を完全に新規で開発したと語った。

 なお、後述する通り、Windows 8にはこのタッチ用UIと、従来のWindowsデスクトップUIの2つがあり、自在に切り換えて利用できるが、今回の説明会ではそれぞれについて個別の名称は説明がなかったので、本稿では便宜的に前者を「タイルUI」、後者を「Windows UI」と呼ぶことにする。

 まず、Angiulo氏が紹介したのは、開発ボード上で動作しているWindows 8のホーム画面。タイルUIとなっているホーム画面には、アプリのショートカットや、Twitterのタイムライン、RSSフィードらしき情報などがタイル状に並べており、デモ機は全て横画面になっていたものの、Windows Phone 7のタイルUIとそっくりなものになっている。

 実際、Angiulo氏は、「Windows 8のユーザーインターフェイスは、ユーザーを中心に据えたもの」と述べており、その思想は、先だって発表された次期Windows Phoneとなる「Mango」の開発思想と共通している。ここでいうユーザー中心というのは、TwitterやFacebookなどのソーシャルの最新情報や連絡帳などに即座にアクセスできる環境を意味する。また、「Store」へのショートカットも用意されており、Windows 8ではアプリのマーケットプレースも整備される。

 タイルUIで動作するアプリケーションは“Tailored”(仕立てられた)アプリと呼ばれており、HTML5、JavaScript、CSSで開発する。

 Tailoredアプリは、AndroidやiOSがそうであるように、起動するとフルスクリーンで表示される。ただし、Windows 8では、従来からあるマルチタスク機能を活かし、2つのアプリケーションを同時に起動/表示できるようになっているのが異なる。

 AndroidやiOSでも、アプリケーションを複数起動しておき、随時切り換えて利用できる。Windows 8では、画面の左端から内側に向けて指でなぞると、バックグラウンドで起動してるアプリのタイルが次々表示され、切り換えられるのだが、このときに、スライドさせたタイルを左端にドラッグし直すと、そのアプリが左端にドッキングして、同時に表示される仕組みになっている。これにより、Tailoredアプリがフルスクリーン表示される仕様であっても、RSSやソーシャルのフィードを同時に表示させ、常に確認することができる。なお、同社ではこの操作のことを「スナップ」と呼んでおり、2つのアプリの画面比は自由に調整できる。

Windows 8タイルUIのホーム画面 天気予報のTailoredアプリ。背景の雲は滑らかかつ、ダイナミックにアニメーションしていた Twitterアプリ
画面左端からスワイプすると、アプリを切り換えられる 動画も基本的にフルスクリーン再生 ここで左からスワイプして、希望のアプリになったところで、左側に戻すようにスワイプすると
このようにドッキングして2つのアプリが同時表示される 画面比はこのように自由に変更可能

 なお、今回は動画の撮影が禁止されているため、写真でしかお見せできないのが残念だが、少なくとも今回のデモではあらゆる挙動が高速かつスムーズだったことを添えておくとともに、関心のある人は公式動画を参照して欲しい。


 一方、画面右端からスワイプすると、検索、共有、スタート(ホーム)、接続、設定といったメニューが表示される。これはWindowsコントロールと呼ばれている。アプリのサブメニューについては、上下端からスワイプすると表示される。

 Windows Phoneでは、MangoでIE9が搭載されることが発表となったが、Windows 8ではIE10が搭載される。同ブラウザはタッチ操作に最適化されているほか、FlashやActiveXなどのハードウェアアクセラレーションに対応している。

右端からスワイプすると、Windowsコントロールのメニューが表示 今回は上側からのスワイプのデモはなかったが、上下端からのスワイプでアプリコントロールメニューが表示 一瞬の紹介で終わったがIE10の画面

 IE10のデモでAngiulo氏は、ソフトキーボードの操作を行なったが、ソフトキーボードは画面の下半分を占有するタイプに加え、左半分のキーを左端、右半分のキーを右端に表示させるエルゴノミックモードも用意される。ここからも分かるように、Windows 8タブレット機は、横持ちを原則とし、親指での操作に最適化している。

よくあるソフトウェアキーボード 親指での入力に特化したモードもある

 Tailoredアプリのもう1つの特徴として紹介されたのが、ファイルの共有機能。Angiulo氏は「共有」と表現していたが、感覚としては従来のWindowsの「送る」に似ている。各アプリケーションは、どういったデータ/ファイルを共有できるかの情報をOSに登録できる。これにより、写真のブラウザアプリから、任意のファイルを選択し、ファイルメニューから、Twitterなどの「共有可能アプリ」へ送ることができる。従来の送るでは、そのファイルを扱えないアプリも送り先として表示されるが、Tailoredアプリは、どういった種類のアプリを共有できるかを登録するので、写真ファイルの共有先には、写真共有に対応したアプリしか表示されない。

写真ブラウザアプリ。写真をタップすると、選択されると同時に、一回り小さなサムネールで下に表示され、右クリックなしでもファイル操作がやりやすいよう配慮されている ファイルを選択した状態で、メニューのFilesをタップすると、ファイルの保存場所の一覧のほかに、共有可能なアプリが表示 ここからそのアプリにファイルを送ることで、従来のドラッグアンドドロップなどの操作が不要となる

