【MIX初日レポート】
Internet Explorer 10のプラットフォーム・プレビューが公開

初日の基調講演を担当したHachamovithch氏

会期:4月12日〜14日(現地時間)



 MicrosoftはWeb開発者を対象にしたカンファレンス「MIX2011」を、米ラスベガスで4月12日から開始した。

 初日のテーマはHTML5。この日の技術セッションの多くは、HTML5関連に割り当てられており、Windows向けのリッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)をHTML5で効率的に書くためのセッションが多数用意されている。

 ちなみに2日目と3日目はWindows Phone 7がテーマになっており、大きな発表が行なわれると言われている。詳細は翌日とのことだが、関係者によるとハードウェアアクセラレーションを含むフル機能のInternet Explorer 9(IE9)が、Windows Phone 7向けに提供されることが発表される模様だ。WindowsのIE9で動作確認されたHTML5アプリケーションは、そのまま動作するという。

 さて、初日一番のニュースはInternet Exploer 10(IE10)のプラットフォーム・プレビュー第1版(Platform Preview 1)が公開されたことだ。http://www.IETestDrive.com/からダウンロードできる。基調講演を担当したInternet Explorer担当バイス・プレジデントDean Hachamovithch氏は、より良い製品開発と開発者たちとのコミュニケーションを実現するため、IE9開発の際に成功した開発モデルを継承する。まず、徹底して最新の業界標準に対応していくことと、そして開発の回転数を上げることなどだ。

 IE9の際には8週間ごとという短いサイクルで新しい版が開発者に提供されて成果を出したものの、一方で品質の低い版もいくつか出てしまうなどの小さな混乱もあった。そこで今回は12週に一度の割合で新版を出していく。IE9では未実装のCSS3機能に対応していくほか、ECMAScript5のStrict Modeを実装するなど、業界標準への対応をさらに進めていく。

 IE10の機能に関して発表されたことは以上ですべてなのだが、もちろん、これがIE10のすべてというわけではない。“現時点で言える内容”が上記のみということだ。たとえばIE10のプラットフォームプレビュー版は、現時点でWindows 7にしかインストールできないが、これは決定事項ではない。

Internet Explorer 10 Platform Preview 1の発表 IE10 PP1に含まれている内容。まだまだこれから機能は追加されていく予定 IE9で成功した開発のパターンを踏襲してIE10の開発にのぞむ

 レンダラーに盛り込む機能としても、現在、真っ先に手を付けていることをアナウンスしているだけで、さらに機能追加は行なわれる見込みだ。1つのヒントとして、同社の関係者はHTML5 Labsで開発されている要素は、IE10に入る可能性が高いと思っていい、とのことだ。

 ユーザーインターフェイスに関しても、何も発表されていないが、何らかの改善が加わることは間違いないだろう。なぜならIE10と同時期にリリースされるWindows 8は、ユーザーインターフェイスの大幅な変更が行なわれると言われている。この2つがどのように絡んでくるかが、今後の注目点となろう。

 Windows 8との関係の深さは、WindowsおよびWindows Liveの両部門のプレジデント、Steven Sinofsky氏が、基調講演に登場したことからも伺える。Sinofsky氏は開発中のIE10が高速かつ標準への準拠度合いが高く、さらに最新のHTML5マークアップにも対応している事をデモしに来たのだが、ちょっとした話題を置き土産として残していった。

 Sinofsky氏は「Windows 7に1を足したもののために、開発者向けカンファレンス(おそらくProfessional Developers Conferenceになると思われるが、現時点ではイベント名称は公開されていない)を9月に開催する」と発表し、ARMv7コア(1GHz)搭載のASUS製ノート型端末を披露し「これ、なかなか良い感じでしょ?」と薄型筐体を見せた。

 推測するに、Windows 8のことを知りに、そしてこのノート型コンピュータをもらいに(これは筆者の推測。前回のPDCでは、Microsoft社員と報道陣を除く全員がWindows 7搭載のコンバーチブル型タブレットPCをもらえた)来てね、というメッセージなのかもしれない。

 さてMIX10初日基調講演からニュースを取り上げたが、基調講演で出されたメッセージについても紹介しておこう。Hachamovithch氏が出したメッセージは「IE9は、そしてWindowsは、HTML5ネイティブになる」ということだ。IE9をHTML5への徹底対応を目標に開発し、ハードウェアアクセラレーションをフルに活用するブラウザを作った。今のところ、3D、ベクタグラフィックス、テキスト、オーディオ、動画などすべての要素をハードウェアで扱えるブラウザはIE9しかない。

 しかし、そうしたパフォーマンスや実装よりなにより、MicrosoftはIEとWindowsをHTML5ネイティブ、すなわちHTML5が標準のアプリケーション記述言語となるよう開発を進め、それはこれからのIE10でも基本的には同じだ。そんなメッセージを発信した。

HTML5を使ったForsquareのデモ。街中からビルを指定して、とあるフロアに行くと、そこにはお店が……という具合に情報にアクセスできる 日本のカヤックが開発したSVG女子というデモコンテンツ。すべての映像をSVGのみで作成し、アニメーションさせていた。開発者に詳しい話を伺えたので、別途詳細をレポートしたい HTML5を使ったボンジョビのサイト。複数の動画を同時に別々の領域に貼り付けて動かしている
世界一大きなパックマン。このままではもちろん遊べないが、通常サイズでプレイ中にワープゾーンに入ると、どんどん隣の面に…… 基調講演に顔を出したWindowsとWindows Liveの開発責任者であるSinofsky氏。今でも自分でコードを書いているとか 9月に開発者カンファレンスを開催するとアナウンス。Windows 8がテーマのイベントになる

 当然、Silverlightはどうしたんだ? という声はあるだろう。実は今回の基調講演でSilverlightには全く言及がなかったのだが、それはリッチインターネットアプリケーション開発の基盤として、SilverlightからHTML5に移行するという意味ではない。ユーザーにどちらでも好きな方を選ぶ選択肢を与えているだけだ。

 例えばFlashを使っているようなインターネット広告を、Silverlightで置き換えようという意図はなく、それはHTML5の仕事。WebメールサービスをリッチにしたいだけならばHTML5を使えばいいが、社内メールならばSilverlightがいいだろう。セキュアな情報にアクセスするアプリケーションをHTML5で作ってしまうと、ソースコードを簡単に覗けてしまう。そうした部分はSilverlightを使う方がいい。

 冒頭でも紹介したようにWindows Phone 7も含め、あらゆるプラットフォームでSilverlightとHTML5がネイティブサポートされることになるので、ザックリ言えばコンシューマ向けのオープンなインターネット環境で使うアプリケーションはHTML5を、オンプレミスのエンタープライズ向けシステムならSilverlightをということだ。

 両方ともMicrosoftにとっては大切なものであり、両方ともWindowsとIEにとって“ネイティブ言語”であるというメッセージは、コンテンツやアプリケーションを開発するデベロッパーにとってクリアなメッセージになったのではないかと思う。

(2011年 4月 13日)

[Reported by 本田 雅一]