 ここでAngiulo氏は、Windows 8におけるCPUやメモリ、ビデオカードなどのハードウェア要求仕様がWindows 7と同じか、それ以下であると説明した。Windows 7の要求仕様は、Windows Vistaから大きく変わっていないので、仕様上はかなり古いPCでもWindows 8が動作することになる。

現行のタッチスクリーンのないノートPCでも、キーボードとタッチパッドで操作ができる

 もちろん、現行のWindows PCのほとんどはタッチスクリーンを搭載していない。しかし、Windows 8のタイルUIは、キーボードとマウスでもタッチと同じ事ができるようになっている。例えば、アプリケーションの切り替えは、スワイプの代わりにPageUp/PageDnキーで、スナップ操作もタッチパッドの操作でできる。

 とはいえ、Windows 8に合わせたハードウェアの方がより快適になるのは確かで、例えばWindows 8は従来のBIOSでも動作するが、UEFIだとSSDでの起動時間が4割ほど短縮されるという。

 ちなみに、Windows 8は16:9のワイド液晶を前提としている。そのため、4:3の液晶搭載機でも動作はするが、その際はシステムが自動的にそのことを検知し、スナップによるアプリの同時表示は無効になる。

 このように、Windows 8は見た目、使い勝手の面で抜本的な改革が図られているが、Windows OSにとってもっとも重要なのは、過去の資産を活かすための互換性である。そのため、当然ではあるのだが、Windows 8には、現行のWindows Aeroと同じUIも備えている。デモでは具体的にどのような動作を行なったのかが確認できなかったのだが、Angiulo氏は、タイルUIとWindows UIをワンタッチで瞬時に切り換えていた。

 もちろんWindows UIでは、同社のOfficeを始め、これまでのWindowsアプリが動作するのだが、Windows UIでもスナップは利用可能で、Tailoredアプリを同時表示させることもできるようになっている。見た目は、Windows Vistaのサイドバーのようになるが、Windows UI側のタスクバーも縮まり、Windows UIとは別領域にTailoredアプリが表示される。

クラシックなWindows UIも当然あるが Windows UIとタイルUIの同時表示もできる

 1月に行なわれたCESで電撃的に報じられた通り、Windows 8はx86 CPUに加え、ARMプロセッサにも対応する。

 今回のイベントでも、Texas Instruments(TI)、Qualcomm、NVIDIAのARMプロセッサを搭載したシステムが用意され、デモが行なわれた。

 Angiulo氏によると、昨今のARM CPUの性能向上は目覚ましく、指先大のチップサイズで、1GHz超のクロックと、高性能なGPU機能も実現。また、QualcommのMSM8660は、デュアルコアで、3G/4Gの通信機能までが統合されており、フルバージョンのWindowsを動かすのに十分な性能を持っているという。

 そしてARM版Windows 8には、Always ON、Always Connectedという追加機能も実装される。これは、スマートフォンなどではすでに実装されているが、電源のオン/オフではなく、スリープ/復帰で利用し、スリープ時にも一定の通信を行なうことで、メールや各種フィードなどを常に受信する機能を指す。

 もちろん、ARM版にもWindows UIは用意されており、ステージ上ではフルバージョンのWordが動作している様子が紹介された。

 現行タブレットには、環境光、加速度、コンパスなどの各種センサーが搭載されるものが多いが、それについても当然サポートし、サードパーティのアプリケーションからも簡単にアクセスできる。

 また、USBメモリやプリンタへの対応も明言。果たしてx86 Windows機と比べて、どれほど周辺機器への対応を広げられるのかは不明だが、ある程度の積極さは垣間見える。

 おもしろかったのは、Tegra 2搭載でタッチスクリーンのないクラムシェル型端末も紹介された点。敢えてそのような構成にするメリットは述べられなかったが、プロセッサだけでなく、フォームファクタも幅広くサポートしようとしているようだ。

 また、Angiulo氏は、NVIDIAのKal-El搭載タブレットを用いて、Windows UI上でH.264動画の再生をしながら、タスクマネージャーを表示し、同プロセッサの動作再生支援機能を活用することで、CPU負荷が低いことを紹介したのだが、これはKal-Elのクアッドコアの高性能ぶりが目に見える形で示された貴重な(初の?)例でもあった。

 最後に、Angiulo氏は、ARM版とx86版でまったく同じTailoredアプリが動作している様子を紹介した。

 ただし、これはTailoredアプリがHTML5ベースとなっているからであり、従来のx86 WindowsアプリがARM版でどのように動作するのか、果たして動作するのかといった点については説明はなかった。

 これについては、これまでのWinHEC、PDC、MIXを融合したような開発者イベントとなる「Build Windows」が9月に開催されることになっており、この場で詳細な情報が出るものと見込まれる。

Windows 8はARM CPUをサポート QualcommのデュアルコアARM CPU MSM8660 ARM搭載タブレットでのWindows 8。もちろん見た目はx86版と変わらない
Windows UIも装備 動画ファイルの入ったUSBメモリを挿すと、自動的にWindows Media Playerが起動し、動画を再生 ARM版Windows 8でWordが起動している様子
Kal-Elのデモ。タスクマネージャーに4つのCPUコアが確認できる ARM版とWindows版で同じTailoredアプリが動いてる様子 アプリ開発の詳細については9月のイベントで説明される予定

(2011年 6月 2日)

[Reported by 若杉 紀彦]